(26)検証シリーズ2 ドイツのように悪魔の高速増殖炉を天使のワンダーランドにすることは可能か?

高速増殖炉プルトニウム核分裂させる原子炉であり、その際放出される中性子によって原発廃棄物のウラン238をプルトニウム239に変換し、燃料を増やして使用できることから、増殖炉と命名されている。
しかし核分裂の速さは従来の250倍にも上り、100分の1秒という単位で出力暴走を起こす可能性があり、爆発の大きさもドイツの環境研究所KATALYSEによれば従来の5倍にも達し、プルトニウムが数百キロに渡って飛散すると予測している。
プルトニウムは1グラムで数百万人を殺すことができる猛毒物質であり、そうした報告からドイツ市民は、1970年から開始したカルカー高速増殖炉開発を「悪魔の原発」と呼んでいた。
しかも高速増殖炉は熱媒体として水の代わりにナトリウムを使用するため、致命的な欠陥を有していた。ナトリウムは高速増殖炉での使用の際はガス化し、引火しやすく、火力も爆発的であり、恐ろしく腐食性があるからだ。
事実カルカー高速増殖炉の完成間近の1984年11月に爆発的ナトリウム火災が生じ、綿密な修理点検にもかかわらず1985年5月、7月、12月にもナトリウム火災を引き起こし、世論の反対も頂点に達したことから、運転されることなく開発は中止された。
それは「万一爆発すれば、ドイツがヨーロッパ大陸から消える」といった専門家の意見が、ドイツ全土を震撼させたからでもあった。
そしてこのかつてのライン川辺の悪魔のカルカー高速増殖炉は、今や天使のワンダーランドとなり、使用されなかった炉心はホテルのレストランとして使用され、年間50万人の観光客が訪れる観光名所になっている。

日本の高速増殖炉もんじゅ」は、このかつてのカルカー高速増殖炉で学んだ三菱重工の精鋭の技術者たちによって建設された。
しかし使用開始後4ヶ月も経たない間に引き起こした1995年12月のナトリウム事故が物語るように、全くナトリウムの致命的欠陥を克服する技術を持ち合わせていなかった。
しかも活断層の上に建設したにもかかわらず、地元に絶対安全であると断言して開始したやり方は、ドイツの専門家から狂気であると厳しく批判されても致し方ない。
もし1995年のナトリウム事故で炉心が爆発していれば、数百万人が死亡するだけでなく、プルトニウムが数百キロに爆発飛散することから、少なくとも広島から東京までが人の住めない場所に変わり果て、日本はアジアから消えていたと言っても過言でない。
それは強行して開始した側にも十分わかっていることであり、それが15年近くもの長い休止の理由である。
しかも未だに「ナトリウム使用は安全面で制御困難」という国際的見解を克服する技術がないことから、現在の炉心用装置の原子炉内落下という普通では考えられない事故にしろ、何回もの試行にもかかわらず炉心用装置が引き抜けない事態にしろ、莫大な費用を浪費して時間稼ぎをしているように思える。
本来ならば日本の高速増殖炉開発は、すべて撤退した欧米先進国にならって中止するのが筋である。
それにもかかわらず中止できない理由は、昨年公開された極秘文章が明らかにしたように、高速増殖炉開発は日本がいつでも核大国の選択ができるための隠された国策であったからだ。(下の資料参照)
それは北朝鮮やイランで、平和のための原子力利用と言って、核開発をしてきたことと大きく変わるものではない。

日本の「もんじゅ」をドイツのように天使のワンダーランドにすることは、既に使用されていることから難しいが、中止を決定後放射能を最大限取り除き、チェルノブイリのように動植物のサンクチュアリの森として、環境保護のシンボルとすることは可能である。


2010年10月3日のNHKスペシャル「核を求めた日本ー被爆国の真実」は、日本が40年前核保有を求めて西ドイツと極秘協議を行っていたことを報道した。
この報道を受けて外務省は11月29日NHKの報道を裏付ける文章と高速増殖炉と核の結びつきを示す文章を公開した。
開示された外交文章では、「第480回外交政策企画委員会」(68年11月20日)での発言が引用されており、次のような驚くべき発言があった。
高速増殖炉等の面で、すぐ核武装できるポジションを持ちながら平和利用を進めていくことになるが、これは意義のないところだろう」(鈴木孝国際資料部長)
「現在、日本が持っている技術で爆弾1個作るには、半年〜1年半ぐらいあればいいと言われている。起爆装置もその気になれば半年〜1年ぐらいでできるのではないだろうか」(矢田部厚彦科学課長)。