(29)検証シリーズ4、ドイツリサイクルのシンボルDSD社の金融投機買収が日本に投げかけるもの・・・日本危機の克服(後編)

現在の新自由主義支配の猛威を食い止めるためには、第一にドイツやフランスが昨年のカナダのG20で求めた金融投機税の導入によって、短期の金融投機(現在の1日400兆円もの金融取引の大部分)に対して、タックスヘーブンなどの例外なく全ての金融商品に0,1%の課税することが第一歩である。
現在のままでは、日本は超円高という兵糧攻めによって日々衰退し、数年以内に大きく貿易収支が落ち込んだ頃を見計らって、今度は恐ろしい超円安が襲ってくるだろう。
すなわち世界の悪魔のルーレットのトレーダーたちは、日本国債の大量空売りと信用リスクの大量購入で攻撃してくることは明らかだ。
このような攻撃には現在のEUもお手上げであり、EUの弱国ギリシャアイルランドポルトガル、スペインなどで、繰り返される金融危機に防ぐ手立てがない。
そうなれば日本は経済的に破綻するが、その前にアメリカ支配の国際通貨基金IMFが入ってきて、あらゆる規制撤廃と恐ろしい縮減財政を求めよう。
もちろん年金や福祉予算なども、ギリシャのように恐ろしく削減されることは明らかだ。
さらに超円安によって、その時まであらゆる創意工夫で生き延びてきた企業もほとんど買収され、想定できないほどの暮らしの困窮に直面しよう。
こうした悲劇を招かないためにも、EUと協力して金融取引税の導入に立ち上がらなくてはならない。
昨年のG20では、日本がこの金融取引税導入に激しく反対したことが、ドイツでは報道されていた。
ドイツでは既にすべての政党が、この金融取引税の導入に賛成しているからだ。
日本ではメディア支配のためか、ほとんど取り上げられず、議論もされていない。
この亡国の危機に、専門家の検証を通して議論を盛り上げていくのがメディアの責任だ。
日本が金融取引税導入に立ち上がれば、これまでアメリカに追従して反対してきた英国やカナダも立場は同じであり、アメリカだけが反対することはできないことから、最終的に導入に成功する確率は高い。
金融投機税が導入されれば、現在の無限に拡大する投機マネーが規制されるだけでなく、企業利益も現在のようにグロバルに投機されることが抑制されるため、国内への投資が増加しよう。
すなわち1971年のブレトン・ウッド体制の終焉以前のように、毎年の1万円を超えるベースアップや老人医療の無料化も夢ではない。
それは現在の悪循環の連鎖とは反対に好循環を招き、増税や福祉年金予算の削減を解消し、日本の脱原発だけでなく、人類を滅ぼす世界の原発ルネッサンスに幕を引こう。
またDSD社のような公共性が求められる企業は、株主の利益を最優先するのではなく、市民の利益を最優先するように、市民にガラス張りのNPO法人、もしくは地方政府(県)の運営といった動きが、自ずと開始されよう。

しかしこうした流れが加速されても、新自由主義の克服は難しい。
何故なら新自由主義の本体は恐ろしいほど莫大な金を所有しており、あらゆる手段で巧妙に攻撃してくるからだ。
したがって本質的な克服には、そうした繰り返される攻撃に耐えるなかで、現在の中央支配型の社会から地方分散型の社会に転換していくことが必要である。

日本の1000兆円にも上る負債を生み出した悪しき政治を振り返ると、中央支配によって地域の農業や林業を犠牲にして、バランスの欠いた産業発展を築いてきた。
しかしコメ政策で行き詰ると、戦後20年近くの無借金健全財政を転換して国債を濫発し、日本全土を高速道路開発を通して土建国家とし、輸出工業製品の生産拠点とする地域開発を推し進めた。
さらに国際競争が激化すると、輸出企業の海外移転が加速し、地域開発は破綻し、日本の地域は益々衰退を加速している。
それ故現在の1000兆円にも上る負債は、衰退し続ける地域を支えるために為されてきたと言っても過言ではない。
したがって地域衰退を解消することなしには、増税では解決にならない。
それはこれまでに国の負債を健全化するといって、消費税を導入したにもかかわらず、逆に恐ろしい勢いで負債が増加した経緯からも明らかだ。
本質的に地域の衰退を解消するためには、国の総務省に支配されない地方分権政府を確立すると同時に、地域産業を息衝かせなくてはならない。
そのためには地産地消が必要であり、結論的にいえば地産地消税の創設を提言したい。
地産地消税は、各地域(各都道府県)の生活と環境を守る地域関税であり、地域外から運ばれてくるすべての商品に課税する税である。
したがって消費税のように消費者への負担は殆んどない。
何故なら地域内(県内)生産者(新たな参入を含めて)の課税免除はインセンティブを与え、地域外(海外を含めた県外)の生産者との間にポジィティブな競争が生じることから、日本のように物価が恐ろしく高い国では、むしろ世界の物価に収束して健全に下がることが予想される。
しかもそれは地域を再生すると同時に、中央に依存しない自立した豊かな地域を実現することに繋がる。
そのような威力を発揮するためには10パーセント程の課税が必要であり、1パーセントから始めて累進的に増加させることで、10年後10パーセントになるといった移行期間が必要である。
課税で得られた税収の半分ほどが地域内の生産者の支援に利用されれば、地域が豊かになるだけでなく、これまでほとんど他の地域に依存していた農産物や製品に対しても競争力を高めることが可能である。
現在のように新自由主義の世界支配を通して世界の流れが自由貿易協定(TPP)を強力に推し進める中では、たとえ日本の農業が壊滅的な被害を受けるとしても、このままではいずれ自由貿易協定が強行されることは明らかである。
したがって国の関税を撤廃する替わりに、地域の地産地消税を日本が主導的に求めていけば、EU諸国だけでなくアメリカでも地域衰退の危機は深刻であることから、必ず道が開かれよう。

実際の導入では、多くの穀物が外からの流入される地域であれば、税収を新たに穀物生産に参入する生産者の育成や、外の地域又は外国の生産者を地域内に呼び込む移住支援に使えば、地域内での地産地消を高めることが可能である。
また電化製品などの生産されていない地域では、課税免除と十分な支援金によって、意欲ある生産企業を招致することも可能となる。
さらに法整備で地域内での徹底したリサイクルを義務付ければ、大きなインセンティブとなるであろう。
もっともすべての農作物や製品を地産地消することは、適材適所の生産原則からして不可能である。
たとえ課税免除と十分な支援があったとしても、農作物であれば気候や耕作地の適正に大きく左右されるため、導入後地域内での生産がある水準まで増加した後は、自ずと適正なバランスに達するであろう。
しかし生産原則の観点から大きなハンディーのある地域においても、食料や生活必需品に関しては少なくとも半分くらいの地産地消を目標とすべきであり、そのために地方政府や国はあらゆる方法で支援しなくてはならない。
そうすれば、全ての地域で半分ほどの地産地消を実現することは十分可能である。
これは単に外の地域に大半を依存してきた地域に大きな利益を与えるだけでなく、集約的に商品作物や製品を生産してきた地域にとっても適正なバランスが築かれることから、長期的には大きな利益が得られよう。
すなわち地産地消税の導入はそれぞれの地域を豊かにするだけでなく、現在の侵略的な自由貿易を適正化し、世界の発展を健全化するものである。
さらに地産地消は環境マイレッジを小さくすることから、地球温暖化生物多様性の危機を解消するものだ。
しかもそれぞれの地域で地産地消が実現していくことは、中央支配型の化石燃料に重化学産業社会から地域分散型の太陽光燃料によるエコロジー産業社会への転換をはかるものである。
それは、日本の衰退する地域を活力ある地域に再生することであり、同時に新自由主義支配を克服するものだ。