(255)カントの理想実現(13)・インダストリー4.0の地平線(3)世界のボッシュが求めるもの・何故戦争が求められるのか前篇

上のドイツを象徴する企業ボッシュの製作した『インダストリー4.0』を見ると、具体的に第4の産業革命の柱であるサイバー・フィジカル・システムは、インターネット利用で人と機械が協調的に一体化するシステムであるとわかるだろう。

ドイツを代表する企業ボシュは、1886年創業者ロバート・ボッシュシュツットガルトに小さな町工場を設立して以来、暮らしを豊かにする製品を生み出すことで“万民の幸せ”を追求するだけでなく(詳細は次回動画で紹介)、動画の終わりで紹介されているように従業員の理念ある指導育成を通して従業員の幸せを追求して来たことが理解できる。

しかも消費者の幸せと従業員の幸せを企業目標に掲げたのは決してボシュ社だけではなく、既に述べたレンズのツァイス社、サンルーフのウェバスト社(WEBASTO)、高圧洗浄器のケルヒャー社(KARCHER)、ドア製品のドルマ社(DORMA)、ベットなどの車輪のテンテ社(TENTE)、印刷機のケーニヒ社(KOENIG&BAUER)、鎖のルド社(RUD)、髭ブラシのミューレ社(MUHLE)なども同じである。
これらの企業は、産業革命蒸気機関の発明で従来の工場制手工業が工場制機械工業へと転換し、人の労働と暮らしが逆に劣悪になっていくなかで、大部分が19世紀中頃地域の田舎町に創設された小さな町工場を起点としており、技術の創意工夫と“万人の幸せ”を追求することで世界に名を轟かせるまでに発展したと言えるだろう。
すなわちこれらの企業は、産業革命後の技術開発を目先の利益追求よりも、消費者の幸せと従業員の幸せの追求に向けてきたからこそ、かくも長い年月を乗り越え、栄光を勝ち取っているのである。

そのような視点で第4の産業革命インダストリー4.0の地平線を見る時、前回のドイツ政府の動画がエネルギー転換と人口構造転換の切札としての使命を訴えているように、現在の世界の危機を克服する使命が見えてくるだろう。

カントの理想実現(13)なぜ戦争が求められるか前編
作家百田尚樹の「沖縄の二つの新聞社はつぶさないといけない」との自民党勉強会の発言、さらにはそれに同調する若手議員の発言から、ファシズムの足音が身近に迫って来ていることが感じられる。
そして今圧倒的多数の国民が反対するなかで、集団的自衛権を容認する戦争法案(安全保障関連法案)が強引に決議されようとしている。
そこには、2007年に責任放棄した安倍晋三首相が有り得ない復活をしたこととリンクする。
端的に言えば、グローバルに肥大化した日本の産業がボトム競争で行き詰まり、突破口として武器輸出や原発輸出で世界の紛争地にさえ乗り出すために、それを護る軍隊が必要とされているからに他ならない。
すなわち安倍晋三は、90年代に若くして自民党幹事長になった時から、産業進出を護る軍隊の必要性を訴えてきたからである。
すなわち富国強兵によって、シンクタンクなどが述べるように新重商主義を求めているからである。
重商主義とは、16世紀から18世紀半ばの絶対王政の西ヨーロッパ諸国がとった政策で、植民地からの貴金属などの搾取で国富増大をはかる経済政策である。
16世紀後半に工場制手工業(マニュファクチャ)が誕生すると、民間資本家が生み出され、市民革命へと発展して行くことで、絶対王政終焉と同時に重商主義が終焉した。
しかし産業革命によって工場制手工業が工場制機械工業に転換すると、職人(熟練工)が工場から追い出され、低賃金、長時間労働へと労働条件が劣悪化して行った。
そして機械工場で生産された製品は海外に輸出され、巧妙に形態を変えた新重商主義が始まり、現代に至るまであくなき利益追求がなされている。

上のロバート・ボッシュは、産業革命によって労働条件が劣悪化するなかで、後に大きな花を咲かせる辛い職人の見習い修業をした。
その辛い体験が万人を幸せにしない工場に立ち向かう不屈の精神を生み出したと言われており、彼は従業員の労働を8時間労働にし、利益の病院寄付などで社会事業を実践した。
更に彼は、当時波及した反植民地主義、反軍国主義を掲げたマンチェスターキャピタリズム運動を支持していた。
特にドイツの運動では、カントの影響を受けて倫理的目標が強く掲げられ、公正な自由貿易を通して世界平和と人類の友好親善が求められていた。

しかしその後の世界は、軽工業から重工業へと発展するなかで富への渇望を膨らませ、世界大戦に突入して行ったことは周知の事実である。
そして今、万人を幸せにしない新自由主義のなかで益々富への渇望が肥大し、軍事力によって巧妙な植民地支配の新重商主義が求められているのである。



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