(97)ドイツの大飯原発再稼動報道が投げかける亡国日本への示唆・・・「国民の生活が第一」をオリーブの木のように育てたい

ドイツのメディアは今回の大飯原発の再稼動に対して、反対運動に距離を置く日本のメディアと対照的に積極的に向き合い、日本の多くの市民がデモに参加して反対していることを伝えている。
これは1995年末高速増殖炉もんじゅ」がナトリウム事故を起こした際、ドイツのZDFが「ナトリウム金属使用は安全面で制御困難というのが国際的な見解である」と強く指摘し、日本の国民が平静であることに対して、「あらゆる災害を避けられない運命として受け止めることに慣れている国民は、最も地震の多い国にある50ヶ所の原発も恐くないのでしょう」と冷ややかにに報道したことと対比的に感じられた。
しかも再稼動を許したのは日本のメディアの責任であると言わんかのように、7月1日のシュピーゲル誌オンラインは「抗議運動は体制的メディアによって長い間無視されてきたが、活動家が準備実行するために短いニュース報告のような社会メディア、ツィッターを利用することで、盛り上がってきた」と伝えている(注1)。
またシュピーゲル誌は福島原発事故後の5月23日号で、日本を「原子力国家」と指摘し、日本のメディアはその支配を強く受けていることを強調していた(注2)。
このような報道は日本に暮らす大部分の人たちには侵害であり、政府批判を犯罪として処罰する非民主的な中国に較べて、日本は民主的に自由な国家であると反論するだろう。
しかし批判が民主的自由の権利であるドイツで暮らしてみると、日本が民主的に自由であるというのは建て前であり、「原子力国家」と指摘される大本営支配をいかに受けているかが見えてくる。
ドイツのヤパノロギー(日本学)では、日本人が外交や企業活動の場で全く自由な個人意見がないのは、自由に意見を述べれば様々なかたちで制裁(ザンクツィオン)を受けるからだと説明しているが、的を射ていると感じざるを得ない。
ドイツのメディアから見れば、日本のメディアには先進国では考えられない前近代的記者クラブが存在し、報道の自由が縛られ、しかも税金で記者室が与えられるだけでなく、光熱費まで支払れるのは信じられないないことである。
それ故日本のメディアは産業同様に護送船団方式と批判され、前述のシュピーゲル誌は「原子力国家に不都合な事実を暴露し、報道する者は制裁を受ける国」であると指摘している(注2)。
その指摘は2009年「国民の生活が第一」の民主党政権誕生を思い出して見れば明らかであり、理想を掲げる鳩山首相の母親からの政治献金を、日本メディアはまるで極悪犯罪であるかのように異常なまでに攻撃し続け、引きずり下ろしたのである。
そこでは、これまでの大本営支配の根底からの変革が実現不可能と揶揄され、本質的な問題が全く追及されなかった。
また民主党政権誕生の生みの親であり、自民党離党以来一貫して戦後の大本営官僚政府の解体を主張してきた小沢一郎は、不当な検察リークとメディアが繰り出す御用評論家たちによって、まるで非国民のように悪党に仕立てられた。
日本のメディアが大本営支配を受けていないというならば、消費税増税の前に先ず特別会計を通して独立行政法人やその下の無数の関連企業に流れる利権構造を徹底的に追及し、財政健全化の青写真を国民に提示していくべきである(注3)。
また原発を再稼動する前に、大企業には自家発電の原発60基分の予備電力があり余っていると報道されていることから、その検証を徹底すべきである(注4)。
さらに原発ではグレーなお金が横行していることから、ほとんどの電力会社役員や原発産業役員からなされる組織的な政治献金や組合からなされる政治献金を、例えば反対する組合員の取材を通して、継続的に徹底追求するのはメディアの責務である(注5)。

そして今、全面的に懐柔された民主党野田政権が大本営延命のための消費税増税断行と、福島原発事故の検証もなされないなかで原発再稼動断行を開始し、核燃料サイクル計画も有耶無耶にしようとしている。
まさに亡国日本である。
しかし結果として生じた「国民の生活が第一」は、国民に選択肢を与えると同時に、亡国を避けるための最後のチャンス(?)を与えている。

そして今、「国民の生活が第一」を財政健全化(増税ではなく大本営利権構造の解体)、脱原発、真の地域主権を実現する核として、「オリーブの木」のように育てたい。

(注1)シュピーゲル誌オンライン2012年7月1日「フクシマ後の原発・・日本は多数の反対にもかかわらず原子炉を稼動する」 http://www.spiegel.de/politik/ausland/japan-faehrt-trotz-massiver-proteste-atomreaktor-hoch-a-841958.html
下記に全文翻訳(このニュースソースはドイツ通信DPA、ドイツ通信エージェントDAPDの取材によるものであり、ドイツの主要なメディアはこの同じニュースソースを利用している)。

(注2)「シュピーゲル」誌2011年5月23日号「原子力国家」http://www.spiegel.de/spiegel/0,1518,764069,00.html 翻訳文http://uesugitakashi.com/?p=917

(注3)ブログ94「本当の危機は日本にあり」参照。
http://d.hatena.ne.jp/msehi/20120623/1340457455

(注4)「ニッポンの自家発電」はすでに原発60基分!」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/7655

(注5)電力業界 政界に多額の献金NHK動画http://www.veoh.com/watch/v245533016Y9AP5ty?h1=%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E6%A5%AD%E7%95%8C+%E6%94%BF%E7%95%8C%E3%81%AB%E5%A4%9A%E9%A1%8D%E3%81%AE%E7%8C%AE%E9%87%91
(この動画は日本のメディアから削除されているだけでなく、資料さえも検索サイトから削除されている)



(注1) SPIEGEL ONLINE 01. Juli 2012, 15:08 Uhr
Atomkraft nach Fukushima Japan fährt trotz massiver Proteste Reaktor hoch
フクシマ後の原発・・日本は多数の反対にもかかわらず原子炉を稼動する
Ohne Atomkraft geht es nicht - das ist die Position der japanischen Regierung, die rund ein Jahr nach der Katastrophe in Fukushima jetzt erstmals wieder einen Reaktor hochfahren ließ. Tausende protestierten gegen die Entscheidung.
原発なしにはうまくいかない、それが日本政府のポジションであり、福島の原発事故のおおよそ1年後に初めて原子炉を再稼動させる。夥しい数の人たちがその決定に反対して抗議している。
Tokio - Mehr als ein Jahr nach der verheerenden Atomkatastrophe in Fukushima ist erstmals wieder ein japanisches Kernkraftwerk hochgefahren worden. Der Reaktor 3 des Meilers Ohi ging am Sonntag ans Netz. Vor den Toren des Atomkraftwerkes protestierten Dutzende Demonstranten mit Sprechchören und Tänzen gegen die Wiederinbetriebnahme. Die Bereitschaftspolizei sicherte das Atomkraftwerk im Südwesten des Landes.
東京発。福島の荒廃をもたらした核大災害の1年以上後に初めて、一基の日本の原発が再稼動された。すなわち大飯原発3号基は日曜日に再稼動した。原子力発電所の門の前では多数のデモ参加者がシュプレヒコールと踊りで再稼動に抗議した。機動隊はその県南西にある原子力発電所を守っている。
Zuvor hatten die Demonstranten die Zufahrt blockiert und damit Arbeiter daran gehindert, auf das Gelände zu gelangen. Die Betreibergesellschaft Kansai Electric Power teilte mit, der Protest wirke sich nicht auf das Hochfahren des Reaktors aus.
前もってデモ参加者はアクセス道路を封鎖し、従業員が原発施設の場所にたどり着けないように妨げた。関西電力は抗議が原子炉の稼動に影響を及ぼさないことを伝えた。
Nach dem Unglück im vergangenen März hatte Japan alle 50 betriebsbereiten Reaktoren für Sicherheitsüberprüfungen vom Netz genommen. Seitdem ist die öffentliche Meinung über die Wiederinbetriebnahme gespalten. Am Sonntag sollte zudem eine groß angelegte Demonstration in einem Park in der Hauptstadt Tokio organisiert werden, um gegen die erneute Inbetriebnahme zu protestieren und den Rücktritt des Ministerpräsidenten Yoshihiko Noda zu fordern.
昨年の3月の不幸後、日本は50全ての稼動原子炉を安全点検のために停止していた。それ以来再稼動に対する公の意見は二つに割れていた。日曜日(7月1日)に新たな稼動に反対して抗議し、野田首相の退陣を求めるために大規模なデモが首都東京で行われる。 Der Regierungschef ordnete im vergangenen Monat an, die Reaktoren drei und vier des Atomkraftwerks Ohi wieder hochzufahren. Ohne Atomenergie könne das Land seinen Lebensstandard nicht halten, erklärte er. Insbesondere für die heißen Sommermonate wird ohne Atomstrom eine Energieknappheit befürchtet. Japans Ölverbrauch ist stark gestiegen.
首相は先月、大飯原発の3号機と4号機を再稼動することを指示した。首相は原発エネルギーなくしては、国は生活水準を維持することは出来ないと説明した。特に日本の石油消費が著しく上がる暑い夏期に、原発なくしては電力不足が懸念されからだと。 Am Freitag hatten bei einer der bisher größten Demonstrationen gegen Atomkraft in Japan Zehntausende Menschen in Tokio gegen das Wiederanfahren des Meilers in Ohi protestiert. Sie skandierten Parolen wie "Nein zur nuklearen Inbetriebnahme". Die Protestbewegung wurde von den etablierten Medien lange Zeit ignoriert, gewann aber an Zulauf, da Aktivisten soziale Medien wie den Kurznachrichtendienst Twitter nutzten, um sich zu organisieren. Nobelpreisträger Kenzaburo Oe oder der Komponist Ryuichi Sakamoto, der die Melodie für den Film "Der letzte Kaiser" komponierte, schlossen sich der Bewegung an.
金曜日(6月29日)には日本の原発に反対するこれまでの大規模なデモとして、大飯原発の再稼動に反対して東京で数万人の人が抗議した。彼らは「原発再稼動反対」というスローガンを唱えていた。抗議運動は体制的メディアによって長い間無視されてきたが、活動家が準備実行するために短いニュース報告のような社会メディア、ツィッターを利用することで、盛り上がってきた。ノベル賞受賞者の大江健三郎や映画『ラストエンペラー』の音楽を作曲した坂本龍一が運動を支えていた。
Im havarierten Atomkraftwerk Fukushima-Daiichi fiel am Samstag das Kühlsystem für die verbrauchten Brennstäbe im Reaktor 4 aus, wie der Betreiber Tepco mitteilte. Am Sonntag sei ein Ersatzsystem installiert worden. Innerhalb von 70 Stunden müsse die Kühlung nun repariert werden, sonst steige die Temperatur und Strahlung trete aus, hieß es in der Mitteilung von Tepco.
事故を起こした福島第一原発では土曜日に4号機原子炉の使用済み核燃料のための冷却システムが、東京電力が伝えるように故障した。日曜日には代用システムが設置され、温度が上がり、放射線が出るけれども70時間以内に冷却が修理されると、東京電力の報告は伝えている。