(343)時代の終わりに(27)・ソ連崩壊以来の最大の危機(4)危機こそチャンスの理・官僚支配が辿るいつか来た道(4)“悪い奴ほどよく眠る”の顛末

“危機こそ好機の理”
ミュンヘン安全保障会議代表のイシンガーから極右政党と指摘されるAfD(ドイツのための選択肢)のパーデスキー副代表まで、“危機こそ好機の理”では意見が一致している。
すなはち今回の『』では、パーデスキー副代表でさえ「私はイシンガーさんに全く賛成です。トランプへの全体行動はヨーロッパにとって大きなチャンスです、自立させるための大きなチャンスです」と明言している。
メルケル後継者の一人といわれるレトゲンは、トランプの持ち出した懲罰的関税に対して、アメリカへの友好能力を発展させると同時に、紛争能力を発展させて行くことを説いている。
まさに今、トランプの仕掛けた輸入品への懲罰的関税は、中国との貿易戦争の引金が引かれ、世界の危機へと発展しようとしている。
しかし「危機こそ好機の理」に従えば、これまで欲望の為すがままに任せて破局に向かう世界を、万人の幸せを求る理性ある世界に変えることも可能である。
確かにトランプにとって、莫大なアメリカ貿易収支赤字を減らすことが最大の課題であり、日本のようにまだ黒字国である国でも、農産物から生活必需品まで広範囲に輸入を減らすことが求められている。
何故ならアメリカや日本だけでなく、世界の地域はグローバル化のボトム競争によって破綻寸前であるからだ。
破綻寸前の地域を再生させるためには、地産地消を増やして行く必要があり、そのためには従来のような競争に耐えうる関税で守るのではなく、例えば喫緊の人類の課題である地球温暖化に大きく関与するフードマイレージ(食糧の輸送距離)を問題視していけば、世界の地域が少なくとも半分以上地産地消ができるように、輸入品の輸送距離に課税できる理性あるルールを設けることも自ずと可能である。
それは現代が危機であるこそ、希望ある未来世界を創る好機とも言えよう。

“悪い奴ほどよく眠る”の顛末
映画の結末では、悪い奴は身の振り方として一時外遊という言葉でよく眠るかのように描かれている。
今日3月27日、国民の誰もが少なくとも関心を抱く森友学園問題での財務省佐川前長官の国会証人喚問が開かれており、国民は真相が明らかになることを佐川氏の人間性を通して期待しているが、これまでのロッキード疑獄エイズ犯罪に見るようにその真相が明らかにされることはないだろう。
何故なら官僚個人の問題ではなく、その背後に巨大な組織の問題が潜むからである。
もっとも真相が明らかにならないとしても、既に賽は振られており安倍政権崩壊に急速に向かい、国民の鬱憤を晴らすために、例えば現在総務大臣野田聖子の日本初の女性首相誕生シナリオが動き出しているのだろう。
黒沢明が“悪い奴ほどよく眠る”を制作した1960年には既に戦前の官僚組織肥大は、公団さらにはファミリー企業へ膨らんで行き、1965年には田中角栄を通して赤字国債発行を解禁し、再び日本が負債を膨らます、いつか来た道を辿り始めたのであった。
今回の証人喚問では政治家の忖度が問われているが、本当に問わなくてはならないのはこのような問題を引き起こすシステムの問題である。
確かに今回の問題では状況から推測して安倍首相への忖度は否めず、官僚のトップである長官たちも2014年に誕生させた内閣人事局を通して政治家の指令には逆らえないであろう。
もっともそれまでも一部の官僚たち(事務次官会議)が日本の政治を支配していたわけではなく、族議員支配に見るように官僚たちは政治家の指令に逆らえないのである。
それだからといって閣僚の政治家たちが政治を支配できるかと言えば、全く見当違いであり、各省庁の連絡会議が決めたことには逆らえないのである。
何故なら連絡会議(前の事務次官会議)は儀式に過ぎないとしても、そこで決めたことは省庁間が膨大な労力で積み上げて来た調整による合意であるからだ。
その合意は単に政府組織だけでなく、公団(公益法人)やファミリー企業まで果てしなく関与して行き、間接的には日本人の誰もが関与していると言っても過言ではない。
このような問題を本質的に変えていくためには、ドイツのように司法を法務省から完全に独立させ、行政訴訟では全ての書類が裁判所へ提出される仕組に変え、記録の改ざんなど絶対にできないようにして行かなくてはならない。
現在の日本のような国益優先の官僚支配システムを、国民優先の官僚奉仕に180度転換させたドイツでは、悪い奴ほど決してよく眠れないのである。