(200)ドイツメディアから考える今1・・・原発テロと集団的自衛権 前篇

ドイツの公共放送ZDFのフロンタール21は、3年前3つの原発メルトダウンした福島原発事故のような悲劇を二度と繰り返さないことを願って、2014年3月11日の番組で『原発施設攻撃目標』(上に載せた動画)を放映した。

このフィルムが制作された背景には、昨年2013年6月にシュレースヴィヒ上級行政裁判所が、ブルンスビューテル使用済み核燃料中間貯蔵施設の操業をテロ攻撃に十分な備えが全くないとして、違法の判決をしたからだ(注1)。

フイルム前半(2−1)では原発リスク専門家、裁判官当人、裁判専門の物理学者などを取材するだけでなく、軍事産業の部内者でもある専門家に取材し、原発及び中間貯蔵施設がテロリストの攻撃目標になれば、悲劇の悪夢は避けられないことを示唆している。
ZDFの番組紹介文では、原発テロの悲劇の悪夢に世界はこれまで沈黙しているが、北アフリカやシリアの市街戦以降、世界の多くの原発施設が危険であると警告している。

日本では、ドイツのような専門家や厳しいメディアの追及もないことからドイツと比較して遥かに無防備であり、トルコやサウジアラビアなどに原発を建設することがテロリストの攻撃目標となり、如何に危険であるかについても全くイノセントである。

先日放映された4月12日NHKスペシャル「集団的自衛権を考える」(動画4分20秒より)での議論は、それを如実に表していた。
議論の終わり近くで、集団的自衛権に反対する豊下楢彦関西学院元教授)が以下のように述べている。

「・・・北挑戦がアメリカへミサイルを撃ったとき、日本の上空を飛んだとき、アメリカのミサイルを撃ち落とすべきじゃないかという議論があるんですけど、北朝鮮のミサイルの脅威が高まっているときに、磯崎さんが来ていらっしゃるからお聞きしたいんですが、何故原発の再稼働するのかという問題なのですね。つまり一般論ですが、軍事オタクという方は問題の政治的、外交的背景を問われない。つまり何故北朝鮮が撃つのかという政治的動機の問題ですね。北朝鮮アメリカ撃てば、アメリカはピョンヤンを壊滅させますよ。一種の自殺行為ですよ。そういう理性を欠いた北朝鮮であれば、間違いなく日本を攻撃するだろう、日本海原発を攻撃するだろう。原発はほとんど無防備ですよ。閉鎖中よりも稼働中の方がはるかに破壊力が強い。そういうときに、北朝鮮のミサイルがこれだけ脅威を増しているときに、原発の再稼働と矛盾するんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか?」

この問いに対して磯崎陽輔(内閣総理大臣補佐官で実質的に安倍首相のスポークスマン)は、原発再稼働は今日のテーマではなく、日本経済にとって重要であるからだと(原発攻撃されれば日本経済は壊滅するにもかかわらず)、矛先を転じた(というより答えれなかった)。
また同席した集団的自衛権支持の前の民主党政権での防衛大臣森本敏(大臣になる前はオスプレーの危険性を強調し、大臣になると容認に回ったことは国民の誰もが知るところ)は、日本のミサイル網はアメリカに次いで優れており、原発攻撃に無防備という豊下の言葉に激しく反論した。
しかし隙間だらけの日本のミサイル網では原発攻撃に対応できず、ミサイル軍備強化を「無用の長物」といわれると、質問に正面から答えれないにもかかわらず激怒していた(少なくとも私にはそう見えた)。

是非この休にはZDF「原発施設攻撃目標」とNHKスペシャル「集団的自衛権を考える」を見ることを薦めたい。
何故ならトルコのようなアルカイダなどのテロリストが横行する危ない国に原発を建設することは、賠償責任が生ずるだけでなく、多くの日本人技術者の命を生贄にすることでもあるからだ。
また集団的自衛権に関しても、尖閣諸島問題が協議中にもかかわらず、強引な国有化で引金を引いたのは日本であり、韓国に対しても見直しを求めて河野談話を持ち出したのは日本である。
すなわち現在の緊張関係をつくりだしているのは日本に他ならず、それについてはドイツからアメリカのメディアまで一致している。
そして今、番組の論者が指摘するように全く筋の通らない砂川判決の独自解釈で、集団的自衛権行使容認を通して平和憲法を葬ろうとしているように私には思える。

(注1)この判決は中間貯蔵施設の安全性に本質的な欠陥を国民に示したが、強制力がないため、現在も違法とされる状態が継続されている。