(492)(3)バイエルが目論む除草剤による食料の世界支配(3-1)

 

ドイツから学ばなくてはならない理由(3-1)

バイエルが目論む除草剤による食料の世界支配

 

ドイツ公共放送ZDFが危険性を告発したグリホサート

上に載せた「ZDFズーム」が2013年に放送した『沈黙の毒』では、グリホサートは研究者、環境団体さらには南米の使用農民から何十年にもわたって人間に有毒であると指摘され、2015年にEUの承認は失効する予定であった。

しかしEUの自由貿易協定TTIPのロビー活動が高まるなかで、グリホサート使用の継続の動きが活発化した。そのような中で「ZDFズーム」は多量に使用され被害が多発しているアルゼンチンを取材し、被害の実態を映し出すとともに、グリホサートの使用がさまざまな病気との間に明確な関係があることを浮き彫りにしている。アルゼンチンの実態は、「ヨーロッパとドイツの農業の未来を垣間見るものだ」と述べている。

3回に渡ってこのフィルムと供にグリホサートの安全性とバイエルの世界支配の実態を追跡したいと思っているが、最近のサプリメント「紅麴」で見るように、(機能性表示食品としての規制緩和で)容易に出回ることには問題があることは明らかである。

特にグリホサートについては、昨年末のEUの2033年までの認証を受けて家庭に出回って行くことは、非常に危険であるように思う。

 

除草剤(グリホサート)は本当に安全なのか?

 最近日本では安全な除草剤と宣伝される除草剤販売が目につくようになり、除草剤がホームセンターだけでなくドラッグストアなどの店頭に山積みにされている。販売世界一をうたい文句を掲げる商品名ランドアップが山積みにされているが、その横には価格的に3分の1ほどの他の除草剤も並べられている。

詳しく見ると、他の商品もグリホサートが主成分で同じであるが、(農薬登録がないので)「農作物等の栽培・管理に使用すると罰せられます」小さく書いてある。

すなわち安いグリホサート除草剤は、家庭、道路、駐車場、グランドなの雑草対策にだけ使用のみが許されと表示している。しかしそれらの非農耕地用の安い除草剤には、「食品成分(グリシン)から生まれた除草剤なので、散布後の土壌に成分が残留せず、環境にやさしい安心・安全な除草剤です」と書かれており、既に家庭菜園でも使用されていると聞く。

たとえ家庭菜園で使われないとしても、これまでは除草剤の危険性が長年指摘されてきたことから家庭住環境で使われることは少なかったが、「安心、安全」が絶えず唱えられれば、雑草対策に除草剤の使用も日常茶飯事となりかねない。

問題は本当に人の体に「安心、安全」であり、環境にも「やさしい」のかである。

このグリホサート除草剤はアグリ巨大企業モンサントが1974年に世に出し、70年代末には世界各地で使用され、発がん性だけでなく、アレルギーなど自己免疫疾患、神経毒として自閉症認知症を誘発する可能性が指摘されてきた。そのような危険性は「タバコの有害性指摘」同様に、多くの研究者や世界各国の研究機関で否定されてきたのも事実である。

しかし2015年3月、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、グリホサートを発がん性リスクの高いカテゴリー2Aに分類し、発がん性の危険性を公にしている。それにも関わらず世界各国の評価機関では安全性を評価し、世界の殆どの国で認証され、急速に使用量が拡大している。

すなわち日本、アメリカ、EU、カナダ゙、オーストラリア、ニュージーランドなどの世界各国で安全性を評価して認証されている。

 そのような背景からドイツの巨大医薬品バイエルが、モンサントを2018年巨額な660億ドルで買収し、農産物の世界支配に乗り出した。それはモンサントが打ち出していた「除草剤(ランドアップ)で天然のどのような植物も一網打尽に枯らせ、遺伝子組み換えでつくり出した様々な農産物除草剤耐性種の組み合わせで、将来的な食物の世界支配」を確信したからに他ならない。

モンサントが買収に応じたのは、年々ランドアップの被害が拡がり訴訟が増大し、世界の市民の抗議「モンサントデー」が強まって行っただけではなく、訴訟で屡々社内秘密書類が明らかになるように、自らもランドアップの危険性を認識し、単独では耐えられないと推測される。

しかしバイエルが2018年買収を完了すると、その年の8月には子会社モンサントカリフォルニア州の裁判では、がん患者に2億8000万ドルの損害賠償が命じられ、さらに米国ではがん患者による同様の訴訟が5,000件係争中であることが明らかになり、バイエルの株価は一挙に11%も下落した。

しかも訴訟は年々増え続け、アメリカにある法律サイト情報センターによれば2024年6月現在訴訟件数5万4000件を超えている(注1)。

ランドアップは1970年代後半から安全な除草剤として使われてきたが、農産物の世界征服という言葉が駆け回るようになったのは、1996年に遺伝子組み換えによるグリホサート耐性大豆が導入されてからであり、導入後世界の使用料は一挙に15倍に増大したと記されている(注2)。

その後トウモロコシ、綿花、アルファルファ、菜種、テンサイなど続々と耐性品種が開発され世界征服を成し遂げて行った。何故なら除草剤と耐性品種の同時散布で作物だけを生育させることができるようになり、驚くべき安さで作物量産できるようになったからである。

(注1)Monsanto Roundup Lawsuit Update

Monsanto Roundup Lawsuit | June 2024 Update (lawsuit-information-center.com)

(注2)グリホサートが 世界を征服した方法 https://www.spektrum.de/news/landwirtschaft-wie-glyphosat-die-welt-eroberte/2178219