(416)ドイツ最新ニュースに学ぶ(9)・ワクチン接種ルーレット(4)・今コロナ禍で問われているもの(3)

ドイツ最新ニュースに学ぶ

 

ドイツの段階的ロックダウン解除が3月7日から始まったが、チェコ共和国など東欧でコロナパンデミック猛威が止まらず変異種が押し寄せて来ていることや、イタリヤやフランスの第3波開始などで、感染が再び増え始め、少なくとも中旬前半までは発生率(10万人あたりの7日間の平均症例数)が60台であったが、中旬から再び急速に感染が拡がり、3月21日には発生率が100を超えたことから、4月18日までロックダウンが再度為されることが、今日23日の発表で決まった。

それについては次回で取り上げることにして、最新ニュースは、「コール以降の最大の汚職」と「メルケル時代の終わりを告げる州選挙結果」に絞った。

コール以降最大の汚職(ZDFheute3月12日)

キリスト教民主同盟CDU連邦議員3人が、ドイツ統合の立役者コール首相以降、最もスキャンダラスな政治汚職関与が判明し、すぐさま連邦議会から追放された。

それを受けて与党CDUとCSU議員連盟は、残った243名議員全員の汚職に関与していない宣言署名を提出し、政治家への寄付禁止や、政治家報酬以外の副収入を10万ユーロ以上から報告義務を課する10法案を作成した。

これに対して連立政権を組む社会民主党SPDは、副収入は1セントからでなくてはならないと明言しており、現在の状況からそうなる公算が高い。

日本では政治家の副収入は当たり前であるが、ドイツの政治家は8割が副収入を持っておらず、国民も政治家汚職に対して驚くほど厳しい。

しかし政治家の2割は企業などから、顧問などの名目で多額の収入を得ており、以前から透明性が、連邦議員監視協会などから強く求められていた。

2018年に連邦議員監視協会とシュピーゲル誌の合同調査報告では(下の資料参照)、連邦議員709人のうち555人が副収入なしで、154人が少なくとも年間550万ユーロの副収入があり、副収入のある連邦議員の割合は、CDU、CSU連盟が25,6%、SPD15,0%、AfD18,5%、FDP43.8%、リンケ14.5%、緑の党7.5%であり、しかも透明性に欠けることが指摘されていた。

Das sind die Nebeneinkünfte der Bundestagsabgeordneten | abgeordnetenwatch.de

ドイツの連邦議会議員は年間議員報酬は約12万ユーロで、そこから課税及び社会保障費などで少なくとも6割近くが徴取されることから、民間企業従事者に較べ決して高くない。

しかもその8割が副業なしで政治家だけに専念しており、まさにドイツの政治家も、ドイツの官僚同様に国民奉仕精神なくては務まらない職業である。

メルケル時代の終わりを告げる州選挙結果

(ZDFheute3月15日)

今回の州選挙結果は単にメルケル時代の終わりを告げるだけでなく、グリーンな時代の到来を示唆するものである。

何故ならメルケルが政党から出て首相職に専念するようになった理由は、左派(メルケル支持派)と右派の最早溝の埋まらない党内抗争からであり、今回の汚職はそれを受けた党規の緩みからであり、メルケルなき後のキリスト教民主同盟CDU(キリスト教社会同盟CSUも含め)の今年9月の連邦議会選挙では、支持率がさらに落ち込むことが予想される。

実際直近の世論調査では、Kanter(3月20日)の国民支持率は、CDU/CSU27%、緑の党22%、SPD17%であり、またINSA(3月20日)でも、CDU/CSU28%、緑の党20%、SPD18%となっており(2つの世論調査機関では今年2月初めまでCDU/CSU支持率は35%ほどを維持していた)、緑の党が率いる連立政権誕生の公算は極めて高い。

まさにそれは、2011年3月の選挙でそれまでCDU支配の牙城であったバーデン・ヴュテンベルク州が、緑の党クレッチャマン政権の誕生を彷彿させるものであり、連邦での緑の党首相の実現を想起するものであるn。

クレッチャマンが嘗て保守王国であったバーデン・ヴュテンベルク州で、再選されるたびに支持を拡大させて来たのは、市民奉仕に徹し、緑の党の理想目標「エコロジー、社会的連帯、底辺民主主義、非暴力」を、原理主義者と異なって現実に即し、徐々に実現してきたからに他ならない。

既にブログ112から114の3回に渡って、「緑の党の連邦首相誕生は可能か」の題目で、(クレッチャマンが初当選の際、州の中枢4部局幹部を市民派官僚に総入れ替し、これまで巨大電力などへの産業奉仕を市民奉仕に大転換し、圧倒的に市民に支持されているように、)緑の党が現実に即し地道に市民奉仕を継続して行けば、連邦首相も可能であると書いたが、それがようやく実現する時でもある。

ワクチン接種ルーレット(4)

フイルムは、ワクチン開発で臨床試験被験者として接種されているが、国民の多くがワクチン接種の期待さえ持てない新興国ブラジルから始まる。

新興国ゆえに経済が優先され、結果として感染者は1200万人にも上り、感染の猛威はますます拡大し、3月19日の新たな感染者は9万5000人である。

一方で世界一の大国アメリカは、既に国民全体のワクチンが確保され、接種が数か月で完了にまで漕ぎつけている。

そうした不公平が、人類が感染症の脅威に晒されている時容認されてもよいのかというのが、社会正義の問いかけである。

それはこのフィルムでも、メルケル首相を始めとして多くの著名な政治家の「ワクチンはグローバルな公共のもので、誰もが接種しなくてはならない」という主張を、保健衛生学者を通して語らせている。

ドイツではそのような社会正義を求める活動は、日本では考えられないほど積極的であり、フランクフルトに本部のあるメディコインターナショナル(人権団体)は、連邦政府の財政支援を受けて、世界の紛争危機、環境危機、感染症危機などに対して、WHO 及び世界の30カ国以上の人権団体と連帯して活動している。

今回のコロナ危機では、公共機関の医学基礎研究が巨大製薬企業の利益追求に集中して利用される不公正を訴え、必須医薬品の特許を制限し、世界の誰もが公平に接種できるよう、世界と連帯して訴えている(下の資料参照)。

medico international - Gesundheit, Soziales, Menschenrechte

実際このような社会正義は単に人道的であるだけでなく、最早それを容認して行けば人類存続にかかわる問題にまで達しているように思える。

何故なら現在のブラジル変異種は、ファイザー・ビオテックのワクチンの有効性を低下するとアメリカで言われ始めており、途上国や新興国のコロナ感染を放置するなら、或はコロナ終息後の新たな感染症を放置するなら、人類存続は難しいところまで達してしまっているからである。

それは気候正義も同じであり、寧ろその危機にこそ世界を連帯させ、危機を乗り越えるだけでなく、希望ある未来を創り出す道があると言えよう。

話をフイルムに戻せば、後半はコロナ感染者を如何に医療的に救うかであり、カテリーナのようにコロナ感染で重症化した患者を救う薬剤開発がテーマである。

ワクチン開発とは異なり、感染者の多くに生ずる抗体を抽出し、スパイク阻止部分の遺伝子配列を特定することで、人工的に中和抗体を合成する開発である。

ドイツ感染症センター(DZIF)に属するブラウンシュヴァイク研究所では、膨大な試行錯誤を経て、その中和抗体を試験室で合成することに成功した。

しかし公的機関が臨床試験を経て製品化するには、更に膨大な費用がかかり、現在の仕組の中では公的に製薬化することは難しい現状が語られている。

それ故その後を受けて、ブラウンシュヴァイクにある民間製薬企業コラトセラビュティク社が開発し、コロナ感染で苦しんでいたカテリーナに臨床試験として投与され、一命を取りとめたことが伺える。

具体的に詳しい説明はないが、中和抗体投与で1週間で退院し、人工呼吸器も付けずに家庭で治療し(その中和抗体は、モルモットの肺で99%コロナウイルスを減少できると証言されている)、今年夏のハンブルクでのトライアスロン競技に再び出る決意を誓うまでに快復している。

今コロナ禍で問われているもの(3)

上の「コール以降の最大の汚職」書いたように、日本では口利きでの汚職は日常茶飯事の如く繰り替えされ、本質的な問題は官僚支配構造にあるため、止まらないように思える。

それに較べドイツでは、官僚奉仕、政治家奉仕の仕組があらゆるところで構築されているので、汚職が皆無になることはないとしても、政治に、そして国の未来に期待できる。

現在日本で問題になっている政治家や官僚の会食は、国民の目線で見れば、誰が見ても便宜を図るものであり、コロナ禍で今問われている6兆円近い除染マネーも、「誰のためだったのだ」と怒鳴りたくなるほど、国民を馬鹿にしたものである。

その結果、国民が10%の消費税値上げに必死に耐えているにもかかわらず、国の負債は益々肥大し続けており、国民の税収を遥かに超える額を短期国債で賄い、このような酷い自転車操業ギリシャでさえなかった。

確かにコロナ禍では、お金に糸目をを付けず困窮している人たちを助けるべきである。

しかしコロナ禍で見えて来たものは、本質的に困窮する人たちを救うというより、除染マネーが物語るように、行政を仲介する業者、企業へのばら撒きである。

そのように日本が希望なき未来へと歩んでいくなかで、私のような昨日の出来事さえ多々思い出せない老い耄れが、悔いなく生きることは、今を生き抜くことであり、ドイツから学ぶ提言を書き残していくことだと思っている。

それはブログとは異なる形で、これまでブログで書いたことを総括するのではなく、新たに私自身がドイツから日々学ぶことを通して、書き残しておきたい。

それ故ブログは、『ワクチン接種ルーレット』が6回(後2回)で終了後は、「ドイツ最新ニュースに学ぶ」に絞り、隔週で継続に留めたい思っている。