(252)カントの理想実現(10)風力発電機シンドロームは事実なのか?・永遠平和から見た道徳と政治の対立

上の動画のシェーネックの風力発電パーク建設では、建設計画が持ち上がると早期から住民の間で議論がなされ、住民の合意を得ようとしている。
すなわち少数の反対派住民の騒音被害や景観破壊の心配意見を多数決原理で押し切るのではなく、むしろ合意を求めて尊重し、現場(近隣地域の風力発電パーク)で一緒に検証することで合意を得ている。
そこでは、風力発電パーク建設の重要性の啓蒙と危惧されるデメリットの解消を時間をかけて求めることで、住民合意が得られていると聞く。
風力発電機の騒音被害で問題になるのは、飛行場付近のような騒音とは異なり低周波音被害である。
特にアメリカの小児科女医ニーナ・ピアポントが2006年にインタネット上で、風力発電パーク近くの住民の訴える頭痛、睡眠障害、情緒不安定、記憶障害、めまい、吐き気などの症状をウィンド・タービン・シンドローム風力発電機症候群)として報告し、2009年に書いた『ウインド・タービン・シンドローム:ある自然実験に関するレポート』がたちまち世界に拡がって行った。
したがって多くの自然保護保護者の間でも、そのような症候群の存在が既成事実のように信奉され、風力発電基建設反対運動を巻き起こすことも決して少なくない。
ドイツでもウィンド・タービン・シンドロームは議論となったが、ピアポントのレポートが23人の電話聴き取り調査に基づき、聴覚能力試験などの科学的検査が一切なされていないことから、国民の間では一般的に多分な過剰反応として受取られている。
それを裏付けるように2013年のシュピーゲル誌の記事では、最近のニュージーランドの研究を取り上げ、多分に心理的な側面を示唆している(注1)。
また緑の党州知事となっているバーデンヴュルテンブルク州環境省の出した2013年の公式回答書では、ウィンド・タービン・シンドロームは全く科学的知見に基づいておらず、そのような症候群は存在しないと断言している(注2)。
もっともドイツでも低周波音被害は認められており、風力発電パーク建設では風力発電機が出す低周波音被害を無くすことが求められているのも事実である。
会員数48万人以上のドイツ最大の自然保護団体ブントBUNDは、再生可能エネルギーへのエネルギー転換による気候変動保護が今世紀最大の環境政策の挑戦であると声明し、風力発電の必要性を強調している。
http://www.bund-naturschutz.de/fileadmin/download/energie/Dateien_Atompolitik-ab-06-11/Flugblatt-Windkraft-%20in-%20Bayern-05-2011.pdf
そこでは議論の余地がある風力発電について、その健康被害に対して5)で以下のように述べている。
風力発電は、電力を得る他のエネルギー担体と比較して全く放射能負荷がなく、全く温室ガスの発生もなく、殆ど土地の負荷なく、広い面積の必要もなく、粉塵も全くなく、人間と自然に相対的に殆どネガティブな影響がないことが確認されている。住居地区まで800メートルの十分な間隔をとれば、騒音同様に羽根の影の投影も問題がない。周波数90ヘルツ以下の音は、低周波、及び超低周波として表示されている。これらの低周波音の発生は風力発電だけのものではなく、つむじ風や森の梢のような多様な自然の源からも生じている。低周波音は人の聴能に危害を与えるが、600メートル以上の間隔をとることで、風力発電機の低周波音による健康に関与する負担は全くなくなる」と明言している。
また野鳥保護に対しても、「風力発電基は野鳥に、それで追い払ったり、事故に遭遇させたりことで与える負の影響を持っている。しかしながら野鳥保護は総論として風力発電反対に特有なものではなく、本質的には場所に関与する問題である。すなわち配慮ある場所の選択と野鳥保護のためにより有意義な自然保護空間の創出を通して大きな衝突を回避し、風力発電基の負の影響を様々な措置を施すことで最少することである」と、風力発電パーク建設に十分な配慮を求めている。

ウインドウ・タービンシンドロームについて私見を述べれば、ネット上に出ている女医ピアポイント博士のウインドウ・タービンシンドロームPDFを見てみると、彼女は全く学者の分野とは無関係な、ヒポクラテスの教え従い苦しむ患者のために戦う小児科医に思える。州環境省の見解は、疫学調査では少なくとも10年以上の長期期間調査、膨大な科学データを必要とすることから、現段階ではウインドウ・タービンシ・ンドロームは存在しないと言わざるを得ないだろう。しかし認められている低周波音被害もシックハウス症候群のように過敏症の人には耐えられない被害であることから、ピアポイント女医の提言を受け入れ、そのような症状を訴える被害者をださないためにも、2キロメートルの間隔を確保することが必要であろう。

カントの理想実現(10)政治(実践的法学)と道徳(理論的法学)の対立
Anhang(付帯事項)
I. Über die Mißhelligkeit zwischen der Moral und der Politik, inAbsicht auf den ewigen Frieden

1、永遠平和の視点から見た政治と道徳の不一致について

ここでは、道徳は無条件で命令する諸法則の総体であると書出し、客観的実践でもあることから、政治(実践)と道徳(理論)の間には、いかなる争いもありえないとの明言から始めている。
もっとも道徳を怜悧の教えと考えるなら、話は別であるとカントが述べているように、現代は道徳(理論的法学)が怜悧な教えとして呑み込まれていることから、すなわち賢い利益追求こそが善とされていることから、カントの理想は余りにも非現実的と揶揄されのである。
それ故カントの求める公の幸せは物質的富を増すこととなり、そのため競争原理を追求することが正義となり、カントの「正義はなされよ、たとえ(邪悪な連中の)世界は滅ぶとしても」という言葉が、「競争原理追求という正義はなされよ、たとえ一部が気候変動で滅ぶとも、たとえ一部が核戦争で滅ぶとも」といった、邪悪な怜悧な教えにすり替っていると言っても過言ではない。。
まさにそれこそが、カントの指摘する政治的な道徳家たちの詭弁であり、現代の欲望を肥大化させる、限りある化石燃料エネルギーの産業社会が生み出したモンスターと言えるだろう。
しかし太陽から無限に与えられる自然エネルギーの産業社会では、自ずとカントの理想する自由平等の共和体制が築かれ、市民の公の幸せを求める一般意思も統一されることから、理論的な国内法、国際法世界市民法も実現しよう。
そこではカントがこの部分の最期で述べているように、政治(実践的法学)は道徳(理論的法学)にひざまづき、政治と道徳の一致が可能となり、希望ある世界が誕生しよう。


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(注1)2013年3月25日のシュピーゲル・オンラインが伝える「超低周波音(16Hz以下)の心配に由来する病気Krank aus Angst vor Infraschall」の記事では、「人は、風力発電の羽根によって引き起こされる超低周波音が健康に悪い影響があるとする何人かの医師の指摘を信じているのでしょうか。それは科学的には証明されておらず、全く説明されていません。ニュージーランドの研究は、ノセボ効果(負のプラセーボ効果)が関与者の苦痛の背景にあるというもう一つ別の提起をしています」と述べている。
http://www.spiegel.de/wissenschaft/medizin/wind-turbine-syndrome-krank-vor-angst-vor-infraschall-a-890407.html
Glaubt man einigen Ärzten, hat der von Windrädern verursachte Infraschall eine verheerende Wirkung auf die Gesundheit. Wissenschaftlich ist das nicht belegt - und kaum zu erklären. Eine neuseeländische Studie bietet nun eine andere These: Der Nocebo-Effekt könnte hinter dem Leiden der Betroffenen stecken.


(注2)
バーデンヴュルテンブルグ州環境省風力発電機シンドロームに対する回答
http://www.lubw.baden-wuerttemberg.de/servlet/is/229961/
Antwort
小児科女医ニーナ・ピアポント博士は2006年ネット上で、風力発電基の近くに住み、健康に対する問題の原因が風力発電基にある人々に呼びかけた。全部で23人の人に、自ら彼女に意思表示するように電話で質問調査で、引き続きの15人から(頭痛、睡眠障害、情緒不安定、記憶障害、めまい、吐き気などの)症候群の情報を受取った。彼女は23人の電話聞き取り調査で新しい病気像を創り出し、平衡器官の振動障害の風力発電機シンドローム命名した。彼女は絶えず連携して生ずる12の症候群もった病気像書上げた。そして彼女はその成果を2009年300ページの英語本『ウインド・タービン・シンドローム:ある自然実験に関するレポート』を世に出し、本の内容が世界中に拡がった。反風力発電キャンペーンでは女医ニーナ・ピアポント博士は専門家として行動している。最近の考察では、彼女のレポートには明らかに深刻な欠如があることが解って来た。すなわち彼女のやり方は添えられるべき医学的調査なしに、単に23人の電話聞き取り根拠で12の症候群に発展させており、余りにも冒険的である。また超低周波音で12の症候群が引き起こされるという大胆なテーゼも、科学的根拠がない。何故なら著者は全く聴覚検査を行っておらず、またどのように平衡感覚器官障害に至るか詳しく説明していない。彼女の推論はどれも実験データーで裏付けられていない。それ故レポートはいかなる専門誌にもこれまで載っていないことも不思議ではない。すなわち彼女の申し立てた病気像は科学的に認められていない。
それ故結論として、風力発電機シンドロームは存在しないと言わざるを得ない。
Frau Dr. Nina Pierpont rief im März 2006 über das Internet Menschen, die in der Nähe von Windenergieanlagen leben und ihre gesundheitlichen Beschwerden ursächlich auf die Windenergieanlagen zurückführen, dazu auf, sich bei ihr zu melden. Sie befragte insgesamt 23 Personen telefonisch und erhielt von ihnen Informationen zu Symptomen von weiteren 15 Personen. Basierend auf den 23 Telefonaten schuf sie ein neues Krankheitsbild und nannte es „Windturbinen-Syndrom“, auf Englisch „Visceral Vibratory Vestibular Disturbance (abgekürzt, VVVD; das bedeutet „vibrationsbedingte Störung des Gleichgewichtsorgans“). Sie beschreibt dieses Krankheitsbild mit den oben genannten zwölf Hauptsymptomen, die stets in Kombination auftreten würden. Frau Dr. Pierpont veröffentlichte ihre Ergebnisse 2009 in einem knapp 300-seitigen, englischsprachigen Buch mit dem Titel „Wind Turbine Syndrom – A Report on a Natural Experiment“. Die Inhalte des Buches haben sich inzwischen weltweit verbreitet. Bei Anti-Windkraft-Kampagnen tritt Frau Dr. Pierpont als „Sachverständige“ auf.
Bei näherer Betrachtung zeigt sich, dass die Studie offensichtlich gravierende Mängel enthält. Schon die Vorgehensweise, lediglich auf der Grundlage von 23 Telefonaten ohne begleitende medizinische Untersuchungen ein neues Krankheitsbild mit zwölf Leitsymptomen zu entwickeln, mutet abenteuerlich an. Auch die gewagte These, die zwölf Symptome seien auf Infraschall zurückzuführen, ist wissenschaftlich nicht haltbar. Denn die Autorin hat keinerlei akustische Messungen vorgenommen und auch nicht näher dargelegt, wie es zu einer Störung des Gleichgewichtsorgans kommen soll. Ihre Schlussfolgerungen werden durch die Versuchsdaten in keiner Weise gestützt. Es verwundert daher nicht, dass die Arbeit bis heute in keiner wissenschaftlichen Fachzeitschrift veröffentlicht wurde. Das angebliche Krankheitsbild ist wissenschaftlich nicht anerkannt.
Fazit: Ein „Windturbinen-Syndrom“ gibt es nicht.