(483)ベアボックの「世界の転換点」とは

世界は既に限界点に達している

 

 11月1日のZDF『現在をどうする?(WAS NUN?)』の外相ベアボックのインタビューでは、ベアボックは「ハマスの残忍な10月7日のテロ攻撃はイスラエルに対して転換点であるだけでなく、世界の転換点である」と述べていた。

それは用意周到の5000発を超えるロケット弾を撃ち込むことで、イスラエルの迎撃防衛システムを麻痺させ、1400人もの市民を虐殺したからである。そこでは人間の命の重さが全く考慮されておらず、核兵器テロも可能な時代に突入したからである。

またベアボックは、ドイツ国内の反ユダヤ主義の高まりでユダヤ人は街頭で最早デモをする勇気がなくなり、ユダヤ人が住む家にはダビデの星がスプレーで描かれ、連邦刑事局が夥しい数のユダヤ人への犯罪を報告する中で、断固たる措置を取ることを述べていた。それは同じ緑の党のハーベック経済相が述べているように、反ユダヤ主義を唱える者は国外追放という断固たる措置である。

国際世論がイスラエルの攻撃を非難するなかで、そのような断固たる措置をドイツが採るのは、ホロコーストで600万人を超えるユダヤ人を虐殺した負い目からでもあるが、断固たる措置を採らなければ国内が大混乱に陥る事態が想定されるからである。

その理由は今年世界の難民(殆どが紛争からの避難民)が1億1000万人を超え、限界に達しているからでもある。ドイツは難民の庇護権を守り、突出して寛容であるが、難民拒否を唱える極右政党AfD支持が急激に急激に高まり、9月以降世論調査で20%を超えているからである。

またドイツは既に多民族国家であり、ドイツ国籍のトルコ人親族だけで1000万人を超えており、反ユダヤ主義が拡がれば大混乱となり、収拾が着かなくなるからでもある。

 

応急的な解決策はあるのか?

 

 しかしイスラエルのガザ攻撃が市民を盾にするハマスに対して、問答無用の攻撃で女性や子供まで殺戮するに及んで、ベアボック外相は11月10日のアラブ首長国連邦の外相会談で、「すべての⼈は平和と尊厳の中で⽣きる権利を持っています」と述べ、和平解決策を見出すためにアラブ湾岸諸国に西側と協力するよう訴えている。

そしてベアボックは、「2つの国家で隣り合って暮らすという約束に⽴ち返ることだけが、 イスラエル⼈とパレスチナ⼈に平和、安全、尊厳の⽣活をもたらす

ことができるのです」と強調していた。

2つの国家の約束とは、2000年のクリントン大統領仲介の下で、PLOアラハト議長とイスラエルバラック首相との会談を経て、聖地を含む東エルサレムの一部に加えてヨルダン川西岸地区の97%とガザ地区全域をパレスチナ国家として認めるパレスチナ国家創設であり、2003年アラファートは和平推進派のマフムード・アッバースを初代首相に任命し、アッバース内閣がテロ抑制と治安の回復を掲げ、アメリカの発表した平和のための2つの国家創設の合意である。

それを実現するためには国際世論の高まりで、暗殺されたイスラエルのラビン首相のような和平内閣を誕生させ、パレスチナもテロ攻撃放棄で国連に委ねさせなくてはならない。

もっとも国際世論の強力な圧力によって平和のための2つの国家が創られたとしても、イスラエルパレスチナの圧倒的な格差がなくならない限り、紛争がなくならないことも確かである。

本質的に紛争をなくすためには、現在の化石燃料エネルギーの集中型支配から再生可能エネルギーの分散型市民参加にエネルギー転換して行き、究極的には世界のすべての地域がエネルギー自立を基盤にして、他から貪り取る必要のない自給自足の社会に変えて行くことができれば、紛争のない世界を創ることは可能である。しかもそれは、先進国が互恵的利他主義で世界のすべての地域に再生可能エネルギーの分散型技術を提供していけば、前回述べたように十分可能である。