(213)ドイツメディアから考える今14・・医療の理想を求めて2(カテーテル検査が死者を倍増する理由)・『患者工場3−2』

今回のフィルムはZDFが追及した医師契約から始まる。
医師契約では病院の利益追求に暗黙の合意が求められており、特別ボーナスの条項では40の膝手術及び80の背骨手術を条件に40000ユーロが支払われることが明記されていた。
背骨手術で車椅子生活となったステファニーさんが、手術の被害者であるかどうかはわからないが、少なくとも背骨手術の危険性の説明責任及び手術によらない別の治療を提示する義務がある筈である。
また地区疾病金庫連合AOKがドイツで行われた手術の85パーセントが不必要であると検証していることからも、ステファニーさんが手術で車椅子生活にさせられた可能性は高い。
実際この病院は2011年から手術優先に転換し、2012年には利益を40%以上も増加させ、160万ユーロの利益を出している。
そして驚くべきは、公共放送ZDFがこの病院及び医師たちを国の弁護士協会に訴え、ついには裁きさえ与えるという不正を正す戦う姿勢である。
まさに戦う民主主義ドイツを、公共放送自ら実践している。

しかしドイツ医療の深刻さは、シュナイダー救急医が述べるように救急現場でも利益最優先の経済圧力が支配している実態である。
すなわちドイツの何処の地区でも救急車が患者を運び込む病院では、カテーテル検査やCT及びMRI検査がなされ、異常があれば、危険性や不必要性が考慮されることなく手術が優先される実態である。
スイスと比較して2倍のカテーテル検査が実施されているにもかかわらず、2倍の人が心筋梗塞で亡くなっている事実は、このような検査が手術をするためのお墨付きとなっていることを意味し、極端に言えばドイツの心筋梗塞死者の半数は手術で殺されていると言っても過言ではない。

ZDFルポライターのダニエルは、そのような患者より利益が優先されるドイツ医療を検証する中で人間こそが重要視されるべきだと憤り、ドイツ病院連盟代表ゲオルク・バウムに取材し、その憤りをぶつける。

しかし意外にもゲオルク代表は、医療の経済追及は正しいことではないと明言し、そのようにさせたのは政府の政策であると主張し、むしろ現在の医療に露骨な競争原理を導入させた新自由主義を批判しているようにも思える。

このような病院連盟代表の証言、及び疾病金庫の中核をなす地区疾病金庫連合AOKの報告する病めるドイツ医療の検証データ、そしてZDFのストーリー展開には、現在のドイツ医療が患者工場と化しているとしても、それを患者本位の医療へ変えていかなくてはならないという大きな意思が感じられ、ボトムから脱却の足音さえ聞こえてくる。

それに比べ日本の医療はどうであろうか?
次回は『患者工場3−3』を載せると同時に、日本の医療についても考えて見たい。