(432)コロナ禍猛威のなかで(1)

コロナ禍猛威のなかで気候正義が問うもの

 

現在急速に日本全土に拡がりつつあるコロナ変異種オミクロン株は、世界でも手が付けられないほど猛威を振ており、まさに出口なしの状況である。

そのようなコロナ禍猛威のなかで、気候正義を問うことは直接的には関係がないように思われる。

気候正義とは、現在の人為的な気候変動を倫理的、政治的な問題と見なす規範的な概念であり、気候正義運動は気候変動を生み出した先進国が途上国の海面上昇、熱波、洪水、干ばつに苦しむ人々を補償していない不正義を訴えるだけでなく、その不正義と気候変動を生み出している経済システムを本質的変えていく市民運動である。

感染症の近年の増大は、飽くなき利益追求でアフリカ奥地からアマゾン至る森林開発を通して莫大な生物種が絶滅しつつあり、急速に生物多様性が失われているからだと言われている。

それは、動物のなかで共存していた感染原生ウィルスが、生態系を壊した人類に感染を拡げ、生残りをかけて人類への攻撃を開始したという見方さえできよう。

しかし人類はそのようなウィルス攻撃による現在のコロナ禍猛威さえ、世界の大部分の人々が恐怖と困窮するなかで、利益追求の踏台として、一握りの人たちだけが益々裕福となっている。

もっとも一握りの人たちも危機を踏台として利益追求しなければ、立ちどころに追い落とされるからであり、そうさせているのがカジノ資本主義とも揶揄される現代のグローバル資本主義に他ならない。

そこではコロナ感染症の拡がりを行動規制とワクチン接種で克服しようとし、コロナ変異種オミクロン変異株の爆発的、出口なし拡がるなかでは行動規制継続では経済システム自体が危機に追い込まれることから、イスラエルデンマークのようにコロナ重症化は軽減されたとして、全ての行動制撤廃に乗り出している。。

しかしそのような政策は人々を動かすことはできても、ウイルスには無力であり、イスラエルに見るように全ての行動制限が解除されて数週間しか経たないにもかかわらず、感染者と死者をさらに爆発的に増大させている。

 

イスラエルデンマークのコロナ禍脅威の現状

 

イスラエルは厳しい行動制限、そしてワクチン接種でも、その秀でた対処は世界的に知られ、オミクロン感染が始まるまでコロナ感染の克服優等生であった。

しかしオミクロン感染の拡がりでは、行動規制や3回のワクチン接種にもかかわらず感染爆発が治まらないことから、重症化の危険性は少ないとして全ての行動規制撤廃に踏み切ったが(1)、その結果は恐るべきであり、一日の感染者数は10万人を超え、死者も100人を超えさらに爆発的急増している実態がグラフからわかるだろう(2)。

【人口920万ほどのイスラエルで1日の感染者数10万人、死者100人を超える事態は、日本の人口で見れば、1日の感染者数が100万人、死者が1000人を超える驚くべき非常事態で、グラフからもその深刻さが読み取れる】

 

デンマークも行動制限やワクチン接種では優等生であり、オミクロン感染が始まるまでコロナ感染はコントロールされてきたが、11月から感染が行動制限にもかかわらず爆発的に急増するなかで、もはや新型コロナは「社会的に重大な疾患」と見なされないとして、1月末全ての行動規制を撤廃することを表明した(3)。確かに現在の集中治療室のコロナ感染患者利用は減っていることは事実としても、1日の感染者数や死者数のグラフからは爆発的に急増しており(4)、経済を優先する政策であることは一目瞭然である。

【人口580万程のデンマークで、2月に入っても1日の感染者数5万、死者21人と上がり続けており、日本の人口に換算して1日の感染者は100万人、死者400人を超えるなかでの行動制限の全廃宣言は異常であり、豊かな民主国家でのこのような措置は恐怖感さえ抱かざるを得ない】

 

(1)https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000240828.html

(2)イスラエルコロナ - Google 検索

(3)https://news.yahoo.co.jp/articles/4b688e0a5c635b500a5592f3c71fb756f2357e1a

(4)デンマークコロナ - Google 検索

 

ドイツに見る出口なしのオミクロン感染拡大

 

ドイツのコロナ感染はオミクロン患者が見つかった11月初めから急速に爆発的に増加し、12月初めには1日の感染者数が10万人を突破した。そのような異常事態に各州の厳しい行動制限に加えて、市民自ら行動を自粛したこともあって、12月末には2万人台へと低下していた。しかし新しい年を迎えて、現在の経済システムで暮らす市民にも限界があり、各州の行動制限にもかかわらず、再び急速に爆発的に感染者数は増加し、1月31日17万9431人、2月1日21万1277人、2月2日23万8252人、2月3日24万8652人と日々増大しており、為す術がない事態と言えるだろう。

もっとも若者及び成人のオミクロン患者は重症化が少ないため、これまでのところ1日の死者数は160人程度と比較的少なく推移している。

ドイツのこのような事態を、コロナ感染症報道では秀でている(ドイツ公共第一放送ARDに属する)北ドイツ放送NDRの1月31日「新しいコロナ変異株オミクロンについてわかっていること」タイトル記事では(5)、危険性についてWHOの見解はリスクを「非常に高い」見なし、危篤な疾患に移行する可能性を示唆し、WHO所長Tedros Adhanom Ghebreyesus の「オミクロンの症状を軽いものと見なしてはならない」という警告を伝えている。

またオミクロン変異株の突然変異については、50以上の遺伝子変化があり、その変化は主に突起部分のスパイクたんぱく質に集中しており、感染回復者や免疫接種者の抗体と殆ど反応しない免疫エスケープ(Immunescape)を示唆している。

またオミクロン感染の拡がりについては、「オミクロンは、これまでの変種では見たことのない速度で広がっています」というWHO所長の発言を伝え、WHOの見解として、「3月初めには、広域ヨーロッパの半分以上の人がオミクロン感染している」という驚くべき見解を載せていた。

しかしこの驚くべき見解は、WHOの公式見解でなかった理由からか、あるいは見解の与える影響の大きさで控えたためか、2月2日の更新記事ではこの見解だけが削除されていた(削除された部分  Die WHO schätzt, dass sich bis Anfang März bereits mehr als die Hälfte der Menschen im Großraum Europa mit der neuen Coronavirus-Variante angesteckt haben.)。

もっともこの見解は、既に英国、フランス、デンマークイスラエルなどの国で国民の3人に1人近くの人が既に感染している事態から、そして今も出口なし的に感染爆発が続くなかでは、驚くべき見解というよりも核心を突いた見解とも言えよう。

 

(5)Omikron: Was über die neue Coronavirus-Variante bekannt ist | NDR.de - Nachrichten - NDR Info 

 

今コロナ禍で何が問われいるのか?

 

確かに製薬企業が言うように、3回目のブースターワクチン接種で抗体レベルを20倍上げ、4回目の接種でさらに5倍に上げるデータは事実としても、その抗体レベルとはワクチンを製造した突然変異していない最初のコロナウイルスに対するものであり、既にドイツではオミクロン株に専門家の間で免疫エスケープが指摘されており、どれ程効果があるか疑わしくなってきている。

事実日本でも、1月31日の朝日新聞一面での「感染の波 高齢者に」の大見出し記事が伝えるように、「ふじみの救急病院」の現場ではオミクロン入院者は60代以上が中心となり、半数以上が肺炎を起こし、殆どが人工呼吸器着けており、鹿野晃院長の「入院患者はどんどん高齢化し、重症化している。ワクチンを2回うっていても、接種から時間が経った高齢者は強烈な肺炎になっている。『オミクロン株は弱毒』と言われているが、現場で見た感覚ではそうではない」という話からも、ドイツでの疑惑が伺える。

そのようなワクチン接種への疑惑は、2021年1月末にドイツ第一公共放送ARDが放映した『コロナワクチン接種ルーレット Impf-Roulette 』(すでにこのブログ413から418で訳して日本語字幕を付けてのせてある)では、フィルムの随所で専門家の意見が挿入されており、「何故かくも速くワクチン開発ができるか?開発されたワクチンは安全なのか?ワクチン接種の世界的な公正な配分、社会正義は為し得るのか?」と問うている。

そしてワクチン開発に成功した製薬企業は、この戦いの敵は他の企業ではなく、コロナウィルスであると強調するが、急激な株価上昇は、市場を陶酔させている。

それは、まさにカジノ資本主義と呼ばれる現在のグローバル資本主義のルーレットが回る光景であり、「ワクチン開発とは、企業の巨大商いなのか?世界を救うものなのか?」を問いかけるかのようである。

事実ARDの載せている解説では、「世界危機におけるワクチンルーレットは、金、権力、社会正義、さらには生存と死に対する経済による犯罪劇ではないか "Impf-Roulette" ist ein Wirtschaftskrimi entlang einer globalen Krise. Es geht um Geld, Macht, Verteilungsgerechtigkeit – und um Leben und Tod. 」と問うている。

実際私たちがワクチン接種しているファイザー製ワクチンは、ドイツ政府がドイツ感染症医療センター(DZIF)統括の各地研究所に多額のお金を提供し、膨大な試行錯誤でワクチン開発の技術を完成し、ドイツの中小製薬企業ビオテックがコロナワクチン開発に成功し、それを世界の製薬巨大企業ファイザーが莫大な費用をかけて市場化したものであり、何十倍もの見返りを期待して、賭け金を積んでいくやり方はカジノ資本主義の賭博(ルーレット)とも言えるだろう。

トルコ人医師夫婦が創設した中小製薬企業ビオテックが開発に成功した理由は、DZIFの研究成果でウイルス突起部分のRNA製造技術、及びそのRNAを大量生産する技術が完成していたからであり、アメリカの巨大製薬企業ファイザーが共同開発企業として市場化したからこそ、半年という速さで世界に出すことができたと言えるだろう。(これまでのワクチン開発では、副作用や遺伝子影響などの長期的データを必要とし、少なくとも10年を要していた)。

そしてそのように速く開発できた大きな理由は、世界経済がコロナ感染の拡がりで経済を止めたくない強い意向が反映されたからだと言えるだろう。

確かにワクチン接種はコロナ感染の重症化を軽減させることは抗体レベルが飛躍的に高くなることから事実であろう。しかしコロナウイルスの突然変異種が5000以上世界で検出されているなかで、遺伝子の突然変異が突出部分に主に集中するオミクロン株の出現は、ウイルスが生残りをかけて人類に挑んできているようにも思え、ワクチン接種を度重ねて行けば克服できるという考えは、抗生物質と病原菌との戦いで耐性菌の院内感染にはお手上げであるように、白旗を挙げる敗北を連想せずにはおられない。

事実4回接種に踏切ったイスラエルが、行動制限全廃を打ち出した後のオミクロン感染のさらなる激増、重症化での死者が激増していることから、ワクチン接種によるコロナ克服に白旗を挙げ、再び厳しい行動制限を宣言する公算も高いと思われる。

そうした背景から浮かび上がる、「今問われているもの」は人々の命が最大のリスクにさらされているにもかかわらず止められない経済システムである。

経済を欧米のかつての長期休暇のように止め、企業から学校まで休みにし、通勤などをなくし、完全に人々の接触をなくせば、理論的には2週間、実際は1カ月継続すればコロナ克服はできる筈である。

それができない経済システムであれば、それは人を幸せにする経済でないだけでなく、究極的に人を滅ぼす経済と言えよう。

まさに今、そのような経済システムが、気候正義運動で問われているのである。

 

本出版のおしらせ

ようやく推敲も終わり、印刷待ちとなり、3月初めには出版されることになりました。

何故本を書いたかは、前2回のブログ及び今回のブログを読んで下されば理解していただけると思います。

 帯の文章が読めないと思いますので、下に書いておきます。

 

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  地域の自己決定権による

     自助経済が世界を救う

 

  現在のコロナ感染症(COVID19)は格差社会を益々肥大させていく!

そして未来は洪水、干ばつ、食料危機、感染症蔓延による社会機能不全は避けられないとしても、それを力として、誰も見捨てない生きがいのある社会を創り出すことは可能だ!

本書は、著者が半世紀に渡ってドイツから学んだ救済テーゼである。