(410)ドイツ最新ニュースに学ぶ(3)・何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?(3)陰謀論の本質(ZDFズーム『コロナ神話の力・民主主義の危機(3)』)

ドイツ最新ニュースに学ぶ(3)

1)1月20日ZDFスペシャル・バイデン大統領就任

このZDF番組から伝わって来るのは、地球温暖化ユニセフ、WHOなどの脱退で世界の分断より鮮明にして来たトランプ政権に変わり、世界を公正な統合へと導いてもらいたい、バイデンへの篤い思いである。

それでも絶えず公正さを追求しようとするドイツの第二公共放送ZDFは、バイデンの誠実で思いやりのある長所と同時に、過去の過ちとも言うべき短所をしっかり描いている。

ここに載せた動画は最初の5分ほどであり、その後は外相や専門家に聞くことで、これからの難しい課題と展望tを述べていたが、そこにもバイデンへの期待が溢れていた。

 

2)1月22日ZDFheute・ドイツのコロナ感染爆発は峠を越えたのか?

ドイツの1日のコロナ感染者数はピーク時から減って来ており、それはグラフからも明らかであり、クリスマス時点の発生率(10万人あたりの過去7日間の発症例)は196であったが、1月22日には115まで下がっている。

また集中治療室での重傷者は4800人で、1月初めより1000人弱減っていることを伝えており、日本に較べれば余裕さえ感じられる。

しかしドイツ政府は慎重であり、1月末までとしていたロックダウン(都市封鎖、原則15キロ以上の移動禁止)や、学校、商店などの閉鎖を2月中旬まで再継続することを決めている。

これに対して日本も年末からの緊急事態宣言で少し減少の兆しが感じられるが、医療は既に崩壊状態に近く、多くの人が益々困窮しているにもかかわらず、1兆円もの予算を計上したままで、ステージ2(夜間外出自粛)に下がれば2月7日から、再びGo To トラベルを再開するとしている。

それはGo To トラベルがコロナ感染を全国に拡散する大きな要因であったことから見れば、余りにも横暴だと言わざるを得ない。

過去の過ちに目を背ける姿勢は、大本営時代から現在の高速増殖炉開発や核燃料サイクル政策継続に至るまで頑なに守られており、このような反省なき横暴を繰り返して行くならば、日本の破綻も遠くないだろう。

 

3)コロナ禍のドイツの大学

ドイツの大学生もこの一年オンライン授業しかなく、しかも現在のように大学自体が閉鎖されている状況は、先が見えないだけに、学生たちの孤立感と将来への不安が伝わって来る。

しかしながら、ドイツの大学授業料は無料であり、家庭財政事情によらず学生生活が成り立つよう、様々な支援制度が配慮されており、日本の学生に較べれば比較にならない程恵まれている。

尚、学生ジェーロムが申請したコロナパンデミックの緊急事態学生支援は、連邦教育研究省が統括しており、ドイツの大学に在籍する国内外の学生であれば、毎月の申請で100ユーロから500ユーロ返済しなくてよい支援を受けられというものである。

但し受け取れる唯一の条件は、本人の銀行預金が500ユーロに満たないものであるとしており、様々な職業アルバイトをしていたジェーロムの申請が撥ねられたのは、500ユーロ以上の預金があったからである。

これに対して日本の困窮学生への支援は余りに酷く、免罪符的なものと言っても過言でない。

具体的には生活を支えるアルバイト収入が減った学生に、申請で10万円(非所得家庭20万円)を支給しただけであり、益々困窮する学生をこのような免罪符的措置で放置するのは、憲法の掲げる教育機会の均等からしても、決して許されるものではない。

 

何故市民はコロナ禍で扇動されるのか?(3)陰謀論の政府見解と専門家解説

今回のフィルムの終わりで連邦内務省の見解は、「事実陰謀論は、コロナ行動制限の市民のデモを、自らの目的と一緒に利用する極右グループの戦略である」と述べ、デモには極左グループも参加していることに対して「二つの敵対する過激グループの間の相互作用が、またとないチャンスから不安までを与えている」であった。

長年陰謀論を監視してきたジャーナリストのマーチン・ファレゼーは、現在のデモにおける陰謀論グループは、この十数年民主主義の滅亡を夢見てきた右翼愛国者であると指摘し、「抵抗を呼び覚まし、“我々はまさに上に立ち向う”」が様々なグループの共通点だと述べている。

またマインツ大学の社会心理学者ピア・ランムバティーは、「人間はコントールされる強い欲求があり、陰謀信仰は全てを投影できる強力な役者を持つという代償戦略です」と解説している。

すなわち現在のコロナ禍では、ウイルスが見えない故に、大衆は戦うべき共謀者の敵を求めており、そこに陰謀論者の運動戦略があると述べている。

この社会心理学者ピア・ランバティーは、ドイツに陰謀論の専門家が少ないことから、昨年ドイツの多くのメディアでインタビューを受けており、ドイツ公共第一放送ARDに所属する中央ドイツラジオ放送MDRのインタビューがわかり易いので、抜粋翻訳して下に載せて置く。

"Das Virus ist unsichtbar, der Verschwörer wirkt greifbar" | MDR.DE

なぜ人々は陰謀を信じるのですか?

「原則として、陰謀信仰は無力に対処する方法だからです。世界の悲運を導く邪悪な共謀者がいるとわかった時、一つの構造があります。すなわち、自分が戦わなければならないものがわかったと思います。ウイルスは見えないが、それに対して共謀者は目に見えるからです」

どのような人が陰謀論に特にかかり易いですか?

「社会にいかに取り残されていると感じるか重要です。例えば、不安定な仕事をしている人は陰謀を信じ易いことがわかります。或は、より低い教育しか受けていない人がそうです。それは、彼らがあまり知的ではないからではなく、彼らがこの社会に殆ど関与していないと感じているからです。すなわちこれらの状況要因が、重要なすなわち役割を果たします。それに附け加えて、陰謀論を通して自らを上昇させたいという願望など様々な要因があります。自分は真実を見るものであり、他のものは制度の背後で盲目的にしたがっている。このように考えることで、自らの自尊心を押し上げることができからです」

陰謀論信仰が問題になるのはどういう場合ですか?

陰謀論は批判に対して免疫化しています。異なる意見を持っているすべての人は、ナイーブな眠っている羊であるか、陰謀の一部になっています。私たちは、社会に広く普及している現象について話します。人間嫌いや民主主義不信が募って行き、長期的には、人々を過激化させる可能性もあります。そして、最後の段階では、絶えず繰り返し見てきましたが、 陰謀論は当然暴力を正当化し得るでしょう」