(258)カントの理想実現(16)・2050年の未来・人類に未来はあるのか・日本の不当債務

インダストリー4.0の地平線(6)・富の蓄積など不必要な豊かな未来
上の動画は、シーメンスがエネルギー転換によって描く本『2050年の未来』を紹介するフィルムである。
そこでは、エネルギー問題や老人大国化が進むドイツの問題だけでなく、気候変動など益々混迷を深める世界の問題を克服する、希望ある未来社会が提示されている。
もし世界が、昨日まで悪魔のように原発ルネッサンス推進とギリシャなどの政府高官買収で新自由主義を追求してきたシーメンスのように、脱原発を契機に天使のように社会への奉仕、そして人類への貢献を目標に掲げることができれば、気候変動から貧困や格差社会のあらゆる問題を解消することも可能である(このフィルムは悪魔も天使に変身し得ることを実証している)。
何故なら私たち人類が獲得した第4の産業革命(インダストリー4.0)を善用すれば、2050年までに世界を自然エネルギーだけで賄われる社会に変えることも可能であるからだ。
具体的にはもしG20,さらには国連で地球を自然エネルギーだけで賄われる世界に変えることを、現在の地球危機克服の緊急最優先目標にできるならば、弱肉強食の競争に明け暮れる世界の企業も目標実現のためにインダストリー4.0をフルに活用して協力し合えるだろう。
そしてグリンランドや南極の氷河が全て溶け出すことで7メートル以上の海面上昇も提示されている2100年には、世界で消費に必要なエネルギーを遥かに超える自然エネルギーが日々創出されることから、富の蓄積など不必要にするほど誰もが豊かになり、(2050年以降温室効果ガス排出がないことから)気候変動も解消されつつある世界が、インダストリー4.0の地平線の彼方に見えて来る。

カントの理想実現(16)・人類に未来はあるのか・日本の不当債務
しかしながらそのような希望ある未来への理想が、化石燃料を支配する巨大資本によって封印されているのが、現在の世界とも言えよう。
すなわち限りある資源のなかで、グローバル化で益々肥大化した欲望がボトム競争を下へ下へとスパイラルさせ、環境規制や社会インフラ規制が全て取り払うことも厭わないほど、目先利益追求の自由が容認されている。
このような理念なきボトム競争がさらに肥大していけば、気候変動を激化させるだけでなく、世界の大部分の貧困化によって日常茶飯事化したシリアのような戦争が世界各地で起きるだけでなく、世界を終末に導く核戦争も避けられない。

しかし世界の終末時計が終わりに近づくにつれて、希望ある未来が見えてきたことも事実である。
一つは上に述べたように、エネルギー転換で自然エネルギーだけで賄う世界が見えてきたことである。
もう一つは、騙され続けても従うことしかできなかった市民が、希望ある未来を見つめて、勇気ある選択をし始めたことにある。
例えば先日のギリシャ国民投票財政破綻の脅しにもかかわらず、ギリシャ国民の6割以上が債務返済のための緊縮政策にナイ(ノー)を突き付けたことにある。
すなわちギリシャ国民の大部分が『ギリシャ財政破綻の処方箋・市民は監査を求めて立ち上がる』で見るように、莫大な債務の多くが不当債務であるという本当の理由を学んだからに他ならない。
日本でも安保法案の強行採決暴挙が引き金となり、新国立競技場計画が白紙に戻された。
過去の日本では公共工事の費用が計画の数倍に膨らむことは、責任が問われない大本営継続の日本社会では美徳とさえ称されてきた。
しかし今回の暴挙は、歴代の自民党政権でさえタブー視してきた集団自衛権容認であり、平和憲法を葬る何者でもなく、一部の人たちを除いて違憲は明白であるからだ。
それは国民に危機意識を目覚めさせ、従来の慣習“計画予算は小さくして、大きく膨らます”に対しても不満を頂点に達せさせていると言えるだろう。
しかも、国民と全く遊離した有識者会議で容認のお墨付きを与えて乗り切ろうとしたこと自体、安倍政権の驕りと言わざるを得ない。

現在の日本の1100兆円を超える債務も、既に述べた不当債務の定義に従えば(注1)、その多くが不当債務である。

田中角栄日本列島改造論が断行されたのは、輸出産業のために農業などの地域産業が犠牲されたからであり、その代償が負債で地域にお金をばら撒くことであり、土建国家への変身だったと言えよう。
そのように始まった日本の負債は、日本の巨大輸出産業が新興国の追い上げでクライマックスを過ぎても、一般国民とは逆に税制優遇、企業内部留保法人税軽減など理念なきあらゆる大本営支援で(トイレなき原発推進政策を含めて)、際限なく1100兆円を超えるまでに膨らませたと言えるだろう。
まさにこれは日本の国民にとっても不当債務であり、もし日本でも財政破綻が起きれば、国民だけが泣き寝入りするのではなく、官僚支配政治の責任、さらには海外へ多国籍企業として逃れる企業群にも請求を求めて行くべきであろう。

次回からはZDFズームが7月15日に放映した『ヨーロッパは維持できるのか?』を載せることで、ギリシャ不当債務とカントの理想実現を考えていきたい。

(注1)
ブログ68「ギリシャの不当債務と日本の財政破綻」参照
国際的に認識されている不当債務とされる3つの条件定義
1、政府が国民の認識と承認なしに融資を受けた場合。2、その融資が国民の利益にならない活動に使われた場合。3、貸し手がこの状況を知っていたにも関わらず見て見ぬふりをした場合

1、日本の負債は法で禁止されており(毎年の臨時法案措置で肥大化)、国民の認識と承認がなされておらず、利権による巧妙な予算の二重構造によっている。
2、国民の利益ではなく、その多くがゼネコンや巨大輸出企業の利益のために使われている。
3、貸し手である銀行、日銀は十分この状況を認識している。
以上のように全ての定義において、日本の1100兆円を超える債務は不当債務と言わざるを得ない。