(292)世界の官僚奉仕を求めて第二回他人事ではないロシアのウインウインの官僚支配(『ロシアのドーピング秘密6−2』)

フィルムが語るように、ソ連時代も現在もドーピング指揮はポルトガロフという薬理学に長けたボスが指揮しており、体制転換さえも易々と乗り越える官僚支配を象徴しています(それは日本でも例えばハンセン病隔離政策では、戦前の内務省衛生局のボスが戦後も特効薬プロミン登場にもかかわらず、逆に隔離政策強化を指揮したことに見られます)。
その仕組みは、ポルトガロフが「青少年や若者のドーピングによる危険性」といったセミナー開催で選手やコーチを引きつけ、危険薬を安心して使える救済薬に変えるだけでなく、ドーピングに関与する全ての人たちが利益を得られることにあります。
すなわち選手は筋肉増強剤オキサンドロロン(この薬は恐ろしいことに、日本でも簡単にネット個人輸入販売で1週間ほどで手に入り、実質的に容認されていると言っても過言ではありません)などの投与で、選手の能力を最大限引き出し、選手たちはメダル獲得であらゆる欲望が得られ、コーチーたちもその手腕が評価されるだけでなく、選手が獲得する賞金や広告料からリベートが得られ、またスポーツ省の官僚たちも国家目標達成でウインウインになれるからです。

日本もこの数十年莫大負債の主因である公共投資が問題視されているにもかかわらず減らず(一般会計では縮減しているように見えても、国と地方の凡そ50兆円の公共投資は本質的には減っておらず、広大なアメリカの3倍を超える額です)、しかも公共工事入札での談合も実質的には一向に減っていません。
国民にとっては最早高速道路、新幹線、リニア建設などの公共工事は不要であっても、関与する人たちは誰もがウインウインになれることから、どのように厳しく規制しようとしても寧ろ焼け太りさせています。
それは莫大な赤字を生み出した旧道路公団の改革では、建設を推進する新会社と借金を返済する機構に分割し、永続的に益々公共工事をやり易くしたことを見れば一目瞭然です。
なぜなら道路公団独立行政法人へと民営化したことで会計検査もできなくなり、政府が国家負債ではないと明言する財投債の融資で、これまで以上に容易に調達できるようになったからです。
今回政府が決めた28兆円を上回る一億総活躍社会実現のためのバラマキでは、インフラ整備に10兆7000億円もあて、その柱にリニア中央新幹線の早期建設実現を挙げています。
しかも10兆7000億円の財源としては、既に100兆円にも達する財投債で賄うことを決めています。
財投債は国債のような国の借金ではなく、将来世代のお金を産み出すインフラ投資としていますが、その保証は全くありません。
日本のような巨大地震がいつ、どこでも起こりうる地震列島の地下に、最早国民にとって不必要な高速リニアを走らせること自体大きなリスクであり、万一災害が起これば多くの人命を奪い、東電の莫大な負債を国が尻拭いする福島原発事故に見られるように、最終的には国民が支払わなくてはなりません。
すなわち将来世代にお金を産み出すインフラ資産とは、これまでの過去を検証すれば、単なる借金だけではなく、たとえ災害がなくとも安全に維持するだけで、借金を益々増大させるマイナス資産以外の何者でもありません。
そのような見解は御用学者以外の専門家から見れば自明であり、関与者だけがウインウインの公共投資をこのまま続けて行けば、ごく近い将来日本のデフォルトは間違いなく来るでしょう。
それにもかかわらず公共投資に邁進する日本が、ロシアのウインウインで邁進する国家ぐるみのドーピング邁進をどうして他人事と見れるでしょうか。

次回からはそのような官僚支配から、戦後司法を完全に行政から独立させることで、官僚奉仕へ転換させたドイツについて少しずつ述べて行きたいと思っています。

新刊のお知らせ
8月中旬に『ドイツから学ぶ「官僚支配から官僚奉仕」・・日本の民主的革命』が地湧社から発行されます。

目次はじめにあとがき