(342)時代の終わりに(26)・ソ連崩壊以来の最大の危機(3)今何が起きようとしているのか?・官僚支配が辿るいつか来た道(3)悪い奴ほどよく眠る機構

今何が起きようとしているのか?
今回のZDF公開討論『見くびられるエゴイスト・トランプは成功するのか?6−3』では、CDUのメルケル後継者の有能な一人でもあるノルベルト・レットゲンが、トランプ政権が決着した税制改革を鋭く批判するところから始まる。
彼はアメリカの景気を蘇らせ、世界の景気を燃え上がらせるとしても一時的であり、いずれ失墜すると明言している。
その理由として、トランプの為そうとしている税制改革は大企業優遇の税制オアシス競争に拍車をかけるものであり、恩恵の見込めない中小企業を分断し、国家を安全性に不可欠なインフラ整備すらできない程貧しくさせるからだと述べている。
また外国からの供給を差別するものであり、公正で自由な国際貿易の精神に反するからだと結んでいる。
議論はそれを踏まえて進行していくが、私に強烈に鳴り響いたのは、ミュンヘン安全保障会議代表のヴォルフガング・イシンガーの次のような訴えであった。
トランプが招こうとしている世界の危機はトランプに責任があるのではなく、ヨーロッパを含めて世界が為してきた過ちにあり、それがトランプを通して今何が起きようとしているのか、という危機の訴えであった。

悪い奴ほどよく眠る機構
黒沢明が1960年に世に出した『悪い奴ほどよく眠る』は、まさに現在の森友学園の問題の闇の深さを物語っている。
週間朝日取材班の記事を見ると、直接交渉にあたっていた近畿財務局職員の自殺は、まさに『悪い奴ほどよく眠る』が追求した官僚支配が造り出した凡庸な悪の機構を浮かび上がらせている。
下に載せた映画では(注1)、宮口精二演ずる検事が汚職に関与した(藤原釜足演ずる)真面目で気の弱い公団課長補佐の黙秘に、「和田さん、いったい誰のために20日間も黙秘権を使っておられるのです。あなたは公団のお方です。官吏と同じく国民の利益を守らなくてはなりません・・・・」と諭さとしている。
本来官吏は国民の利益を守るために国民奉仕に徹すべきであるが、戦後の反省も政官財の汚職が頻発する1960年には、既に官僚支配を蘇らせ、凡庸な悪の機構を復活させていた。
そして1965年にはその機構を肥大させて行くために、臨時法案で禁じられていた国家負債を解禁し、現在のように“どうにも止まらい”まで病ませているのだ。

それは凡庸な悪の機構を築いて来た世界でも同じであり、上で述べたようにミュンヘン安全保障会議代表のヴォルフガング・イシンガーは世界の危機を訴えている。
しかしアイヒマンに象徴される悪の凡庸でホロコーストを犯したドイツは、戦後官僚支配から官僚奉仕へと180度転換させており、それ故にメルケル後継者の一人でもあるノルベルト・レットゲンの発言にもそれが伺える。
すなわち世界が求るトランプの税制改革は、失墜すると明言している。

注1
https://www.youtube.com/watch?v=pBg0JTQg7fM&t=4072s