(289)万人の幸せを求める社会 第六回 「パナマ文章」を世界を変える力に(2)数十兆円を脱税すれば神になる

4月6日のZDFの子供ニュース「 logo!」でも、上のフィルムのように世界の税金逃れのやり方をわかりやすく解説しています。
画期的なのは、従来のタックスヘイブン租税回避地)での税金逃れの容疑を示唆するのではなく、世界のジャーナリストたちが(76ヵ国からの400人)共同で膨大なデータから税金逃れのやり方を検証し、税金逃れの全てを突き止めたことにあります。
そしてこの子供ニュースでは、タックスヘイブンでの匿名の実体のない企業であるペーパーカンパニー設立で、税逃れの本来禁止されべき金融投資をわかりやすく説明しています。

こうしたひと握りの裕福者や政治家の巨大なマネーがタックスヘイブンで運用投資され、殆ど税金を支払わなくても違法にならず、金融関与者が胸を張って合理的な税の節税と豪語する世界は、誰の目にも狂っているとしか見えません。
まさに映画『独裁者』での、「人を一人殺せば殺人、人類の半分を殺せば英雄、全て殺せば神になる」というセリフが思い起こされます。
すなわち数十万円の脱税をすれば犯罪者、数十億円の脱税をすれば節税の英雄、数十兆円の脱税をすれば神(世界支配者)になる」という声が聞こえて来ます。

今回の「パナマ書類」では日本企業や日本人裕福者の関与が少ないこともあり(漏れ出た情報では400ほどの関与)、センセーショナルな報道はされていませんが、これから徐々に大問題になって来るでしょう。
何故なら、今回公表された「パナマ書類」は従来のケイマン諸島に見るようなタックスヘイブンでの脱税容疑ではなく、莫大なデータに数万にも上る顧客のオフショア金融ビジネスの全ての記録があり、既に詳細が12ヶ月かけて突き止められているからです。

日本の企業や裕福層が海外で投資している総額は、国際決済銀行BISの公表データでは、2015年末3兆1690億ドルにも上り、その3割近くがケイマン諸島などのタックスヘブン地域で運用されています(すなわち日本の投資は数百兆円、世界の投資は数千兆円・・・下のアドレス資料参照)。
http://www.boj.or.jp/statistics/bis/ibs/data/qibs.pdf

それゆえ「パナマ文章」の全記録が世界に公表されれば、それを仲介している金融機関や政治家などの関与者たちは最早利益追求の「合理的な節税」と言えないばかりか、怒りのバッシングを受けることになるでしょう。
何故なら世界の1パーセントの裕福者たちは(企業も含めて)、殆ど税金を支払うことなく益々資産を増やすことができ、99パーセントの国民は重い増税に苦しでいるからです。

近代経済学の父アダム・スミスは「国富論」のなかで、「市場経済において、各個人が自己の利益を追求すれば、結果として社会全体において適切な資源配分が達成される」と明言し、結果として「神の手」によって導かれるように、社会全体の利益がもたらされると述べていました。
しかし1970年以降のサッチャーレーガンに始まる新自由主義と呼ばれる市場原理主義の世界では、誤りであることは明白です。
何故なら世界のひと握りの1パーセントの人たちが自己の利益を追求すればするほど、ボトムへと墜落しつつある99パーセントの人たちが窮乏を余儀なくされるからです。
もっともアダム・スミスは、その時代を支配する「国の豊かさは(植民地から得られる)貴金属である」という重商主義を批判し、「国の豊かさは労働生産によって得られる消費財の蓄積である」と主張しており、消費増大(内需増大)こそ現代の危機社会を救うものです。
しかし富の再配分が機能しない世界に生きる99パーセントの人たちは、消費抑制で生き延びるしかありません。
すなわち富の再配分が機能しないタックスヘイブン法人税引下げ競争が激化する世界では、国家を破産へと導くだけでなく、ナチズムのような独裁国家を復活させて行きます。
それは、第三次世界核戦争での人類の終焉を意味しています。
それゆえ世界の市民は「パナマ文章」を力として、万人の幸せが求められる社会に変えて行かなくてはなりません。
それは難しいことではなく、強者の脱税のような不正行為が許されない社会、世界に変えて行くことに他なりません。
そうすればひと握りの人たちに集中していた富が、蘇る再配分機能で自ずと滴り落ちてくるでしょう(もっとも現在の化石燃料の産業社会が既に終焉に向けて加速しているにもかかわらず、力による不正支配で生き延びようとしていることから、益々悪循環に陥っていることも確かです)。