(307)世界の官僚奉仕を求めて第17回官僚奉仕の切札は太陽(12)どうにも止まらない日本の高速増殖炉(私の見た動画9『ワンダーランドとなったドイツ高速増殖炉』)

日本の高速増殖炉もんじゅ」は年末には廃炉が正式に決定されることが報道されていますが、高速増殖炉を断念したわけではなく、従来の一旦動き出した計画がむしろ焼け太りしていく危惧を感ぜずにはいられません。
私自身高速増殖炉もんじゅ廃炉が強まるなかで、実際の現場を検証する意味で9月30日に敦賀まで出かけて、「もんじゅ」を午後から見学しました。
話題が沸騰していた事で少なくとも何人かの見学者があると思っていましたが、見学者は私一人で福井大学特任教授のS氏が恐縮ほど親切に案内してくれました。
もっとも恐縮したからといって遠慮することなく、このブログで19回に渡って述べてきた「脱原発を求めて」の視点に立って忌憚なく危険性を問い正したつもりです。
危険性やエネルギーの未来像の考え方では真逆に異なるにもかかわらず、いち市民の主張に上から目線で否定するのではなく、一つ一つ耳を傾けた上で自らの意見を述べられ、帰りも私の車が遠のくまで見送ることなど、私にはとても出来ないことです。
S氏の主張を簡略に述べれば、エネルギー資源国でない日本は核燃料サイクルを必要とし、現在1%程しか利用されないウランを高速増殖炉でウラン238をプルトニウムに変換すれば100倍以上長くウラン資源を利用でき、前回起きたナトリウム漏れ事故も溶接の改良で技術的に克服できるというものでした(ナトリウム燃焼実験室でナトリウム冷却管の溶接部分をどのように改良したかを現物見本での説明も踏まえ)。
もっともS氏は、(溶接箇所が数えきれないほどあり、技術改良で100%安全であるという検査結果が得られたとしても想定外の事故は起き得るから)実際にはナトリウム漏れを起こす確率はゼロにはならないのではないかという私の質問を、否定しませんでした。

全体としては「もんじゅ廃炉が高まるなかで、意外にもS氏の対応には将来に対してむしろ期待と自信が垣間見られました。
それは10月7日に開催された今後の高速増殖炉開発を審議する高速炉開発会議(第1回会合)の大凡の筋書きが、既に関与者にはわかっていたからに他ならないでしょう(もっともS氏は、高速増殖炉開発反対科学者との公開での国民議論を主張されていました)。

公表された資料では議事録が公表されず、議事概要のみが記され、会議出席メンバー(経済産業大臣 世耕 弘成 、文部科学大臣 松野 博一 、国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構理事長 児玉 敏雄 、電気事業連合会会長 勝野 哲 三菱重工業株式会社代表取締役社長 宮永 俊一 )から2つの議題に対して、以下のような発言があったされていました。

その発言で特に私の印象に残っているものは、
• 我が国が、今後も引き続き、核燃料サイクル政策を継続し、高速炉の実用化を確実に推進していく上で、どのような道筋がより合理的なものであるのか、この高速炉開発会議において御議論いただき、特に、実証炉の実現に向けた道筋について、しっかりと具体化していただきたい。また、その中で、「もんじゅ」や「常陽」、その他の研究施設、設備がどのような貢献ができるのかなどについても、あわせて御議論いただきたい(議題1:高速炉開発の意義と国際動向について)。
• これまで、基礎研究から高速実験炉「常陽」、プルトニウム燃料製造、さらに高速増殖原型炉「もんじゅ」による、高速炉プラント技術、MOX燃料関連技術、ナトリウム取扱い技術などの技術開発を通じて、将来の高速炉の実用化に不可欠な様々な知的、人的資源を創出、育成してきた(議題2:高速炉開発のこれまでの経緯と教訓について)。

このような高速炉開発会議は、国民世論が高速増殖炉廃止を求める中で、これまで以上に高速増殖炉開発を推進していくための会議であり、私から見れば最初に結論ありきの大本営のやり方にほかなりません。
何故なら1991年にドイツ高速増殖炉開発が公式に停止された後、その検証もされず開始された無謀とも言える日本の高速増殖炉開発は、ドイツで予期されたトラブルが再現され続け、22年間で国民の血税が1兆円以上使われてきたにもかかわらず、その反省もなく推進者だけの議論でさらなる推進が目論まれているからです。

2010年出されたドイツ最大の環境団体ブンドのレポートは未だに日本などで推進されている高速増殖炉を取り上げ、危険性とリスクについてケルンにある著名な第三者機関のKATALYSE環境研究所の報告に基づいて次のように述べています。
スーパーガウ(大事故)の影響面積規模は従来の軽水炉ものに比べ2倍から5倍に達し、最大270万人が死亡し、260キロに渡って猛毒のプルトニウムがばら撒かれ、大地や水の汚染で人が住めなくなるだろうと予測しています。
また2008年7月11日のシュピーゲル誌を引用し、「核兵器や非人道的爆弾を求めるテロリストに対して高速増殖炉建設は、誘惑的展望を提供する。(爆発で)放射される放射能は短期に大地や海に運ばれる」と警告しています。

自然エネルギーへのエネルギー転換が推進されるドイツでは、コスト的にも風力発電太陽光発電原発製造電気より明らかに安くなって来ているにもかかわらず、莫大な血税を使って反省もなく、猛進する日本の高速増殖炉開発の焼け太りは何でしょうか、それに対して国民議論を切に求めます。