(53)検証シリーズ9、日本の新しいかたちを求めて。第5回(最終回)新しい予算制度、新しい選挙制度で創る新しい社会。

日本の一般会計は2011年予算が92兆円4116億円であるが、実際は各省庁は21種類の特別会計を持ち、総額は国の予算の360兆円を超えている。
この巨大な総額は、国の予算との重複、各省庁間のやり取りなど複雑な仕組みで作られており、実際の国の総予算額は210兆円ほどである。
この専門家さえ読解できないほど複雑な国の予算制度には、官僚組織の肥大化という意図が仕組まれており、現在の官僚支配政府が民主的な官僚制に刷新されれば、財政民主主義の原則に従い、国民の誰が見ても一目瞭然であるように一本化される筈だ。
また国からの地方への財源の配分も、官僚の裁量による財政操作という手法が廃止され、国民一人一人が平等な行政サービスを受ける権利に立ち返り、ドイツのような合理的配分がなされよう。

ドイツ予算制度を簡略に述べれば、所得税、消費税、法人税は共通税として、連邦、州、市町村に40対45対15(比率は多少変化する)配分されている。
それ以外の税金は、石油税やたばこ税などが連邦に、自動車税相続税などが州に、そして営業税や不動産税は市町村に配分される。
配分で重要なことは、財政的に力の弱い州、弱い市町村に対しては、住民の受けるサービスに格差が生じないように様々な水平調整がなされているが、そこには官僚の裁量をはさむ余地がなく、合理的な基準に基づいている。
たとえば消費税の州配分は、75パーセントは人口割合に従い、25パーセントは州の租税力の低い州に水平調整して配分されている。
特筆すべきは地域の予算配分において、地域に多くの住民が住めば住むほど配分が多くなることから、地域に暮らし易い環境を整えるインセンティブが強く働いていることだ。
このようなドイツの合理的な予算制度を手本として一本化していけば、巨大利権構造と指摘される独立行政法人特殊法人、26000を超える公益法人、さらにその下の無数のファミリー企業に流れる無駄な予算も必然的に仕分けされ、天下りという言葉さえなくなろう。

またお金が掛り、政治家が世襲されることも珍しくない日本の選挙制度も、民主的な官僚制に刷新されれば、当然ドイツのように国民利益を求めて、合理的になる筈だ。
ドイツの国会は連邦議会連邦参議院からなる二院制であり、連邦議会は598名の議員定数で、小選挙区比例代表制を採用している。
この小選挙区比例代表制では、連邦全土を299の選挙区に分け、有権者はまず選挙区の立候補者に一票(第一投票)を投票し、もう一票(第二投票)を支持政党に投票している。
各党の議席数は第二投票の比例配分で決められ、第一票の当選者を差し引いて名簿上位者から当選するため、第二投票が決定的な意味を持つ選挙である。
このようなシンプルで合理的な選挙ではお金も掛らず、日本のように二世や三世議員も聞かれない。
これらの政治家の多くは地方の州行政に関与していた経歴者が多く、公僕であると同時に政治の専門家と言っても過言ではない。
またドイツの市町村の議員は通常日当制のボランティア職であることから、議会は夕方もしくは休日に開かれ、お金も掛らないだけでなく、意欲ある市民が議員になれることから、必然的に市民利益が求められている。
連邦参議院は日本とは全く異なり、69名の議員は各州の首相や大臣からなり、州政府によって任命されている。
この連邦参議院の役割は地方分権を合理的に機能させることであり、連邦議会への州からの発案権と州に関わる連邦議会で議決された法案の同意権である。
もし法案が連邦参議院で否決された場合は、両院の十分な審議が求められており、審議で法案が修正された場合は再度連邦議会の可決が必要である。
連邦議会定例議会は一回もしくは二回であることから、十分な審議には長い期間が必要であり、地方分権を尊重せざるを得ない仕組みが備わっていると言えよう。
日本の選挙制度も民主的な官僚制に刷新されれば、言葉だけの地方分権は許されないことから、当然のことながら地方分権を尊重する仕組み、お金の掛らない仕組み、そして国民利益が求められる仕組みが手本とされよう。

このように現在の「民は愚かに保て、寄らしむべし知らしむべからず」を意図する悪しき制度が、民主的な官僚制への刷新によって国民利益を最優先するものへと造り替えられていけば、自ずと日本の道は未来に開かれよう。
すなわち既に繰り返し述べているように、日本は財政の健全化が実現するだけだなく(ブログ34から41参照)、地域から中小企業を中心とした新しい産業ルネッサンスが湧き上がり(52参照)、地産地消税の導入によって自立した分散型地域社会が生み出され(42から47参照)、教育においても社会に理想が求められよう(30から33参照)。
それは日本の利益だけでなく、世界全体の利益を追求することであり、世界が日々豊かに幸せになっていく道でもある。
(文責関口博之)

*一段落しましたので、11月13日まで休みます。