(268)地球温暖化から見えてくる世界危機第六回・私のガラス張りのバングラ再訪(動画1)・不正が生み出す危機(2)

既に述べたように私のバングラディシュ再訪を思い立たのは、ZDFの『ノアの洪水の再来』で既に島や浜辺が海に呑み込まれていくだけでなく、ヒマラヤ山脈の氷河融解と豪雨で洪水が頻発する状況を見てからだった。
再訪を決めると、40年前空港の政府係官(書類の不備な旅行者には面前で賄賂を要求)からボランティア団体の係官(世界から送られてきた善意の洋服をバザールで売り着服)まで露骨な不正が行われていたことから、出来ればムービーを装着して回りたいと思った。
何故なら撮影はガラス張りにすることであり、少なくとも撮影下では不正はできないからだ。
しかし装着用ムービーを購入しても、私のシャイな性格からバングラディシュ入国の空港では装着できなかった。
空港では40年前のように書類に不備な旅行者に対して面前で賄賂を要求することはなかったが、巧妙なやり方で継続されていた。
すなわち入国審査の前では、一見空港係官と思われるベイジュ色に盛装した若いヒンドゥーの男性に呼び止められ、写真入りプレートを見せて「何でもお役に立ちます。2番の係官は知り合いですから、2番で受けてください」と丁重にアドバイスしてきた。
私は40年前の苦い経験から、それを無視して1番で審査を受けた。
審査では他の国のパスポートを見るだけではなく(旅行者が少ないこともあって)、宿泊先から旅行の目的まで聞かれたが、当然のことであるが何事もなく通過できた。
しかしそこには私の無視にもかかわらず、例のヒンドゥー男性が待っていて、再びプレートを見せて、「私は空港ボランティアスタッフであり、私を利用してください」と心がこもっており、彼が私の時代の好きな俳優篠田三郎に感じが似ていることもあって、すっかり信用してしまった。
彼に日本の俳優に似ていることを話し、ついでに彼が彼女のいない独身であることを聞いた後で(この国では男女交際がタブー視されていた)、マネーチェンジに案内してもらった(見えており案内不要であったが)。
そして最後にボランティアとはいえ、心ばかりの気持として100タカを差し出すと(現在のホテルでのボーイへの謝礼は10タカが相場)、彼の表情は急変し、「余りにも小さいお金だ」と言い、その表情から埒が明かないことがわかり、しかたなく300タカを渡した。
それでも不服そうであったが、これで終わりだという私の固い意志を表情から察知したのか、再び丁寧に挨拶して去っていったが、私はこの上なく不快であった。
出口では出迎えのホテルのボーイが待っていたが(ボーイといっても恰幅もよい20代後半のリーダタイプ)、タクシーを調達してくるからと言って20分近く待たされ、乗車するや否や彼は若い運転手と夢中に話始め、渋滞に差しかかると、「別の道から行きます」と私に断わった上で、脇道にそれた。
しかし少し走行すると再び渋滞に出くわし、その度に脇道にそれることを繰り返し、結局ホテルに着くのに2時間以上も要した(今思うと、帰国の際このホテルから空港まで30分もかからなかったことから、話をするためわざと遅らしたように思える)。
そうした不快な二つの出来事は、躊躇していた私のムービー装着を決意させ、ここから今回のフィルムは始まる。

不正を生み出す危機(2)

現在も日本列島を駆け回る旭化成建材の杭改ざん不正、そして2005年に明るみに出た姉歯一級建築士の耐震構造計算偽造不正から今日の東芝東洋ゴム不正に至るまで、益々不正が蔓延している。
その原因は手短に言えば、検査が規制緩和で民営化されたことにあり、その背景には70年代から始まったサッチャーレーガン規制緩和を唱える新自由主義(競争原理最優先)の推進がある。
すなわち戦後製造国として世界を支配していたアメリカも、市民が豊かになるにつれて、日本などに製造国の地位を奪われたことから、世界に自由に投資支配することで復権をはかる戦略と言えるだろう。
それは競争力の弱い途上国などにさえ規制緩和させ、国営の資源などを民営化させて奪うことから、巧妙な植民地支配の再来と言っても過言ではない。

そのような支配を更に推し進めるものとして、現在締結されようとしているTPP自由貿易協定がある。
日本は海外進出の絶好の機会再来とメリットだけを考えているようだが、日本の農業を徐々に壊滅させるだけでなく(放牧だけで育つ酪農、そして1農家あたり1000ヘクタールを超える大規模農業には歯が立たない)、本当は恐ろしく弱い内需産業も奪われ、アメリカ資本に支配されることになり兼ねない。
しかもそのような支配は、格差を拡大するだけでなく、投資国の大部分の人たちを困窮させ、不満を抱く人たちが立ち上がることで治安が機能しなくなるため、力の支配が求められているのである。
だからこそ今、国民の多くが集団自衛権に反対し、憲法学者の大部分が違憲というなかで強行採決され、力支配の一端が求められていると言えよう。
それは投資国の集団テロを激化させるだけでなく、戦前の二大勢力の愚かな戦争に学べば、ロシア、中国を中心とする勢力との激突は避けられず、戦争に道を開くことである。
そのような道を強引に進むことは国家の大いなる不正であり、それを避けるためには世界をガラス張りに開くしかないと考えている。

それは、私のバングラディシュのムービー装着で以後の不正遭遇はなくなったことからも(次回フィルムでは困憊と驚愕連続であるが)、世界をガラス張りに開くことが世界から不正を根絶させると同時に、これ以上の地球温暖化進行回避と永遠平和をもたらすものだと思っている。