(302)世界の官僚奉仕を求めて第12回官僚奉仕の切札は太陽(7)小池知事東京大改革に見る限界(『私の見た動画シリーズ4』)

豊洲への移転が直前になって大問題となっているのは、実質的に党派に属さない小池都知事が誕生し、国政と異なって権限が知事に集中していることからストップをかけ、専門家会議で安全性から決議された盛り土案無視の完成した建物検証を指令したからに他なりません。
上の『私の見た動画4』前半の9月27日NHKクローズアップ現代豊洲問題の深層に迫る」では、都民暮らし無視のプロジェクト優先の意思決定と大手ゼネコンとの癒着関係を感ぜずにはいられませんでした。
すなわち3年前の都庁の作成公表した設計図では、専門家会議の安全性に配慮した盛り土案決議を削除しているにもかかわらず、都民への宣伝フィルムは4,5メートルにも及ぶ二重の盛り土で、安全性に配慮した建設をアッピールしていたからです。
また建設費用では、最初の入札が大手ゼネコン共同企業体の拒否で失敗すると、担当者は業者との根回しで予算を60%も増額し、入札価格も公正な入札では有り得ない99,7%という驚くべき落札価格で、競争なしの一社だけの共同企業体で決まっていたからです。
そして動画の後半では10月7日「直撃LIVEグッディ」の都議会での都庁幹部の追求を取り上げ、見かけは官僚用語で(「検討します」は検討するだけでなにもしないこと。「配慮します」は机に積んでおくこと。「努めます」は結果的に責任を取らないこと)都庁の幹部職員は慇懃なほど低姿勢で返答していますが、担当者の名前を議員が聞くと「担当者の資料はここにはありません」と、「みんなで渡れば怖くない」といった高慢な姿勢が感じられます。
さらに都議の情報公開申請で出された、地下空間を提案したと言われる業者(日建建設)との都庁担当者とのやり取り記録も、肝心な部分がすべて黒塗りされており、本来情報をガラス張りにするための情報公開法が、逆に情報を秘密にする手段に使われて実態が明らかにされます。
そのような都民より企業優先、隠蔽体質、無責任体質の都庁を前半のクローズアップ現代に緊急出演した小池知事は、安全性については専門家会議を再開で対応し、市場問題プロジェクトチーム、さらには都政改革本部を立ち上げ、都民のためのガラス張りの責任の所在が明確になる都庁に変えて行くことで、東京大改革の試金石とすると明言していました。
確かに小池知事は自らの給料半減で身を切ることから始め、責任の問える都政、都民のための都政、無駄使いのない都政を創ろうとする理想は素晴らしく、記者会見でもそれに向けて絶えず挑戦的であり、政治的手腕も秀でているように思われます。
しかし詳しく検証して行くと、その限界も浮び上がって来ます。
その理由はネットに公開されている「第1回市場問題プロジェクトチーム会議」(公開動画)「第2回都政改革本部会議」(公開動画)を見ると、委員選考だけでなく会議進行も事務局(都庁官僚たち)が綿密な筋書きで演出しているように思えるからです。
小池知事が胸を張って述べるプロジェクトチームは、青山大学教授の座長小島敏郎環境大臣の頃の側近)は知事と理想を同じくしているとしても、ある専門委員は盛り土なし建設の技術官僚の合理性を讃え、どのように小島座長と小池知事任命の委員が奮闘しても、事務局の描く筋書きで進み、表向きだけは改革されるとしても、官僚主導の自己検証に任せたままでは、国政で見るように従来のように益々巧妙に焼け太りさせて行く結末が見えて来るからです。
そうした官僚制の欠陥をナチズムを通して熟知したドイツは、司法を行政から独立させることで官僚奉仕国家に変えるだけでなく、審議会や専門家会議などの委員は官僚が選考するのではなく、民意で選考されるようにしました。
すなわち連邦であれ州、さらには地方自治体であれ、選挙の獲得票数で委員が選出される仕組みが作られています。
例えば州の10人の委員会であれば、州選挙でキリスト教民主同盟40%、社会民主党30%、緑の党16%、リンケ14%であれば委員は各党推薦の専門家が選ばれ、キリスト教民主同盟推薦の委員4名、社会民主党3名、緑の党2名、リンケ1名となり、自ずとガラス張りに開かれるだけでなく、そこには各党推薦の委員に市民利益を最優先するインセンティブが働いていると言えるでしょう。
そうした民意が反映できるガラス張りの委員会誕生によってのみ都民のための大改革が可能であり、自ずと都庁の公然となされている天下りも解消されるでしょう。
確かに現在の東京都の課長以上の天下りはネットに公表されており、平成26年の場合161人の退職者は91名が東京都の関与する外郭団体(管理団体、報告団体等、公益団体)に再就職し、大林組などの民間企業へ15名が再就職していることがわかり、一見透明性が確保されているように思われます。
しかし一般的に知られている待遇は破格のものであり、天下りのないドイツでは公務員退職者が務める場合ボランティア待遇(日当だけ)が当然であるように、東京都から率先して変えていかなくては天下り、さらには政官財の癒着も無くならないでしょう。
もっとも理想を大きく掲げる政治的手腕に秀でた小池知事が、まずは官僚の自己検証に任せ、限界に達した段階でドイツのようなやり方を採るならば限界を克服することも可能でしょう。
それを可能にするのは都民の声であり、民意に他なりません。

昨日の私の暮らす新潟県知事選挙で、実質的に原発再稼動に反対の米山新知事が誕生したことは、県民の7割以上が再稼働に反対という民意沿って野党が共闘したからであり(民進党も企業よりの連合の圧力のなかで代表まで応援に駆けつけたことは共闘と言えるでしょう)、力を合わせれば未来が切り開かれることを実感しました。