(356)鈴鹿山麓での農的創成(最終回)ドイツの限界集落(最終回)エネルギー転換の象徴ユンデ村の危機・ともに生きる(最終回)日産ゴーン不正が投げかけるもの

今年も師走を無事迎えることができ有り難いが、師も走るように毎日冬支度に追われている。
前回野焼きした0,4反ほどの畑には、来年の野菜の不足する時期の予備として、大根、小松菜、パクチーなどの種をまき、既に発芽した芽は勢いよく伸び始めている。
忙しいのは薪作りであり、毎日午後から歩いて15分ほどの森林に出かけ、林道沿いに放置されている杉、松、檜などの間伐を30センチ程にチェーンソーで切りそろえている。
最初は以前に書いたように森の畑の倒木で300キロほど薪を作った後は、隣のお爺さんが言うように残りは製材所で端切れをわけてもらうつもりだった。
しかしこの近辺の製材所は、下に載せた木材価格(原木市場)のさらなる下落で何処も倒産、もしくは製材事業を取りやめていた。
それは此処の森林組合も同じであり、森林の育成管理は細々と継続しているが、電話で問い合わせたところ、需要のない薪販売など以前にやめており、製材の端切れもないということであった。
もっとも北へ40キロほどの高島の森林組合では、1キロ40円ほどで薪がわけてもらえるそうであるが、軽トラも持たない私には現実的でなかった。
それで林道沿いの放置されて邪魔となっている倒木なら、切ってもよいのじゃないかという話を聞いて、薪作りを開始したのであった。
もっとも始めて数日後に森林組合の職員に出会い、叱られると思ったが、電話で話した職員であり、逆に「そんな針葉樹じゃ、ストーブが傷むのではないか」と気付かわれてしまった。
放置されている倒木は台風などで倒れたものが半分ほどであり、半分ほどは間伐材である。
間伐材が放置されるのは、原木市場で1立法メートルあたり3000円から4000円と驚くほど安く、地元に需要がなく原木市場まで運んでいては採算が取れないからである。
明らかに日本の国土の7割を占める森林は病んでいるというより、現場では倒壊していると言っても過言ではない。
そのような放置され倒壊している森林を救う名目で、今年2018年政府は「森林管理法」を決議し、事業意欲のない森林所有者の同意がなくても市町村が意欲ある民間企業に事業を委託可能にした。
これは結論から言えば、採算の取れない間伐材や木材も丸ごとビオマスとして利用し、国民の支払う20年固定買取制度で電力を製造して売れば(ビオマス発電の場合1キロワットあたり24円)、大きな利益になるからである。
実際それを見越していたかのように今年住友商事酒田市で、住友林業八戸市バイオマス発電を開始しており、清水建設なども建設を開始しており、利益の得るところには大企業の参入は目白押しである。
しかし本来バイオマス発電は分散技術であり、今回もドイツのビオエネルギー村で述べているように地域の電力自給と地域暖房の熱電併給利用で真価が発揮できるものであり、過疎限界集落の救世主として利用されるべきである。
しかも大企業のバイオマス発電では地域に殆ど利益が得られず、高額な固定買取制度や驚くほど安価なバイオマス用木材を取り尽くせば、経済的にも成り立たなくなり閉鎖は目に見えている。
事実ドイツ第二の巨大電力企業RWEは、世界最大の英国バイオマス発電所を2013年経済的理由で閉鎖している。
私の薪作りから少し話がずれてしまったが、私の言いたいことは現在の地域崩壊は政官財の飽くなき目先利益追求にあり、かつてのように林業と農業を生業として取り戻せるように将来視点に立つべきである。
例えば林業再生で言えば、バイオマス発電では一律に支援助成するのではなく、全国至る所に拡がる限界集落に対して、エネルギー自給による再生ができるように長期視点で支援助成しなくてはならない。

ドイツの限界集落克服(最終回)

   

ドイツのビオエネルギー村は連邦農林省の支援の基に、ゲッチンゲン大学循環型社会センターで構想されたもので、条件不利地農村において必要なエネルギー(電気と熱)をバイオマス(家畜糞尿と間伐材)、及びトウモロコシなどのエネルギー作物によるバイオマス発電によって全てを賄う計画である。
今回上の動画に取り上げたユンデ村は、既に私のブログでも以前に紹介しているが、2005年にバイオマス発電を開始したドイツ最初のビオエネルギー村であり、それは村に経済的成功をもたらすだけでなく、豊かな文化的生活をもたらし、その名をドイツだけでなく世界に轟かせた。
実際2013年には、200人ほどのエネルギー協同組合の出資者でもある組合員に配当を開始しており、順調そのものであった。
しかし2014年ドイツの巨大電力企業4社がドル箱の原子力発電を失い、市民がエネルギー協同組合で創り出した驚くほど安い再生可能エネルギーで経営危機に陥ったことから、ドイツ政府は再生エネルギー法(EEG)を改悪し、エネルギー転換のスピードにブレーキをかけ、将来的にEEGの支援が見込めないようにした。
そのためユンデ村は、現在1kwあたり0,21ユーロの高額な電力の買取も2016年で終了することから、その後も村内及び近隣に電力と暖房をフレキシブルで効率的に、より安く供給できるように新しい技術を導入し、2015年村民組合員190人の300万ユーロ再投資でユンデ2.0プロジェクトを実現した。
しかし2017年連邦政府は、家畜糞尿の地下水汚染の理由で新たな肥料条例を決議し、これまで6カ月の糞尿発酵期間が9カ月に延長した。
そのため貯蔵容量の不十分なユンデ村バイオマス発電施設は改修を迫られ、70万ユーロの再投資が求められていた。
しかも2015年の新技術導入で再生可能エネルギー法による毎年8万ユーロの助成支払いが約束されていたが、ユンデ村の新技術導入を支払側は認めず、2017年より赤字に陥っていた(現在それについては提訴されており、来年2月に裁判が始まる)。
そしてドイツの地方公共放送北ドイツ放送(NDR)は今年11月11日に「ビオエネルギー村のパイオニア計画が金融危機」と報じた(注1)。
また14日には、「ビオエネルギー村の連帯が壊れて行く」と続報した(注2)。
そこでは既にユンデエネルギー協同組合の10人が協同組合から退会したことが報じられていたが、組合員のロジータ・クレーマー夫人は、「困難な時期を団結して乗り越えていかなければならない。何故なら私たちは快適な暮らしを手に入れ、暖房ではこれまでに5000ユーロから6000ユーロを節約してきた」と、退会は正しくないことを訴えていた。
また組合設立当初から世界のCO2排出の世界という高い理想を掲げる代表者エクハート・ファングマイヤー(物理学者)は、「もちろん協同組合は力を合わせて乗り越えるほど強く、すぐに解決策見つけることは明らかです。少数の退会は組合をより適するものへと成長させ、物事を熟慮する設立当初の初心に戻らせます」と述べていた。
戦いは始まったばかりで小さいが、まさにそこには、これまで世界を支配してきた集中型技術の化石燃料エネルギーの潮流と、化石燃料支配の行き詰りによって市民自らに湧き上がってきた、分散型技術の自然エネルギーの潮流の激突を感じないではいられない。
そして究極的には市民のエネルギー転換を明言するエネルギー専門家が言うように、自然エネルギーは太陽光として世界の何処にでも必要とする数千倍のエネルギーが降り注ぎ、既に自然エネルギーは経済的にも凌ぐようになりつつあることから、ユンデ村のような地域でのエネルギー協同組合の市民勝利を信じたい。

(注1)https://www.ndr.de/nachrichten/niedersachsen/braunschweig_harz_goettingen/Bioenergiedorf-Juehnde-Pionierprojekt-in-Finanznot,juehnde126.html
(注2)https://www.ndr.de/nachrichten/niedersachsen/braunschweig_harz_goettingen/Bioenergiedorf-Juehnde-Die-Solidaritaet-broeckelt,juehnde128.html

ともに生きる(7・最終回)日産ゴーン不正が投げかけるもの

日産をV字回復させた立役者カルロス・ゴーンの突然逮捕は、日本だけでなく世界を驚かせた。
11月25日放映のNHKスペシャル『"ゴーン・ショック"逮捕の舞台裏で何が』では、既に逮捕が予期されたものとし、その舞台裏が念入りに取材されていた。
私にとってこの番組は、働く市民もカジノ資本主義と呼ばれる新自由主義のなかで生きており、日産で働く日本の労働者とルノーで働くフランスの労働者が連帯して「ともに生きる」ことの難しさを感じないではいられなかった。
私の見た動画55『日産ゴーン逮捕が投げかけるもの』では、フィルムが描くその難しさを取り出して見た。
日産のV字回復は、2万人を超える従業員のリストラと、日産のアジア及び北米拠点とルノーのヨーロッパ拠点でのウイン・ウインの一体化によるものであり、まさに強いものが勝利する新自由主義を象徴している。
また英雄視されていたゴーンの巨額の不正は、日産の社員だけでなく一般市民にとっても大きな裏切りである。
しかしこうした巨額報酬は、世間では格差社会のガン凶と非難されているにもかかわらず、カジノ資本主義では利益に見合った巨額な報酬が、新自由主義の原動力として教義にさえなっている。
合法的に報酬が支払われなかったのは、フランスにおいても日本においても市民がそうした教義を認めていないからに他ならない。
それ故に、タックスヘイブンペーパーカンパニーが利用されていた。
すなわちそうした不正利用が巨大企業の首脳陣には、既に秘密裏に常態化していることを裏返している。
そうした秘密裏の常態化のなかで、このようにカジノ資本主義の裏側の本質をあからさまに世に出すことができたのは、日産経営陣のルノーに合併される危機感である。
それはこのフィルムで描かれているように、長年ゴーン前会長の取材を続けてきた井上久男氏の、「外国人が日産を植民地支配していると社内の中は見ていた。支配力が強まるともっとさらに酷いことが起こるののではないかと、我慢の限界ということではないか」との言葉からも理解できるだろう。
すなわち株式買収による企業買収や企業合併は、買収する側からすれば合法的な企業戦略であっても、買収される側からすれば経済的植民地支配の何ものでもない。
したがって現在の規制なき自由貿易を希求する経済世界は、「経済的な植民地支配競争であることを認識している」と言っても過言ではない。
そしてこうしたカジノ資本主義が肥大の限界に近づいているからこそ、一握りの人たちだけが益々富み、大部分の市民が益々貧困へと没落して行く。
しかも暮らしに困窮する市民は自らを救う公正で単純な擬似的世界観に救済を求めており、全体主義独裁国家誕生が拡がりつつあり、世界戦争(絶滅戦争)の兆しを感じないではいられない。
さらにこうした不正を容認するカジノ経済のなかでは、世界の市民が希求する気候変動条約もいつまで経っても先送りしかできないだろう。
それ故に植民地支配競争の不正な経済は、万人を幸せにする経済に転換されて行かなくてはならない。
それは、自然エネルギーへのエネルギー転換によって世界のすべての人たちが「ともに生きる」ことを通して可能だと、2018年の終わりに切に思う。