(27)検証シリーズ3 何故日本の国会議員報酬はドイツの連邦議員よりも10倍以上も高いのか。

公表されている歳費をドイツと較べると、ドイツの連邦議員は900万円ほど(8159ユーロ)であり、日本の国会議員は2100万円で2,3倍である。
しかしこれには、巧妙な裏がある。
かつて一斉を風靡したタレント議員野末陳平が24年間の国会議員を辞職した直後(1996年)に書かれた『国会議員とお金の作法』では、国会議員の恥知らずな権力欲と、世界1の高い報酬と至れり尽くせりの配慮と特権を、自らの反省に基づきあからさまにしている。
年間の歳費は文章通信交通滞在費や立法事務費を含めて4400万円(現在も変更なく、世界第2位のアメリカ議員の1700万円を大きく引き離している)、その上政党助成金と称して、国民の血税から国会議員1人あたり年間約4000万円の配分、公費で賄う3人の秘書給料、議員会館使用料、都心の1ヶ月400円のオフィスと約5万円の3LDKの豪華議員宿舎、海外視察名目で使える人と金(飛行機はファーストクラス使用で、旅行費用は180万円ほど)、さらに新幹線無料パスから飛行機の無料チケットを含めると、軽く1億円を超えている。
このような配慮と特権は、誰が何のために整えたのだろう。

結論から述べれば、官僚が金で政治家を骨抜きにすることで戦後も官僚主導の政治を継続し、天下りによって日本経済を支配し、自らも甘い汁を享受するために他ならない。
あれだけ「国民の暮らし第一」を唱え、天下りの禁止と官僚支配の打破を掲げた民主党政権も僅か一年で180度転換し、天下りを合法化し、以前にも増して官僚に丸投げで、消費税増税や福祉、年金の大幅縮減を求める「税制と社会改革の一体化」を推し進めようとしている。
それは昨年の民主党の「事業仕分け」でも明らかであり、各省庁の民主党副大臣は従来の官僚支配による行政を終始弁護し、公約した16兆円の無駄予算の捻出など絵空事であった。

このような日本の官僚支配政治は殖産興業、富国強兵を求めた明治政府誕生から既に始まっており、伊藤博文らはそのためにドイツ帝国ベルリン大学で学び、ドイツの官僚制度を模倣した。
しかしドイツでは、ビスマルク率いる政府も議会決定なしには身動きできなかったことから、勅令などのやり方で、議会決定なしで主導できる立憲君主制をウィン大学のロレンツ・フォン・シュタイン教授から学んだ。
そして勅令によって議会に左右されない官僚による専制政府は、富国強兵の実現によって大陸に進出し、欧米との激突を通して戦争へと追い込まれて行った。
2011年1月16日に放映されたNHKスペシャル「日本人はなぜ戦争へと向かったのか・巨大組織“陸軍”暴走のメカニズム」は、エリート官僚集団の派閥抗争、果てしなき迷走を通して、現在にも通じる官僚組織の肥大化、地位保全、そして無責任体質といった致命的欠陥を浮き彫りにした。
そして戦後も核持ち込みや核保有の密談から高速増殖炉開発に至るまでを、議会決定なしに官僚が主導し、今もアメリカ主導の新自由主義を推し進めるために、原発から福祉に至るまであらゆる分野で、戦前同様に国民に犠牲を求めようとしている。
そしてお金によって懐柔された政治家たちは、大幅な消費税増税年金受給年齢の延長などを、今まさに財政安定化と称して取りかかろうとしている。
これを打破するためには、骨抜きにされた政治家の歳費を半減し、政党助成金や一切の配慮や特権を廃止することで、被災者の人たちや1100万人を超える年収200万以下の家庭の痛みがわかるように目を覚まさせる以外にない(歳費年間1050万円だけとしても、まだドイツの連邦議員だけでなく、フランスやイギリスの国会議員より多い)。
そうした国民の痛みを理解できる政治家のみが、現在の大本営と変わりない官僚支配を打破し、国民の利益を優先する民主政治を築くことができるだろう。
そうすれば公務員給料の2割削減の実現、原発予算の大幅削減、欧米並みの防衛費削減、国の外郭団体への助成金大幅削減、大企業の莫大な内部留保への課税など、財源はいくらでも出てくる筈だ。