(276)世界危機第14回『地球2100年7−6』(ABC放送の制作意図)・成長至上主義が日本を滅ぼす4(2016年歴史的転換点の根拠)

現代文明崩壊から見えてくる制作意図
今回のフィルムは主人公ルーシーの夫ジョシュ(巨大壁プロジェクトの技術リーダー)の英雄死から始まる。
巨大台風のニューヨーク直撃は大部分の地区を水没させただけでなく、グリーンランドなどの永久凍土融解で地球温暖化が激化していることから(2080年時点の海面上昇6フィイート約1m83cm)、最早水没した地区は水を排水することが困難となり、汚染の進行で伝染病が拡がっていく。
そこでは日に日に都市機能が失われ、暴動に対しても警官さえ機能せず、市長は行方不明というシナリオである。
そのようなニューヨーク崩壊のなかでは、大統領や軍隊さえも対処する術を失う(権威ある専門家の予測)。
そして益々伝染病が拡大するなかで、ある日電気が消え、すべての通信手段も失われことによって市民は完全に孤立する。
ルーシーも例外ではなく、ニューヨークの居場所を捨て、娘モーリの住む北部農場へ避難していく。
幸いこの物語では、ルーシーは娘モーリや孫息子ダニエルに再会できるが、ハッピーエンドではなく、これまでの文明生活とは全く異なる原始生活ともいうべき艱難生活の始まりである(そのように専門家が予測すること自体驚きであった)。

今回のCOP21では、温度上昇を1,5度に抑えるというより厳しい合意ができたが、もし2016年から世界が本当にに今世紀末までに、二酸化炭素排出量ゼロの実現に動き出さないなら、このフィルムが物語るように永久凍土融解よる大量メタン放出で地球温暖化を急速に激化させ、海沿いに築かれたすべての近代都市は崩壊するだろう。
それは海面上昇だけでなく、気温上昇で伝染病が蔓延し(サーズやエボラがたとえインフルエンザのように呼吸器感染しないとしても、ウイルスが気温上昇で呼吸器感染への変異は十分考えられることから)、都市だけでなく国家機能が完全に奪われ、最早その段階ではどのような緊急対処も日々後退を余儀なくされるからだ。

しかしアメリカを代表するABC放送は、アメリカほど化石燃料産業支配が強い国で、現代文明崩壊のフィルム(ルーシー物語)を敢えて制作公表したのであろうか?
京都議定書の際アメリカは、協定合意の場合物価高騰と、排出途上国、中国、インド、メキシコ免責の不公正さをメディアを通してプロパガンダし、COPから脱退しているにもかかわらず・・・『よくなるドイツ・悪くなる日本・・政治と社会』79ページ参照)

それは次回の最終回「ルーシー物語の検証と未来への提唱」を見れば明らかになるが、世界が今地球温暖化で結束して立ち向かえば、現在の危機こそ素晴しい2100年を築く原動力となると確信ているからである。
すなわちこのフィルムで最悪のシナリオを予想する専門家たちも、今世界のすべての国が最悪のシナリオを避けるべく協働して取り組めば、2100年は現代文明崩壊とは逆にグリーンパラダイスになるとも明言している。
それこそがABC放送制作の意図であり、私自身がこのフィルムを載せた意図でもある


成長至上主義が日本を滅ぼす4(2016年歴史的転換点の根拠)

世界がCOP21で現代文明崩壊を必死に食い止めようとしているにも関わらず、日本が何故石炭火力や原発輸出を推進するかは、利権構造が肥大し、モンスターとなりつつあるからだ。
同様に国民世論を無視して戦争に繋がる集団自衛権の安全保障法案を強行したのも、利権構造が戦前のようにモンスター化し、力による護衛で海外進出(新重商主義)を求めているからに他ならない(それはNHKが「何故戦争は起きたのか」シリーズフィルムで見事に検証している)。
しかしそのような民意を突き進むモンスター化は、明治以来の富国実現を目指す官僚支配の仕組みこそが造り出しているのであり、滅びるまで止まらないといえよう(それは既に破綻している高速増殖炉核燃料サイクル計画を継続してきたことに象徴されている)。

そのような危機的状況にもかかわらず、何故2016年に歴史的転換を予感するかは簡略に理由を挙げれば以下のようになる。

1、アベノミクスの嘘(失敗)が、日に日に明らかになってきており、もはやメデイアさえアベノミクス期待感を喪失しつつある。

2、国民世論を無視するだけでなく、立憲国家無視の暴走に国民が疑問視し始めている。

3、強者(大企業)が富めば、必ず弱者へ富の雫が滴下し(トリクルダウン)、すべての人が豊かになっていくと半世紀近く誠しなやかに唱えられてきた新自由主義の教義が瓦解し始めている(トリクルダウンが実現した国はなく、強者が富めば益々弱者が困窮していくカラクリが世界的に明らかにされつつある)。

4、地域の崩壊は鮮明となり、都会の大部分の市民も暮らしに困窮し、もはやハンメルンの笛吹男についていく状況ではなくなりつつある。

5、そのような中での2016年7月予定の参議院選挙は、今も民主党の裏切り後遺症が限りなく大きく、共産党まで含めて民意「安全保障法廃案」で野党結束するしかない状況が生まれている。

民意「安全保障法廃案」の実現は、立憲国家無視もできる政治の仕組みを根本的に問い直す第一歩であり、私の唱える「ドイツに学ぶガラス張りの公正と責任を求める政治」の歴史的転換点となり得る根拠である。

詳細については、冬休に書物として掘り下げて書き上げたいと思っている。