(253)カントの理想実現(11)インダストリー4.0の地平線(1)・秘密が戦争国家、翼賛体制国家をつくる

ドイツ政府の産業戦略インダストリー4.0は決して新しいものではなく、戦後のベルトコンベア式の大量生産「労働の非人間化」を拒み、「人間中心の生産方式(マイスター指導のグループ作業によるボルボ方式)」の延長上にあると言えよう。
しいて大きな変化を揚げれば産業のデジタル化であり、サイバー・フィジカル・システムと呼ばれ、膨大なデータを駆使する装置と人を協調させるシステムに他ならない。
上の動画に見るように、製造過程の全てにおいてエコロジーな節約と効率化が求められ、大量生産の商品に対して価格的にも対抗できる商品をエコロジーに生産して行くことにある。
その究極的目標は、「将来的には必要なものだけを生産します」と動画でも言い切っている。
そこにはデジタル化で肥大化する科学技術を善導することで、万人の幸せを創出しようとする、(戦後一貫して地域の中小企業を支援することで奇跡の復興を果たした)ドイツ政府の希望ある未来戦略が感じられる。

それは同類と見なされているアメリカが掲げる新産業革命とは、目標が本質的に全く異なると言えよう。
すなわちアメリカのゼネラルエレクトリックGEを中心に掲げる新産業革命とは、ビックデータを駆使して工場のデジタル化で効率化とコスト削減を追求するだけではなく、世界の優れた中小企業を選別提携でネット化し、巨大企業が自らの利益のために世界支配する戦略に他ならない。

カントの理想実現(11)正義に不可欠な公開
Anhang付帯事項
2、Von der Einhelligkeit der Politik mit der Moral nach dem transzendentalen Begriffe des öffentlichen Rechts.
2,公法の先験的概念に従う政治と道徳の一致

カントの『永遠平和のために』の最期の付帯事項では、国家の公開性なくしては正義はないと明言している。
そして公開性という普遍的原理が貫かれるとき、万人の幸せを目的とする公法(国内法及び国際法)の政治(実践的法学)と道徳(理論的法学)が一致し、永遠平和という目標に絶え間なく近づいて行くと結んでいる。

このようなカントの視点から見れば、昨年の数の論理で強引に成立させた特定秘密保護法案は、国家の正義遂行のために絶対不可欠な公開性を削ぎ落すものであり、平和への青信号が赤に変わり、戦争への道が始まったと言っても過言ではない。
しかも現在、大部分の憲法学者が集団自衛権を違法と明言するなかで、戦争法案と呼ばれる安全保障関連法案が押し通されようとしている。
そのような戦争法案が、大部分の憲法学者の勇気ある違憲意思表示と国民の圧倒的多数が反対するなかで成立するとすれば、いつ戦争が始まってもおかしくないだけでなく、政府に都合悪い一切が秘密にされる戦前の翼賛体制国家の復活である。

そのような復活が望まれるのは、上に述べた新産業革命での巨大資本の世界支配と決して無関係ではない。(次週へ)。


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