(105)オルターナティブな小沢一郎論。(8)最終回、世界を切り開く「オリーブの木」成功の鍵

オリーブの木」が8月27日に、まずは国民連合へ集結することでスタートした。
そこには田中康夫新党日本だけでなく。河村たかし減税日本も参加していることから、小沢一郎の決断次第で両ウィングにすることも可能だ。

選挙が公示される頃には、以下のような爽やかな弁舌も聞かれよう。
「日本みたいにどえらい歳費をもらっとる国なんかありゃせんぜ。国の議員さんも800万円にせにゃあかん。それに官僚の退職後の天下りも、欧米みたいにボランティアでええが。とろいこと言っとる役人は、みんな辞めてもらうか、地方の窓際へ流したればええ。そうせんと、なんも変わらへん」(注1)
実際にそのように弁舌するかは定かではないが、私自身名古屋に住民票があることから名古屋市長立候補時から注視してきたが、市長当選後は自らの歳費も年間800万円以外は全て返納し、市民への減税公約を守るために議会とも徹底抗戦をくり返し、辞職後の市長再選挙やリコールでの市議会選挙では、旧式の自転車で東西南北どこへでも行き、雨の日も風の日も上のように演説する姿は、まさに市民に奉仕するデクノボーの鏡であった。

しかしたとえどのように両ウィングが頑張ったとしても、「オリーブの木」が国民連合の結束だけで終わるなら、絶対に勝てないだろう。
何故なら自公の組織票は結束し、選挙戦では支持率30パーセントを超えてくることから、反増税脱原発を求める全ての小党が結束しなくては最初から勝負にならない。
全ての小党が結束しても支持率は10パーセントにも達しないが、全ての小党が反増税脱原発で大同団結し、国民への奉仕を最優先すれば、50パーセントを超える無党派層も動き、大勝利することも可能である。
しかし一部の「国民の生活が第一」支持者のコメントのように(大同団結を一番恐れる自民党支持者の可能性も高いが)、共産党を特別視するようでは「蜘蛛の糸」のように「オリーブの木」の成功は覚束ないだろう。
既に述べたようにドイツのリンケ(左翼党)は、ドイツ統一後の結党においても民主集中制の犯罪性を真剣に反省し、2003年の党大会では、「前身の社会主義統一党はソ連への忠誠に固執し、社会主義を民主主義や自由に結びつける能力もなく、その路線は意見の異なる人間の迫害など文明への犯罪であった」と明言している(注2)。
そして現在のリンケは、市民奉仕を最優先する34歳という若いデクノボウ女性党首の下に、公平で自由な民主主義社会を創りだすために、どの党よりも透明性の高いことを訴え、2009年の連邦選挙では11、9パーセントの得票率で76議席を獲得し、最早ドイツの第三勢力にまで躍進していると言っても過言ではない。
日本においても共産党は当然そのように変わってきているであろうが、もし小沢一郎の国会挨拶での「オリーブの木」の誘いに、マスコミの報道したように本心から否定的で、最終局面でも建設的でないなら未来はないだろう。
また「国民の生活が第一」も、共産党が長年脱原発運動を継続してきたことや、地域で住民の生活が第一を実践してきたことを評価せず、左からの国民の生活が第一を排除するようでは、300選挙区で全滅するだけでなく、政党自体が消えてなくなるだろう。

2013年9月に連邦選挙が行われるドイツでは、その前哨戦が既に始まっており、96年まで実施されていた財産税の復活が争点になっている。
何故なら世論調査ドイツ国民の77パーセントが、富の再配分に大きな効力のある財産税の復活を望んでいるからである(注3)。
政権奪回が予想されている赤(SPD社会民主党)と緑の党も、リンケ政策の再配分強化の柱に遅れを取らないよう、200万ユーロ以上の所有者に1パーセントの財産税復活を、政権復帰への政策公約とすべく折衝を開始した(注4)。
また金融危機を封じ込めるために、金融取引税(トービン税)が連邦議会で6月に与野党の圧倒的多数で可決され、EUにおいても英国を除く少なくともEU10カ国で金融取引税導入が実現する公算が大きくなっている。
このように、新自由主義で一人勝ちするドイツで脱新自由主義政策が採られていくのは、産業利益を優先する新自由主義が国民を幸せにしないからである。
しかも国民の大部分が困窮していくことから、消費は下がり続け、経済自体も縮小するからである。
したがって2013年のドイツの連邦選挙では、世界の未来を切り開く「ヒトを優先する政策」が求められようとしているのだ。

それは、2009年選挙で「ヒトを優先する政策」を掲げて大勝利した小沢一郎の先見の明を実証するものであり、今回の選挙でも反増税脱原発をみんなで掲げ、世界の未来を切り開く心意気で国民を最優先していけば、どのように道が険しくとも勝利できるであろう。
とはいえ、先ずは国民のうねりを創りだしていくことが必要であり、そのためには小沢一郎脱原発デモの参加は欠かせられない(身の危険性があるというなら、サポータで守っても参加すべきだ)。
また宣伝塔及びオーガナイザーとして、田中康夫河村たかしの両ウイングも欠かせないだろう。

このままビスコンティの滅び行く美学に身を任せるのか、それとも見果てぬ夢をデクノボーとなって実現するかは、すべては小沢一郎自らの采配にかかっている。


(注1)(27)検証シリーズ3 何故日本の国会議員報酬はドイツの連邦議員よりも10倍以上も高いのか。
http://d.hatena.ne.jp/msehi/20110905/1315173444

(注2)(102)オルターナティブな小沢一郎論。(5)デクノボウと呼ばれる女性議院擁立が鍵
http://d.hatena.ne.jp/msehi/20120812/1344721567

(注3)「南ドイツ新聞」、2012年4月28日
ドイツ国民の多数が財産税の復活を望んでいる」
http://www.sueddeutsche.de/politik/umfrage-mehrheit-der-deutschen-will-vermoegenssteuer-zurueck-1.1344400

(注4)シュピーゲル・オンライン、2012年8月8日
「赤と緑は200万ユーロの所有から財産税を求める」
http://www.spiegel.de/politik/deutschland/vermoegensteuer-spd-und-gruene-wollen-abgabe-ab-zwei-millionen-euro-a-848948.html