(244)カントの理想を早急に実現しなくてはならない世界(2)・巨大台風の未来


2013年11月11日フィリピンを直撃した巨大台風ハイヤン(DW写真)

将来もっと最悪なカタストロフィに向き合わなければならないのか?
ドイチェ・ヴェレ(DW)は、2013年11月の巨大台風ハイヤンが最大風速350キロメータ・時でフィリピンを襲い、壊滅的被害を与えたことを伝えた。
http://www.dw.de/die-zukunft-der-wirbelst%C3%BCrme/a-17219308
「温暖化した海水がその巨大化の誘因になっている」と述べ、「私たちは将来もっと最悪なカタストロフィに向き合わなければならないのか?」と警告した。

また今年3月13日深夜台風PAMが、南太平洋バヌアツを最大風速320キロメータ・時で直撃した(日本では最大瞬間風速94メートル・秒と報道)。
ドイツのヴェター・コムは、大統領ロンズデールの「気候変動がカタストロフィの責任である」というコメントを載せ、食料品窮乏の訴えを伝えると同時に、気候変動に対してより決然とした戦いが求められると報道した。
http://www.wetter.com/news/vanuatu-lebensmittelengpaesse-befuerchtet_aid_20154.html

台風が巨大化する理由は、南の赤道付近で発生した雲の渦の台風が北へ進行する途上で、海水温度が上昇していることから、水蒸気が次々と上がり、雲の渦が巨大化するからだ。
既に述べたIPCC政府間パネル5次報告書(2014)では、このままでは今世紀末の気温上昇を4、8度、海面上昇を82センチと予測していることから、将来は最大瞬間風速100メートルを超える巨大台風のカタストロフィーと向き合わなければならない。


フィリピンの巨大台風被害(左写真)               バヌアツの巨大台風被害(右下写真)














カントの理想(2)・何故今カントの理想が実現されなくてはならないか?

自然のありのままの認識と人間の道徳的価値を説いたカントは、生涯独身にもかかわらず社交的で、時間厳守を貫いたことでも有名である。
81歳まで生きたカントは、亡くなる10年程前に書上げた『永遠平和のために』で恒久平和という理想の実現を世に提起した。
それは世界に恒久平和を求め国際連盟を創設させたが、創設自体が免罪符となり大戦へと導き、現在もパレスチナ、シリア、ウクライナだけでなく世界各地で戦争が絶え間なく勃発し、カントの理想が逆に遠のいていると言っても過言ではない。
しかし現在ほどカントの提起が的を得ている時代はなく、気候変動による破滅と核戦争による絶滅が間近に迫りつつあるにもかかわらず、化石燃料エネルギーに支配される世界は終焉に際して益々欲望を強めている。
人類に未来があるとすれば、自然エネルギーへのエネルギー転換を通してカントの理想を実現しなくてはならない。

そのような思いから今回のシリーズでは、カントの『永遠平和のために』(宇都宮芳明訳岩波文庫)を取り上げている。
この本は僅か100ページほどのカントとしては読み易いものであり、6つの予備条項からなる第一章、永遠平和が実現されるための具体的確定条項からなる第二章、及び補説からなっている。
カントの提起を直に触れたいと思い、出来うる限りドイツ語原文で読んで見ることにした。
http://www.kvgg.de/4_unterricht/unterrichtsprojekte/facharbeiten/philosophie/facharbeit2002.html
今回は第一章第3条項までにしたが、ここでも国家にあくまでも人と同様の道徳的人格を求め、ヒューマニズムの鼓動を吹込もうとしたカントの思いが感じられる。

Erster Abschnitt,welcher die Präliminarartikel zum ewigen Frieden unter Staaten enthält 
第一章、どのような予備条項が国家間の永遠の平和のために必要不可欠であるか。

1. »Es soll kein Friedensschluß für einen solchen gelten, der mit dem geheimen Vorbehalt des Stoffs zu einem künftigen Kriege gemacht worden.«
将来の戦争にとって火種を密かに保留するいかなる平和条約も、有効とみなされるべきではない。
(第1条項では、火種を密かに保留する平和は休戦にしかすぎず、国家は権力を絶えず増大することから、従来の平和条約は有効と見なされないと断言している)

2. »Es soll kein für sich bestehender Staat (klein oder groß, das gilt hier gleichviel) von einem andern Staate durch Erbung, Tausch, Kauf oder Schenkungerworben werden können.«
独立している国家は(小国であろうが大国にかかわらず)他国によって継承、交換、売買、贈与で収得できるべきでない。
(第2条項では国家は所有物ではなく、道徳的人格であることが強調されている。まさにカントの理想は国家にヒューマニズムを求めている)

3.»Stehende Heere (miles perpetuus) sollen mit der Zeit ganz aufhören.«
常備軍は段階的に全廃されるべきである。
(第3条項では常備軍の存在は他国の脅威となり、それによって軍事費が拡大されれば平和自体も重荷となり、戦争の原因となるとしている。それはアイゼンハワー大統領の軍産複合体が戦争の原因となるという演説、さらにはブッシュ政権イラク戦争もまさにそれである、と言われることからも明らかである)