(138)タイタニック日本とならないことを願って(3)安全な最終処分場はない(学術会議提言を無視するメディア)

ドイツの放射性廃棄物最終処分場ゴアレーベンの白紙撤回が、今月4月9日に公式に報道された。
下に私が字幕を付したZDFフィルムの一部を載せておくが、長い長い戦いを経て振り出しに戻ったといえよう。

4月9日のシュピーゲル誌オンラインは、「連邦と州は最終処分場のために提携を考え出す」という見出しで、ゴアレーベンの白紙撤回を長い戦いの歴史的和解と述べ、24人専門家委員会を設置で2015年までに選定基準を策定し、2031年までに候補地を決定すると報じた。
さらに合意されたことは、これまでゴアレーベンに輸送されていたフランスでガラス固化された高レベル放射性廃棄物は、今後既存の原子力発電所内に貯蔵される。また新しい候補地の探索費用は原発産業に出させることである(注1)。
こうした和解を社会民主党(SPD)や緑の党は当事者であることから「歴史的成果」として評価しているが、ゴアレーベンの闘争で行動及び科学的検証で中心的役割を果たしてきたドイツの自然保護団体グリンピースは、白紙撤回の和解にゴアレーベン放棄が明言されていないことから批判的である。
この背景には、現在の世界の高レベル放射線廃棄物を地下で100万年も貯蔵するという最終処分場のやり方自体が問題であり、可能性がないものであるという確信があるからである。
グリンピース月刊誌の2011年3月号では、「永遠へのメッセージ」というタイトルで、1991年3月18日に“ソ連の英雄”として宇宙ステーションへ飛び発った宇宙飛行士セルゲイが、10か月後に帰還した時は“ロシアの市民”であったという事実を踏まえて、高レベル放射線廃棄物を100万年も長く地下に貯蔵することは、既に安全面で実現不可能なことであると、断言していた(注2)。
またグリンピース支持者の多くが購読する週刊誌『金曜日der Freitag』の3月27日の「合意の追及」という記事では、ゴアレーベンが候補リストから消えたわけではないことを批判すると同時に、地下処分という最終処分場自体が実現不可能と断言していた(注3)。
その理由として一つには、最終処分場では100万年という想像できない長い年月危険な放射線が放出され、政治的責任ある決定の枠組みを超えているからである。またもう一つには、いかなる地質学者や火山学者も、1000年を超えて最終処分場が安全であると保証できないからであると指摘していた。

実際私自身も現在の地下での最終処分というやり方を、ブログ25「オンカロフィルムはプロパガンダか?」で検証しているように、長い年月安全を保証できるものではまったくなく、現在の原発推進政策に対する“トイレなきマンション”という批判から出てきたものであり、原発継続の手段といっても過言ではない。
確かにドイツの岩塩層の3つの放射線廃棄物貯蔵施設は何億年も変化のない安定した地層であったことは事実であり、政治的決定であったゴアレーベンさえ2億4000万年間変化のない安定した岩塩層であった。
しかしボウリング掘削により地下水を招き入れ、貯蔵ドラム缶の腐食で放射線廃棄物が漏れ出し、地下水を汚染していることは紛れもない事実である。
最終処分場での高レベル放射線廃棄物はガラス固化体にされ、「オーバーバック」という銅鉄製容器に収納され、その周りをベントナイトという粘土が充填されることから万一地下水が侵入しても安全であると、オンカロフィルムは説明している。
しかしストックホルム王立工科大学の世界に発表された研究データーは、地下水と接触する銅鉄製容器の腐食がSKB社の安全性分析より1000倍から10000倍速く進行することを実証しており(注4)、さらに銅鉄製容器は高温であることから、数百年どころか、ドイツの3つの岩塩層貯蔵施設のように数十年で地下水の放射線汚染を引き起こす可能性は大きい。
そうした視点からオンカロ最終処分場を見れば、地下水は海底に通じていることから、長い年月での間接的な海洋投棄と言っても過言ではない(1975年の海洋投棄禁止条約が発効するまでは、高レベル放射性廃棄物は海洋に直接投棄されていた)。
こうした最終処分場の危険性については専門家であれば十分認識できる筈であるが、日本学術会議は最終処分場政策が国策であることから、これまで意見書を出して来なかった。
しかし福島原発事故はそうした科学者の無責任な姿勢を一変させ、2012年9月に日本学術会議が出した提言では(注5)、これまでの最終処分場を原子力発電環境整備機構(NUMO)に丸投げするやり方だけでなく、多額の交付金をあらかじめ示し誘致するといった電源三法制度の廃止を含めた抜本的見直し、すなわち白紙に戻す覚悟での根本的変更を求めている。
そして提言の二つの柱は、数十年から数百年にわたるモラトリアム期間の設定と放射性廃棄物の総量規制である。
モラトリアム期間の設定は、高レベル放射性廃棄物を地中深くに埋めて永久に廃棄するといった国策が、科学者の視点からすれば限りなく危険で、無責任であるからに他ならない。
総量規制は、現在の溜まり続ける放射性廃棄物への反省からモラトリアム期間中の総量規制が不可欠であり、それによって原発の稼働及び新設に制限を設けることが、“絶対安全であると断言してきた”日本の原発政策を黙認してきた科学者の良心であるからだ。
こうした科学者の良心と責任をかけた、勇気あるこれまでの国策に猛省を求める提言は、本来であればメディアが率先して取り上げ、活発な国民議論によって日本の選択すべき適正な道を導くべきである。
しかしメディアは、こうしたこれまでの国策に猛省を求める提言を無視続けていると言っても過言ではない。
そうした姿勢にこそ、タイタニック日本の懸念される理由がある。

(注1)4月9日シュピーゲル誌オンライン「連邦と州は最終処分場のために提携を考え出す」(下記に全訳)
http://www.spiegel.de/politik/deutschland/bund-und-laender-einigen-sich-auf-neue-suche-nach-endlager-fuer-atommuell-a-893428.html
 
(注2)「永遠のメッセージ」
http://www.greenpeace-magazin.de/index.php?id=6410

(注3)3月27日週刊誌『金曜日der Freitag
http://www.freitag.de/autoren/h-yuren/suche-im-konsens

(注4))ZEIT ONLINE 03.05.2011
http://www.zeit.de/wissen/umwelt/2011-05/atommuell-endlager-skandinavien

ストックホルム王立工科大学のマテリアル研究者ペーター・ザケロス(Peter・Szakálos)ら国際研究グループは、学術雑誌「Catalysis・Letter」でスエーデンの最終処分場で使用される銅キャスターの腐食は、SKB社の安全性分析より1000倍から10000倍早く進行することを実験室で実証し、腐食は放射線による高温のため初期段階で促進され、放射能が地下水を汚染することを警告している。

(注5)学術会議PDF
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf

09. April 2013
Atommüll
Bund und Länder schmieden Koalition für Endlagersuche
連邦と州は最終処分場のために提携を考え出す
Es ist eine historische Einigung im Dauerstreit um den deutschen Atommüll: Bundesregierung und Länder haben sich auf einen Neustart bei der Suche nach einem Endlager verständigt. Bis 2031 soll ein passender Ort gefunden sein - die Kosten müssen die Atomkonzerne tragen.
ドイツ放射性廃棄物での持続的戦いの歴史的和解である。連邦と州は最終処分の探索において新しい開始で合意した。2031年までに、適切な場所を見つけなくてはならないだろう。原発企業が費用を負担しなければならない。
Berlin - Es geht um die Lösung eines Jahrhundertproblems: Wohin mit dem deutschen Atommüll? Seit Jahren ringen Bund und Länder um einen gemeinsamen Kurs für die Suche nach einem Endlager für die strahlenden Rückstände - nun ist ein Kompromiss gefunden.
長期的問題の解決に関心が集まっている。ドイツの原発廃棄物は何処へ行くか?数年来連邦と州は放射性廃棄物のための最終処分場探索で共通の進路を取ろうとしており、今日一つの折衷案が見つかった。
Nach mehr als 30 Jahren Konzentration auf den Salzstock Gorleben haben sich Bund und Länder auf eine neue, bundesweite Suche nach einem Atommüllendlager geeinigt. Das sagte Bundesumweltminister Peter Altmaier (CDU) am Dienstagabend in Berlin. Er sprach von einem "wichtigen Erfolg", der die Chance biete, das Thema parteiübergreifend zu lösen. Offene Fragen "gerade mit Blick auf die Kosten" werde man nun rasch ansprechen, so Altmaier weiter.
連邦と州は岩塩層ゴアレーベンへの30年以上の集中の後で、放射性廃棄物最終処分場の新たなドイツ全土の探索で合意したと、連邦環境大臣ペター・アルトマイヤーは火曜日にベルリンで述べた。彼は党の包括的テーマを解決するチャンスを提供する重要な成果について述べた。さらにアルトマイヤーは、まさに費用の視点での開かれた問いが強く求められるだろうと述べている。
An den Gesprächen in der niedersächsischen Landesvertretung hatten außer Altmaier auch die Ministerpräsidenten der Länder und Landesminister sowie führende Vertreter von Parteien und Bundestagsfraktionen teilgenommen.
ニーダザクセン州の州代表者の会議で、アルトマイヤー以外に州首相と州大臣並びに党と連邦議員団の指導的代表者が参加した。
Nun soll ein entsprechendes Gesetz bis zum 5. Juli von Bundestag und Bundesrat beschlossen werden. Damit könnten dann in den nächsten 15 Jahren bundesweit mehrere Alternativen zum Standort Gorleben geprüft werden. Spätestens bis zum Jahr 2031 soll das deutsche Endlager für hochradioaktive Abfälle gefunden sein. Altmaier rechnet mit Kosten von rund zwei Milliarden Euro, die die Atomkonzerne tragen sollen. Sie haben bereits 1,6 Milliarden Euro in die Erkundung Gorlebens investiert, für dessen Untauglichkeit sie keine klaren Belege sehen. Gorleben bleibt vorerst als Option für ein Endlager im Spiel - trotz der massiven Proteste in der Region.
7月5日までに連邦議会と州議会の適正な法案が決定され、それによって以後の15年でゴアレーベンに替わる幾つかの代替地ドイツ全土で試掘される。遅くとも2031年までには、高放射能廃棄物のドイツの最終処分場は見つけられるだろう。アルトマイヤーは原発企業が支払う費用をおよそ20億ユーロと概算している。原発企業はまったく証拠も見つけれない不適格なもののために、ゴアレーベンの調査で既に16億ユーロを投資している。とりあえずゴアレーベンは、地域の激しい抗議にもかかわらず最終処分場の候補のままである。
Grundlage für die Einigung in Berlin war ein Kompromissvorschlag, auf den sich Altmaier vor gut zwei Wochen mit der rot-grünen Landesregierung Niedersachsens verständigt hatte. Ein Kernstück war die Einrichtung einer 24-köpfigen Expertenkommission, die bis Ende 2015 Kriterien für ein mögliches Endlager für hochradioaktiven Atommüll vorschlagen soll.
ベルリンの合意の基本は妥協提言で、アルトマイヤーは赤と緑の州連立政府と二週間前に合意に達した。核心部は、2015年末までに高レベル放射能廃棄物の可能な最終処分場の基準を提言する24人専門家委員会の設置であった。
Bis dahin soll es keine Atommüll-Transporte mehr in das Atomlager in Gorleben geben. Die noch ausstehenden Castor-Behälter mit Atommüll werden laut dem Plan an anderen Standorten nahe bestehender Atommeilern zwischengelagert.
それまで、いかなる放射性廃棄物もゴアレーベンの核貯蔵庫にもはや輸送されない。まだ来ていない放射性廃棄物カスター容器は計画によれば、存在する原発近くの場所に中間的に貯蔵される予定である。
Kommission berät - Bund und Länder entscheiden
委員会が助言し、連邦と州が決定する。
Niedersachsen ist besonders von der Atommüllproblematik betroffen. Schließlich soll in dem Bundesland das künftige Endlager für schwach- und mittelradioaktive Abfälle, Schacht Konrad in Salzgitter, entstehen. Die Regierung hat zudem Erfahrungen mit dem maroden Atommülllager Asse sowie mit dem Streit über Gorleben.
ニーダザクセン州は特に放射線廃棄物問題に関与している。最終的にはドイツ内に高レベル及び中レベル放射性廃棄物の将来的最終処分場を岩塩格子の縦穴鉱に建設する。政府は零落したアッセ放射性廃棄施設、並びにゴアレーベンでの戦いでそれに対する体験をしている。
Über die zu prüfenden Standorte und die Endauswahl sollen jeweils Bundestag und Bundesrat entscheiden - die vorgeschaltete Kommission kann nur Empfehlungen aussprechen, an die Bundestag und Bundesrat aber letztlich nicht gebunden sein sollen. Als Vorsitzender der Kommission wurde unter anderem der frühere Umweltminister Klaus Töpfer (CDU) ins Spiel gebracht.
検査された場所や最終選択に対して連邦会議と州会議はその都度決定すべきであり、24人専門委員会は提言だけを述べ、連邦会議や州議会の決定に最終的に関与しない。委員会の代表者として、前の環境大臣クラウス・テプファー(CDU)が役割を担う。
"Das ist eine historische Entscheidung", hatte SPD-Chef Sigmar Gabriel, der das Spitzentreffen aus Termingründen vorzeitig verlassen musste, im Vorfeld gesagt. Er bekräftigte auch, dass die Kosten für die Endlagersuche die AKW-Betreiber zahlen müssten.
「これは歴史的決定である」と、スケジュール理由から予定より早く代表者会議を早退しなくてはならなかった社会民主党代表シグマー・ガブリエルは、会議前に述べていた。彼は、最終処分場のための費用は原発企業が支払わなくてはならないことを、同様に強調した。