(121)ドイツの今を考える最終回。(16)非暴力こそが世界、そして日本を救う。

緑の党創設の綱領が最後に掲げる原理は非暴力である(注1)。
現在のパレスチナを見ればわかるように、力の行使は負の連鎖を増大させ、イスラエルの殺戮攻撃とパレスチナのテロ攻撃がますます険悪化を招いている(注2)。
軍事力、財力で圧倒するイスラエルの無差別爆撃という力の制圧は、現時点で見る限りパレスチナの無力さを痛く感ぜざるを得ない。
しかしそのような力の制圧は必ず恐ろしいテロ報復攻撃を招き、既に所有していると言われている核貯蔵施設が爆破されたり、イスラエルを支援するアメリカの原発施設が攻撃されかねない(注3)。
ニューヨーク同時多発テロを二度と起こしてはならないという世界の人々の願いにもかかわらず、ますます自爆テロを含めたテロ攻撃が増えているのは、絶望的な貧困が世界で拡大しているからだ。
最近NHKが放映したBS世界のドキュメンタリー「世界の貧困・・なぜ格差はなくならないか」8作品シリーズは、貧困の原因を鋭く分析追及していた。
(これらの作品はZDFなど数十カ国の公共放送局の国際共同制作で、映像を通して世界の人々に貧困について考えてもらおうという国際プロジェクトであり、2012年世界各国の公共放送は5億人の人たちに発信したと報道されている。NHKはそうした意図から正月にも一挙再放送するが、このような素晴らしい作品を低所得者ではほとんど見ることができないBSでしか放映しないこと自体問題である・・私自身は従来のNHK契約を止めオンデマンドで見ているのであるが)

特に第6作目「アフリカ争奪戦・・“富”を操る多国籍企業」では、アフリカで蔓延する貧困に焦点をあて、銅やコバルトなどの天然資源に富むザンビアの採掘事業が莫大な利益をあげているにもかかわらず、国民の8割以上が2ドル以下(6割は1ドル以下で失業率は8割を超えている)の暮らしで困窮しなくてはならない理由を抉り出していた。
すなわち新自由主義の本体ともいうべき多国籍企業が見かけの商取引、会計操作などあらゆる手段を駆使して、ザンビアの富を吸い尽くす搾取方法が見事に描かれていた。
こうした番組が世界の公共放送で放映される意義は大きく、世界から貧困をなくすべく追及を継続していけば、まさしく非暴力で世界は大きく変わるだろう。
また2010年から始まったアラブの春といわれる独裁国家から民主国家への大きなうねりは、チュニジアリビア、エジプト、バーレン、シリアへと瞬く間に拡がり、世界を変えようとしている。
その原動力となっているのがジーン・シャープ提言の理論書『独裁体制から民主主義へ』であり、市民不服従独裁政権の依存する源を断つやり方を様々に教授している。
しかもドキュメンタリー番組「非暴力革命のすすめ・・ジーン・シャープの提言」は世界で放映され、日本でもBSドキュメンタリーで2012年2月放映、及び12月に再放映されている(動画・・注4)。

16回に渡って書いてきた「ドイツの今を考える」を敢えてまとめれば、ドイツでは戦後の市民利益を追求する社会的市場経済ドイツ統一以降激しい新自由主義の波に飲み込まれたが、非暴力に基づく市民運動を通して、今新たな地平線が見えてきている。
すなわち産業が脱原発を通してシーメンスに見られるように大転換を開始し、来年EU11カ国で先行導入が予定される金融取引税を通して、新自由主義自体が適正な規制で市民利益を求めるように180度変わろうとしている。

これに対して日本では新自由主義を救世主として求める政党が9割を超え、まさにドイツが2009年の連邦選挙で社会民主党SPD)の裏切りから、新自由主義を求めるメルケル政権が大勝利した際と瓜二つである。
確かに現在の日本の状況は、新自由主義が満開である。
しかし満開は、五瓣の椿のように丸ごと落ちるのも近く、非暴力によって日本、そして世界が変わるのも近いと感じている。


(注1)
GewaItfrei
非暴力
Wir streben eine gewaltfreie Gesellschaft an, in der die Unterdrückung von Menschen durch den Menschen und Gewalt von Menschen gegen Menschen aufgehoben ist. Unser oberster Grundsatz lautet: Humane Ziele können nicht mit inhumanen Mitteln erreicht werden.
Gewaltfreiheit gilt uneingeschränkt und ohne Ausnahme zwischen allen Menschen, also ebenso innerhalb sozialer Gruppen und der Gesellschaft als Ganzem als auch zwischen Volksgruppen und Völkern.
私たちは、人間による人間の抑圧と人間に対する人間の暴力を破棄した暴力のない社会を追及する。私たちの最上位の原理によれば、人間の目標は非人間的手段でもっては達成できない。非暴力は全ての人間の間で、まさに社会的集団と全体としての社会のなかで、同様に民族間で無条件に例外なく有効である。
Das Prinzip der Gewaltfreiheit berührt nicht das fundamentale Recht auf Notwehr und schließt sozialen Widerstand in seinen mannigfachen Varianten ein. Widerstand kann langfristig am wirksamsten auf soziale Weise geführt werden, wie das Beispiel der Anti-Atombewegung zeigt. Wir sind ebenso grundsätzlich gegen die Anwendung zwischenstaatlicher Gewalt durch Kriegshandlungen.
非暴力の原理は正当防衛の基本的な権利に触れず、様々な種類の社会的抵抗を含めている。抵抗は長期的に最も有効な社会的方法を、例えば反核運動が示すように導いている。私たちはまさしく、戦争による国家間の暴力行使に根本的に反対である。
Deshalb treten wir in den internationalen Beziehungen für eine aktive Friedenspolitik ein. Aktive
Friedenspolitik heißt auch, daß wir uns gegen die Besetzung von Staaten und die Unterdrükkung von Volksgruppen Wenden und für die Unabhängigkeit und Selbstbestimmung der Volksgruppen in allen Staaten eintreten. Frieden ist untrennbar mit der Unabhängigkeit der Staaten und dem Vorhandensein demokratischer Rechte in ihnen verbunden. Es muß weltweit abgerüstet werden. Weltweit müssen die Atom- , biologischen und chemischen Waffen vernichtet werden, fremde Truppen müssen von fremden Territorien abgezogen werden.
それゆえ私たちは国際関係において行動的平和政策を支持する。行動的平和政策とは、国家の占拠や民族集団の抑圧に反対し、全ての国家において民族の独立と自己決定を支持することである。平和は国家の独立と切り離せないものであり、国内の民主主義の法律の存在を結び付けている。
世界的に軍備が縮小されなければならない。世界的に原子力兵器、生物兵器化学兵器は廃絶されねばならない。軍隊は外国から撤退されなくてはならない。
Gewaltfreiheit schließt aktiven sozialen Widerstand nicht aus, bedeutet also nicht die Passivität der Betroffenen. Der Grundsatz der Gewaltfreiheit bedeutet vielmehr, daß zur Verteidigung lebenserhaltender Interessen von Menschen gegenüber einer sich verselbständigenden Herrschaftsordnung unter Umständen auch Widerstand gegen staatliche Maßnahmen nicht nur legitim, sondern auch erforderlich sein kann (z.B. Sitzstreiks, Wegesperren, Behinderung von Fahrzeugen).
非暴力は行動的社会抵抗を排除するのではなく、関与者が受身になることを意味していない。非暴力の原理は、それ自体独立への支配秩序の状況下に抗して人間の生活保持のための利益を守るために、国の措置に反対する抵抗は合法であるばかりか、必要なものであろう(例えば座り込みストライキ、道路封鎖、車両妨害など)。

(注2)ZDFでもテーマに取り上げれないほど悲惨な状況
動画http://www.youtube.com/watch?v=3xF0WAI9PUY&feature=player_embedded

(注3)2006年からアラブゲリラは容易に持ち運びできるロケット砲を使用しており、2キロメートル離れた地点から5メートルのコンクリート壁を貫通することが、ZDFフィルムなどが放映するように実証されている。

(注4)「非暴力革命のすすめ 〜ジーン・シャープの提言〜」BS世界のドキュメンタリー
http://www.dailymotion.com/video/xp7wsu_yyy-yyyy-yyyyyyyyy_news