(344)時代の終わりに(28)・ソ連崩壊以来の最大の危機(5)トランプアメリカの正体・官僚支配が辿るいつか来た道(5)NHKの執念と“悪い奴”の正体

タブー破壊から見えて来たトランプアメリカの正体

核攻撃威嚇、懲罰的関税、エルサレムへの首都移転擁護、気候変動パリ協定からの離脱、ユネスコからの脱退というタブー破壊から見えて来たものは、今回の冒頭でアメリカ政治評論家のピーター・ラオが述べているように、トランプ権力政治の象徴であり、アメリカ強化によって同盟国とアメリカ支配の世界を築いて行くことであり、トランプアメリカの正体と言えよう。
しかしながらその原因は、そのようなタブー破壊を露骨に実行する大統領を誕生させた時代背景にあり、それこそが暴走を加速する現在の資本主義の終焉を告げるものである。
今回も議論の締め括り役として登場したメルケル後継者の一人と称されるノルベルト・レットゲンCDU連邦議員は、アメリカ依存からの脱却と国際的責任を強調している。
しかしそれはメルケル同様、現在の新自由主義に支配されて行く世界、さらには終焉の時代を本質的に変えるものではなく、戦後国内政治では理想を追求して来たドイツの国際的限界さえ感じられる。

“二度と戦争を起こしてはならない”と誓ったNHKの執念と“悪い奴”の正体

公共放送NHKは安倍政権の役員人事によって、この数年社会問題や政治問題を考える番組が激減し、時の内閣を擁護する国家放送への転身さえ危惧されるなかで、4月4日放送の『森友文章“改ざん”問題』には『何故日本人は戦争に向かったのか』シリーズで誓って来た執念が感じられた。
すなわち佐川前国税庁長官の国会答弁904回を徹底分析し、政治的関与を鮮明にした。
そこには二度と同じ過ちをしてはならないと、戦後長年に渡って引継がれて来た民主主義国家を希求する執念が息衝いていた。
また改ざんの舞台となった近畿財務局を徹底取材し、自殺した改ざんを余儀なくされた官僚の同僚友人の証言を通して、ひずみを生じゆがんできていると明かされる組織の論理で、現場官僚が信念に反することをさせられる実態を炙りだしている。
今回の森友問題では、財務省内閣府の政治家の言うがままに改ざんしたように推測されるが、その政治家も日本産業がグローバル競争で行き詰まるなかで戦前の重商主義が求められ、以前から憲法改正で普通の軍隊を持てる国を希求して来たからこそ奇跡の復活がなされたと言えよう。
そうした経緯からすれば、安倍政権を誕生させたのは、、福島原発事故で問われた政官財の原発ムラ社会と根源を同じくするものであり、それこそが“悪い奴”の正体である。
そして番組の最後では再発を防止する政府の取組が紹介され、これまで一部で安倍内閣のスポークスマンと化したと批判されてきたNHK政治部記者吉川衛が、「いくらルールを厳しくしても守らなければ何の意味もない」と述べているのが印象的であった。
既に事態は4月4日の放送から大きく動き出し、森友用地値引き教唆証拠書類やかけ学園の「首相案件」証拠書類など、田中角栄鈴木宗男の時のように次から次へと出てきて、最早安倍政権退陣へと動きだしている。
しかし安倍政権が退陣し、厳しい新しい規則が運用されても、官僚の無謬神話に基づく無責任な官僚制度が戦後のドイツのように官僚支配のルールから国民奉仕のルールへ転換されなければ、益々巧妙化し繰返されることは目に見えている。