(461)危機の時代を賢く生きる(最終回)完全な自給自足を求めて・エネルギー危機での便乗値上げ禁止法

「完全な自給自足」が志向される理由

 

 上に載せた『完全な自給自足』フィルムは、今年ZDFテラエクスプレス『Power im Dorf』で放映された一部であり、まさに危機の時代を賢く生きる典型であり、ヤコブは現在の危機の時代を逆手にとって生きがいとしていると言えるだろう。

危機の時代と言われる由縁は、 1970年代に始まった「成長の限界」、90年のリオの気候保護宣言、さらには97年の京都議定書温室効果ガス削減の約束にもかかわらず、世界の国々はあたかも削減約束を免罪符にするかのように排出量を増大させており、2020年には1990年比で160%を超えているからである。

しかも今年2022年は、危機の時代をロシアのウクライナ戦争によるエネルギー危機から、これまでの最大排出量を超える年になると言われている。

そのような状況を眺めるにつれても、「パリ協定」の2050年までに二酸化炭素排出量をゼロとし、氷床崩壊を起こさない地球温暖化ティッピングポイント(臨界点)1.5度上昇に留めることは不可能であると感ぜずにはおられない。

現在のように世界の国々が国益を最優先するなかでは、2030年には確実に1.5度上昇を超え、2050年には2度上昇でジェームス・ハンセン博士が指摘した氷床崩壊が頻発し、驚く速さの十数メートル海面上昇で、大部分の大都市が海に沈むことさえ想定されるシナリオである。

これまでは最悪のシナリオさえ数メートルの上昇であり、しかも遠い未来の2100年の未来の、現在地球に生きる人々が直接的には関与しない話であった。

しかし「パリ協定」の実行年を2年過ぎても、寧ろ世界の成長希求は強まっており、2050年に排出量ゼロどころか90年比で200%を超えることも決してあり得ない話ではなくなって来ているからである。

それゆえ先月のドイツの世論調査で国民の殆どが、国際気候保護会議COP27に期待していないのであった。

だからと言って無関心ではなく、地域で市民のエネルギー転換、エコロジー転換への流れは、ドイツでは今年のエネルギー危機を通して加速している。

それは国民の間に、世界の臨界点を超える気候変動激化は避けられないという認識から、自らの生きる場所で気候変動激化に対処し、排出量ゼロのエネルギー転換、エコロジー転換を実現させていかなくてはならないというドイツ国民の意思のように思える。

それゆえヤコブの実践する、二酸化炭素排出量ゼロだけでなく、汚水も外への排出量ゼロで、エネルギーだけでなく、雨水による水や敷地内で食料まで自給自足する「独自の家」への関心が拡がり、高まっていると言えるだろう。

 

エネルギー危機での便乗値上げ禁止法

 

 ドイツは寒い冬の足音が聞こえて来るなかで、信号機政府は市民のガス価格、電気価格、ガソリン価格の高騰が為される前に、政府の負債禁止法の例外を連邦議会で承認して、最大2000億ユーロ(約30兆円)の財源を用意し、市民が暖房費で困らない暖房費抑止措置を決めた。

同時に企業の便乗値上げがないように、値上の場合値上企業が立証しなくてはならない便乗値上げ禁止法決め、立証出来ない場合は利益没収という厳しい措置に出たのである。

そうした厳しい措置が必要な理由は、政府が費用を一部負担する場合多くの企業がそれを利用して、便乗値上げが横行して来たからである。

もっとも利益追求が最優先される企業の論理からすれば、政府負担は利益追求の絶好のチャンスであり、危機を踏台にしない善良な企業では現在の新自由主義の枠組では生き残れないからである。

具体的な暖房費抑止措置は、市民各々の前年消費量の80%に支援措置が為され、ガス価格はキロワット時あたり12セントの上限適用されることになる。

また電気代もキロワット時あたり40セントの上限価格が適用され、市民が80%の節電に努める限り値上に苦しむことはなくなった。

もっとも食料品などの値上がりは激しく、平均約10%のインフレで大変なことには限りないが、市民利益を最優先する政府は発足時に単位時間あたりの最低賃金を12ユーロ(1700円)に引き揚げ、コロナ救済支援、住宅費支援、定額交通費パスなどと、市民の暮らし安定に奔走していることは確かであり、世論調査でもそれに対する信頼感が感じられる。

そのような手厚いドイツの人への支援提供に対して、箱物や公共工事、さらには防衛費増大には大盤振る舞いでも、困っている人にはお金を融資するだけで支援提供しないのが、日本のやり方と言えるだろう。

そのような市民利益を求めないやり方が内需さえ冷やし、今日本を益々衰退させていると言っても過言ではないだろう。