(14)ZDFフィルム「大いなるこけおどしー原発政策の間違った約束」11

今回は、ベルリン市民やハンブルク市民を脅かしたクレメール原発事故から始まります。

(ナレーション)
2007年6月28日、ハンブルクの城壁門の前のクレメール原子力発電所で変圧器が火災を起こし、煙が運転センターにまで押し入った。
原子炉の自動停止は最悪の事故を防いだ。
それ以来巨大電力企業ファテンフォールのクルメール原発は停止した。
ハインツ・ズミタールはグリンピース所属の核物理学者である。
彼は事故原子炉を憂慮してヘリから観察する。
(ハインツ)
事故は、全体の連結欠陥、操業側の誤った行動、システムの欠陥を示し、原発の状態を著しく憂慮すべきものと評価する。
(ナレーション)
ファンテンフォールは問い合わせに、安全技術に問題はなく、安全システムは適正に始動した、と報道した。
(トゥモ・ハタカ ファンテンフォール代表)
私は良心に誓って、クルメール原発は安全だと断言できる。
(ナレーション)
原子炉が2009年再び運転された時、新たに故障が生じた。また変圧器だった。そのためすぐに原子炉は停止された。
(ハインツ)
ファンテンフォールは、原発にはもはや欠陥が全くないと断言したが、再び既に知られている欠陥である。それでファンテンフォールは信用を失った。
今や監査局が明らかに疑われている。監査局はファンテンフォールに運転許可の試験を課している。判断所見はまだ出ていない。
それに対してファンテンフォールは、インタビュウを拒否している。


<巨大電力会社ファンテンフォールのクルメール原発事故は、私がベルリン暮らしを始めてすぐに起こりました。
ファンテンフォールは、2002年にクルメール原発所有のハンブルク電力会社を買収したスウェーデン国営企業であることから、厳しい批判が高まりました。
特にベルリンは距離的にも近いこともあり、市民は怒っていました。
そして2009年7月反対を押し切って、フィルムにあるように絶対的安全を断言して運転を再開しましたが、わずか2週間で再び変圧器の故障を起こして停止しました。
その際ハンブルグ新聞(Hamburger Morgenpost、5.Juli.2009)は激憤して、以下のように厳しく批判していました。
「2007年6月28日のクルメール原子力発電所の事故は忘れられない。当時変圧器が火災を起こした。ファテンフォルは世間を騙し、些細な事のように見せかけた。特に事業体は原子炉運転センターに煙が押し入り、職員が酸素ボンベを付けて停止したことを隠していた。もし職員間の情報伝達のミスがあれば、炉心溶融の大事故を招いていただろう。二年間クルメール(Kruemmel)原子力発電所は休止した。その間ファテンフォルは修理し、復旧させた。その後五人からなる専門家委員会(監査局)が検査し、安全であるというお墨付きを与えた。安全だと断言するお墨付きはいったい何であったのだ。−−−」
変圧器の故障が致命的なのは、ポンプが動かなくなることで原子炉を冷却できなくなり、炉心溶融という大事故を招くからです。
そしてクルメール原発はそれ以来停止していましたが、6月の脱原発決定で、そのまま廃棄されることになりました。
ルメール原発はメデタシ、メデタシですが、EUでは「リスボン戦略」を通して新自由主義推進に転換し、2000年以降電力やガス水道事業から郵政事業まで大部分の社会資本事業が、経済活性という御旗のもとに民営化され、さらに企業買収などの経済競争によって、市民の暮らしが脅かされていると言っても過言ではありません。
今回は新自由主義の核心に迫りたいと思いましたが、端的に述べることは難しいため、私のホームページに掲げた文章から下に抜粋しておきます。
ドイツでは2008年の金融危機以降、新自由主義をコントロールする機運が高まっており、2010年の始めには金融投機税(トービン税)の導入を、政府与党からリンケ(左翼党)に至る全ての党が賛成しました。
そしてトロントのG20(2010年6月)では、フランスと共同して金融投機税を提唱しましたが、アメリカ、カナダ、日本などの強い反対で先送りされました。
明日は新しい政権誕生が近づき、私たちの暮らしにも直結するため、「民主党が180度転換した本当の理由。処方箋は可能か」を緊急提言したいと思います。>



1992年のリオ宣言には希望が溢れていた。
そして1997年の京都議定書でも、EUの草案では将来的な豊かさの平等が求めらた。
例えば産業発達国のドイツは2012年までに30パーセントの二酸化炭素排出量の減少、逆に産業未発達国のポルトガルは30パーセントの増加を求めた。
そうしたなかでは地球環境が悪化し貧困が拡大していたにもかかわらず、希望の輝きが感じられた。
しかしEUも2000年には「リスボン戦略」を採択し、新自由主義を強力に推し進めた。
そんため市民の権利は奪はれ、市民生活の質は著しく悪化した。
2008年の世界金融危機では、EU諸国に莫大な負担が課せられた。
さらに2010年にはギリシャ危機が生じ、EUの弱国アイルランドポルトガル、スペイン等に波及し、今や世界に輝いていたEUでさえ危機感が蔓延している。
そのような変化の結果として、2009年のCOP15コペンハーゲン宣言、2010年のCOP16カンクン宣言と、繰り返される度に失望が深まっている。
このような失望の原因は、新自由主義によって無規制に共有地が食い尽くされることにある(共有地の悲劇)。「共有地の悲劇」の概念は英国の生物学者ガレット・ハーディンによって1968年の『サイエンス』誌に紹介され、牧草地の例に基づいて説明されている。
すなわちどの羊飼いも出来得る限り利益を得るために、牧草地で出来るだけ多くの羊に牧草を食べさせようとする。
しかしそれは限界を超えれば、当然のことながら牧草が食い尽くされ、悲劇を引き起こすことになる。
現在の危機の牧草地は、環境であり、財政である。
すなわち新自由主義は、例外なき規制緩和で世界の国々の財政、そして世界の環境を食い尽くし、世界の多くの人々が餓えと貧困に苦しんでいる。
本質的な解決は非常に簡単であり、子供でも知っている。
すなわち人類が共有地を守るためには、良きルールが必要であり、各国の財政を守るためには金融投機税(トービン税)を徴収すべきである。また気候変動には、炭素税を導入すればよい。
それにもかかわらず、共有地を守るルール作りは益々難しくなっている。
その理由は、世界の著名な経済学者(神野直彦など)が述べているように、化石燃料による重化学産業の終焉にあるからだ。
すなわち重化学製品は既に溢れており、製造産業が利益を出すことが難しくなってきている。
そのため金融産業が、カジノと呼ばれるほどに投機的に肥大し、成功した新興国や途上国の富を根こそぎ強奪している。
さらに先進国の弱国の国債が標的とされ、限りなく金融危機が繰り返されている。
そこでは、弱国が莫大な借金を背負うだけでなく、強国も破産する銀行や保険会社を国民の年金や保険守る名目で救済が求められるため、莫大な財政赤字を抱え込んでいる。
したがって、一握りの勝利者だけが益々富を享受する一方で、大部分の人たちは強国においてさえ困窮を深めている。



(Naration)
28. Juni 2007. In Kernkraftwerk Krümmel vor den Toren Hamburgs brennt ein Transformator. Rauch dringt bis in die Leitwarte.
Eine automatische Abschaltung des Reaktors verhindert Schlimmeres. Seitdem steht der Meilerdes Stromkonzerns Vattenfall still.
Heinz Smital ist Atomphsiker bei Greenpeace. Mit Sorge beobachtet er den Pannenreaktor.
(Heinz)
Der Vorfall hat eine ganze kette von Mängeln aufgezeigt.
Von Fehlreaktionen der Bedienmannschaft, von systematischen Fehlern, dass der Zustand der Anlage als sehr bedenklich einzustufen ist.
Vanttenfall teilt auf Nachfrage mit: Die Vorfäll seien ohne sicherheitstechnische Bedeutung.
Das Sicherheitsystem habe den Anforderungen entsprechend gearbeitet
(Tumo Hataka)
Ich kann mit guten Gewissen sagen: Krümmel ist sicher.
Als der Reaktor wieder hoch gefahren wird, kommt es zu einem erneutel Störfall. Wieder der Trafo, diesmal ist es ein Kurzschluss.
(Heinz)
Wenn der Betriber versichert, die Anlage hätte keine Fehler mehr, dann ist Fehler, der schon bekannt war wieder da, dann hat er seine Berechtigung verwirkt.
(Naration)
Jetzt kommen auch Aufsichtsbehörde offenbar Zweifel.
Sie lässt Vattenfalls Zuverlässigkeit prüfen.
Das Gutachten steht aus. Kein Interview von Vanttenfall dazu.