(70)2012年天国と地獄・・・理想のエコ社会か悲惨な監視社会か。後編

消費税増税の切札を切って、過去2回の増税の時のように債務を肥大化させれば確実に日本は財政破綻する。
何故なら日本は現在の76円に張り付いた円高が物語るように、日本は金融ファンドたちのEU後の標的となっており、増税にもかかわらず債務が肥大すれば、彼らは日本国債の大量空売り、信用リスクCDSの大量購入を開始するからだ。
増税によって日本の債務が肥大するのは、日本の金庫に大きな穴が開いており、本来なら有り余る財源も、たちまち喰い尽されていくからである。
前回述べた新幹線建設では、JR各社が開通している整備新幹線の使用料として、国土交通省所管の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構」に毎年400億円を払っており、この機構は2011年までに新幹線建設のこれまでの借金を完済し、2012年からの使用料を法改正で建設に使えるようにしているからだ。
本来ならばこの使用料は国民のものであり、国の金庫に入れるのが筋であるが、肥大化した利権構造を維持するために、現在の使用料だけでなく将来の使用料を担保として益々建設に拍車がかかるのである。
こうした国の予算がなくてもいくらでも建設できる仕組みは、2003年の道路公団の民営化の際に作られている。
小泉政権で「聖域なき構造改革」の柱として道路公団の民営化議論が開始された時、国民は借金をつくらないガラス張りに開かれた公共事業を期待した。
しかし3年という長い年月の結果、これまでの道路公団のやり方を巧妙に焼け太りさせ、借金で永続的に高速道路建設ができる仕組みを作り上げた。
すなわち、ガソリン税などによる5兆円を超える道路特定財源と高速道路料金の将来に渡る担保で、少なくとも今後半世紀に渡って、71区間の高速道路建設を継続できる新直轄方式である。
そこでは、民営化される道路公団も形式に過ぎず、新会社は3つの高速道路企業と道路資産と借金を運営する「独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構」に分離され、この機構が資金の借り入れや返済の主導権を握ることになった。
そしてこの機構を支配するのは国土交通省であり、たとえ負債を増大させたとしても責任はどこにもなく、最終的に尻拭いさせられるのは国民に他ならない。
わかり易く言えば、赤字を生み出す道路公団では、高速道路建設で高収益を上げる117の直轄子会社やその下の多くのファミリー企業に対して国民の批判が強いことから、民営化と称して経営管理する新会社と借金を返済する機構への分割であった。
このような特別財源を将来の分まで担保として、絶えず建設に充てる仕組みは航空機燃料税でも同じである。
また原発関連事業では一般会計および特別会計からこれまでに莫大なお金が支出されているだけでなく、電気料金の2パーセントが電源開発促進税として徴収され、4000億円の大半が原発推進政策の宣伝費や原発を受け入れる地域の補助金としてバラマカレている。
こうした仕組みを変えることなしに、消費税を10パーセントに倍増させても根本的な解決どころか、逆に財政悪化を招くことは必至である。
何故なら現在50兆円ほどの財源が不足しており、2015年から政府の甘い見積もりでも最大13兆円しか入らず、現在の大きな穴の開いた金庫をそのままにしては、債務の肥大化は避けられないからだ。
確かに輸出大企業にとって消費税増税は、輸出製品に消費税がかからないだけでなく、仕入れ総額の消費税が還付されることから大きな支援となる。しかし中小企業は仕入れの消費税増額分を転化することが難しいことから、倒産の激増は避けられない。
また日本の食物などの生活必需品は、私の暮らしていたドイツに較べても3倍近く高いことから、消費税が倍増されれば、海外から質の変わらない製品を販売するディスカウントショップが増え、内需産業は益々危機に陥ることは明白である。
また消費税倍増の負担が1100万人を超える年収200万円以下の家庭や国民年金だけで暮らす高齢者に如何に重いか、現物支給も含めて総額1億円を超える額を歳費として手にする国会議員には全く理解できていない。
それらの人々の多くが生活できなくなれば生活保護に頼るしかなく、益々財政は悪化する。
また消費税増税で益する輸出大企業も、既に化石燃料による重化学産業は著名な経済学者が指摘するように終焉を迎えており、円高がなくても新興国とのコスト競争では衰退は避けられない。それ故、太陽光による地域のエコロジー産業に転化していくことなしには未来はない筈だ。
もし日本の金庫の大きな穴をそのままにして消費税増税の切札を切れば、アメリカの金融機関であるIMFが世界同時破綻を避けるため日本の財政破綻する前に有無を言わさず介入し、その下で財政再建がなされよう。
それはブログ68で既に述べたネバダレポートにあるように、賃金が大幅にカットされるだけでなく、退職金は100パーセントのカット、年金は一律30パーセントのカット、預金は一律ペイオフされた後預金額の40パーセントほどがカットされることになる。
さらに恐ろしいのはハイパーインフレが同時進行するため、現在ギリシャで起きているような地獄が全国到る所で見られよう。
しかも社会が地獄化すれば、国は安全を守るためといって国家安全省(シュタージ)設けることから、底辺生活の監視社会となる。
こうした悲惨な監視社会を避けるためには、緊急に借金をしない戦後の健全財政を復活する以外に方法はない。
そのためには国の一般会計と特別会計の実質的総額予算210兆円を2013年までに一本化し(単式簿記複式簿記に改め)、無借金の160兆円の予算で遣り繰りするしかない。
既に日本の多くの一般家庭ではこの数年で2割強の節約を強いられており、国が見習えない筈はない。国が2割強の節約をするためには現在の縦割りの省益優先の制度では不可能であることから、各省庁を合体させて非常体制で健全財政を実現するしかない。
(将来的には明治から継続されている官僚制度をドイツのように民主的に刷新し、官僚支配政府を国民に奉仕する公僕機関にすることが必要である)
そうすれば公共工事費の総額が社会保障費の2倍近いという途上国財政もできなくなり(欧米先進国では社会保障費が公共工事費の数倍多いことは常識)、省庁間の枠がないことから国民にとって優先度の高いものから予算が付けられ、子育てや福祉予算も充実し、被災地東北への風力発電といった未来への投資も十分できる筈だ。
もちろんそのためには、これまで聖域である防衛費も欧米並みに3割程度の削減は必要であるし、国会議員歳費と定数の大幅削減や公務員給料の削減だけでなく、官僚や公務員、そして教師の65歳以上の天下りを日当制のボランティア職とすることも必要である。

・・・現在の日本の官僚支配政府は、300万人の尊い命を奪った太平洋戦争の大本営そのままであり、NHKがそのような大本営をテープなどを検証して制作し、リーダ不在の先送り、利権まみれの中での省益最優先、危機管理意識の欠如を、世に問い正した『日本人はなぜ戦争へと向かったのか』を是非見て欲しい。
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