(414)ドイツ最新ニュースに学ぶ(7)・ワクチン接種ルーレット(2)

ドイツ最新ニュースに学ぶ(7)

1)チェコ共和国の世界最高の感染爆発

(ZDFheute2月26日)

 上のZDFheuteが伝えるように、ドイツと接するチェコ共和国のコロナ感染は脅威的に増大しており、ドイツの発生率(住民10万人の7日間の発症数)は60台に下がってきているが、チェコ共和国では発症率699と上がり続けていることを警告している。

実際2月28日の日刊シュピーゲル・オンライン(注1)では、さらに発症率765へと上昇し、「チェコ共和国・世界で最も発症率が高い国」の見出しで、世界に伝えている。

チェコ共和国は2017年の選挙で、中道右派チェコのトランプと欧州で呼ばれる企業家大富豪アンドレイ・バビシュ首相を誕生させ、民主主義の危機が伝えられていた。

バビシュ首相は、2020年コロナパンデミックが欧州に拡がるや、3月初めにすぐさま国境を閉鎖し、国家ロックダウンという厳しい措置を断行した。

その結果6月には、コロナ感染を殆ど封じ込め、欧州ではコロナ模範生として讃えられるとともに、国民自ら祝ったと報道されている。

そうした緩みが9月からの急激な感染爆発の原因であったとしても、ドイツでも同じであり、チェコ共和国では10月からは再び厳しい措置を採っているにも関わらず、下図で見るようにドイツとは較べようがないほど、発生率が爆発的に増加し、一旦下がり始めると、再び爆発的に増大を繰り返している。

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原因としてドイツのメディアが挙げているのは、一つには国内の医師や看護婦が給料の高い国へ出て行き、保健大臣が3度も変わるほど医療行政が混乱していることである。

また一つには、チェコ共和国が2020年6月には他のヨーロッパ諸国に較べ、コロナパンデミック封じることに成功したことから、経済を優先させ、国を率いるバビシュがトランプに倣い、少なくとも10月までマスクも附けずに奢っていたことである。

しかしそれでは、10月から再びロックダウンを5カ月も継続しているにも関わらず、コロナ感染は脅威的に増え続け、チェコ共和国の全人口(1070万)の11、5%を超えて増え続けている理由としては、しっくり来ないものがある。

それを解き明かしてくれたの、3月1日のバイエルン公共放送(ドイツ第一放送ARDに属する9つの地域公共放送の一つ)の「チェコ共和国でコロナ感染者数が爆発する理由」と題する記事であった(注2)。

確かに上の2つの理由も挙げていたが、本質的にはチェコが繰り返して来た戦争や(全体主義の)危機の時代に、生き延びる戦略として培われた伝統的気質に起因すると述べていた。

すなわち市民の暮らしに向き合わない権力に対しては、表向きは従っても、実質的には命令に従わず、巧みに回避するチェコ人の気質にあると言っている。

しかしそれがコロナパンデミックでは裏目に出て、10月からの厳しいロックダウン措置では、政府の不信感と長期的行動制限の疲れから、国民の多くが規則命令に従わず巧みに回避しており、それが現状のコロナ感染爆発を引き起こしていると指摘している。

 

(注1)Die dritte Welle: Tschechien – das Land mit der höchsten Inzidenz weltweit - Politik - Tagesspiegel

 (注2)Darum explodieren die Corona-Zahlen in Tschechien | BR24

 

2)EUのGOTO安全証明カード

(ZDFheute2月26日)

ヨーロッパにおいても観光産業は、コロナ危機で窮地に追い込まれている。

EUはそれを救済するために、安全保証カード(ワクチン接種済、或は直近のコロナ検査陰性)を持つことで動き出したと伝えている。

メルケルはそれにブレーキをかけたように報道されたが、実際はフィルムで見るように安全保証カードは将来的に正しいと明言しており、先ずは議会での承認が必要と主張している。

何故なら、安全保証カードを持たない人は旅行できなくなるからであり、倫理的民主主義を自負するドイツの首相としては、当然の発言であり、むしろ建設的である。

要は、EU諸国が一丸となって早急に動けば、夏までに実現することも可能である。

もっとも観光産業に力を入れるEUの5カ国では、ワクチン接種を受けた人は検疫なしで休暇が取れるよう、既にそれを実施していると伝えている。

またドイツの市民倫理評議長は、旅行会社がワクチン接種を受けた人だけに旅行プランを提供することは倫理的に問題ないと述べている。

しかしワクチン接種の実施状況は余りにも遅い現状から、ZDFの報道は倫理的問題を解消するには、まだワクチン接種を受けていない人には、その場での(敏速簡易)コロナ検査などの代替手段が必要だと指摘している。

しかもそれは、日本のGOTOのようにコロナ感染の猛威が治まれば、観光産業のために再び危険を冒して、政府が主導する国民の批判を買うバラマキ政策ではない。

そこには、旅行会社や観光地が潤い、旅行者が安心して旅行が楽しめるように、観光業界が生き延びるために、自ら創意工夫で取組む前向きな姿勢が感じられる。

 

ワクチン接種ルーレット(2)

第2回は、ドイツの10月からの激しいコロナパンデミック第二波の襲来に対して、ブレーメン保健省長官の感染の速さに対処できなかったという省察から始まる。

そのようなコロナパンデミックの猛威のなかで、福音はワクチン接種であり、ワクチン開発の世界競争が語られて行く。

ワクチン開発の世界競争で2020年夏に先陣を切ったのはロシアの「スプートニクV」で、国民の藁にも縋りたい思いを利用して、臨床試験なしで接種が進められて行った様が映像から伝わって来る。

それ故西側の巨大製薬医療統括者は、余りにも危険であり、自分が接種するなら、しかるべき機関が承認するまで待つと、批判している。

尚コロナワクチン開発を解説すれば、従来のワクチン開発は、病原体(ウィルス)自体を弱毒化し、体内で増殖しないよううにして、体内に接種するものであった。

しかし今回現在日本で接種されているファイザー・ビオテックのコロナワクチンは、人工的に合成されたコロナウイルスのスパイク(突起部)の遺伝子情報(mRNA)だけを接種し、体内でその遺伝子情報に従ってスパイクたんぱく質を合成させ、それによって体内の免疫機構を作動させ、抗体が作られるというやり方である。

ロシアの「スプートニクV」は、人体に無害なアデノウイルス(伝導体)に同じ遺伝子
情報を組み込み、そのアデノウイルスを接種するもので、同様の作用機序でスパイクたんぱく質、そしてコロナウイルス抗体が作られるものである。

遺伝子情報のmRNAは非常に不安定であるが、「スプートニクV]はアデノウイルスであることから、通常冷蔵庫で保管でき、輸送や取扱いも容易で安価である。

具体的には、「スプートニクV」は2回の接種で20ドル弱で、ファイザービオテックワクチンの半額である。

同じ作用機序であることから、有効率は両方とも9割以上であり、コロナパンデミックの福音であるが、抗体の有効期間は麻疹などと異なり、長くても1年というのが多くの専門家の見解であり、楽観できない。

しかもコロナウイルスが遺伝子情報(RNA)だけのウィルスで、変異しやすく、実際イギリス変異種、南アフリカ変異種、ブラジル変異種など次々と変異を繰り返し、生き延びようとするなかで、何処まで有効かは未知である。

またワクチン接種者が感染した場合、殆どの人はごく軽症であるとしても、細菌と抗生物質との戦いで見られるように、一部に耐性ウイルスを誕生させ、鼬ごっこの戦いを強いられるて行くのか未知である。

尚、今コロナ禍で問われているもの(2)は、都合で次回に載せたいと思います。